7話 それぞれの想い (3) ~亮太目線~
「はあぁ・・・アリスって怒ると
言うコトがヒドくなってくるよな・・・」
やっとの思いで言い合いが終わり、
帰ることにした。
すると、前にチシャを見つけた。
よし、驚かそうと、こっそりと忍び寄っていく。
「チーシャ!!一緒に帰ろー!」
「うわっ・・・!?亮太!?」
いきなり後ろからとびついたオレに、
そうとう驚いているようだ。
「亮太・・・心臓に悪いから
やめてくれ・・・」
「えー、いつものコトじゃん!
こんなコトで心臓に悪いなら、
今頃チシャは死んじゃってるよ!」
「さらっと不吉なコトを
言うな・・・
それより亮太、そろそろ離してくれないか?
歩けない。」
しぶしぶオレはチシャを離す。
すると、チシャがキョロキョロとし、
「あれ・・・美留は?」
いつもなら一緒なのにとチシャがつぶやく。
「っ・・・なんでアリスのコトなんて気にすんだよっ・・・」
「・・・?美留とまたケンカしたのか?」
「んー・・・まあ、そうなんだけど・・・」
『?』と、チシャが首をかしげる。
はあ、とオレはため息をつき、
「アリス、言いすぎなんだよー!!
ちょっと意地悪言ったくらいで、二倍ぐらいにして
返すんだよ!?
『豆腐の角に頭ぶつけて死ねー!』とか・・・」
「なんか、美留の返しが微妙だな・・・」
「だよなあ!?豆腐の角は柔らかいから、
ぶつけても死なねーよな!!」
「イヤ・・・そっちじゃない。」
チシャの言ってるコトがわかんないオレは、
ただただ首をかしげる。
すると、いきなりチシャがオレの
そでをぐいっと引っぱる。
「オラ、帰るぞ!学生は家に帰って
勉強するべきだろ?」
「チシャ・・・真面目。」
「いやいや、普通だろ。ここは名門校なんだから、
一応、F組でも勉強は世間に比べりゃ
できるほうだろ?ただ頭が悪いだけだ。」
「・・・それはフォローのつもり?」
だが、チシャはただオレを見て、
にっこりと微笑んだだけだった。
チシャはめったに笑わない。
笑ってと言われ、笑っても、
笑い方が怖いと言われる。
でも、時々『微笑み』を見せるコトがある。
『微笑み』は、自然に笑ったときだけだ。
微笑んだときのチシャは、
同一人物とは思えないくらいにまぶしい。
ものすごくカッコ良くて、男のオレでも少し驚くほどだ。
それを見た女子に告られてた時もあった。
だが、あっさりと断った。当たり前だ。
チシャは今、好きな人がいるからだ。
オレは、恐らくアリスだろうと思ってる。
なんだか、よくアリスのほうを見てる様な
気がするのだ。
そして、きっとアリスもチシャが好きだろう。
二人は両思いなのだ。
実は、オレにも好きな人がいる。けど・・・・・・
好きになってはいけない人を好きになってしまった。
この気持ちを告ったらきっと、
嫌がられ、軽蔑されるだろう。
だけど・・・・・想うだけなら、
いいよな・・・?
どうか、オレがキミを好きでいることを
許してください。