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14話 計画始動 (2) ~楓目線~


 朝、私が思っていたより早く、

 二人は一緒に来ていた。


 本当は何日か経ってから

 一緒に来始めると思ってたんだけれど・・・

 まあ、計画通りにいって良かった。

 早くなっても悪い事は無いし。


 私は驚いた様に振る舞って、


「あれ?二人だけが一緒に来るのって、

 珍しいね。何かあったの?」


 一緒に教室に入ってきた、

 ウサとアリスに言う。


 するとアリスは嬉しそうに、


「じ、実はね・・・私達、

 付き合い始めたの!」


「えっ!?ウソ、まじぃ!?

 すごーい!両想いだったんだー・・・」


 わざと驚いてみせたが、

 これも計画通りだ。


 二人が付き合い始めたから、

 次にする事は・・・・


 こっからがかなり大事なのだ。

 上手くいくかどうか分からない。


 っと・・・その前に、皆の反応を見なきゃ。

 思った通り、二人が微妙な顔をしてる。


 片方はあからさまに悲しそうな顔をしている。

 でも、コイツは今回の計画において

 あまり重要ではないからどーでもいい。


 問題はもう一人の方。

 あー・・・必死で感情を顔に出すのを

 抑えていますねぇ・・・・

 でもこっちは悲しみだけじゃなく、

 憎しみ、恨みが混ざってるな・・・・

 うん。思った通りだ。


 とりあえず次だ。

 私は皆の関心がウサとアリスに向いているのを良いことに、

 誰にも気づかれずに教室を出た。


 あらかじめ指定しておいた

 校舎の裏の影に行くと、

 女の子が立っていた。


 逃げ出すかなと思ってたんだけど・・・

 ちょっと意外かも。


「ハイ、じゃあこれ。この手紙を、

 ウサ・・・じゃなくて瀬川亮太の

 下駄箱に入れてきて。そうしないと・・・

 どうなるかは、わかってるよね?」


 わざとにっこり笑って見せると、

 相手は怖くなったのか、

 手紙を握り締めて逃げるように

 下駄箱の方へ走って行った。


「まあ、あの様子なら

 そうそうヘマしないかな・・・」


 多分、わざわざ監視するまでも無いだろう。

 任せても大丈夫なはずだ。

 それにあの子には、こういう時に使えるように、と

 前々から脅しをさんざんかけといたから、

 ヘマしたり、裏切ったりしたらどうなるか

 十分にわかっているはずだ。


 教室に戻ると案の定、

 祐美たちが心配そうに


「楓!どこ行ってたの?

 急にいなくなったから心配したよー・・・」


「あ、ゴメン!ちょっとトイレ行ってて・・・」


 戻ってくる時なら、バレても大丈夫。

 私が手紙を女の子に渡しに行ってた時間は

 トイレにしては長いけど、

 行った時の時間がバレてなければ

 怪しまれはしない。


 仮に途中でいない事に気づいたとしても、

 帰ってくるまでの時間など気にするより前に

 皆で何処に行ったのだろうと検討し始めるだろう。

 一分単位でこまめに時計を確認するようなヤツがいたら、

 それは別だけど。


 とりあえず、ウサが思い通りに動いてくれれば・・・

 全て上手くいく。


 放課後、私は祐美にバケツを渡した。


「え・・・何コレ?」


「バケツだけど?」


「いや・・・それは分かるけど・・・

 何のために?・・・・あ、何かすればいいの?」


 さすが祐美。

 よくわかってるじゃん。


「今からそのバケツに水を入れて

 二年の校舎の三階の

 二年C組の前の窓から

 4時29分ぐらいに水を落として。」


「え・・・どうしてそんな事・・・」


「いーから。4時29分ぐらいになれば、

 ちょうどウサが来るハズだから、

 ウサめがけてきちんと水をかけるように。」


「えっ!?ウサに?

 そんな事したら風邪引くんじゃ・・・」


「うん。風邪引いてもらわなくちゃ

 困るし。そのためにやるんだから。」


 祐美は困った顔をしている。

 そんな事は出来ない、と思ってるのだろう。

 でも・・・最終的には

 実行するはずだ。

 祐美にはもう、後が無いのだから。


 すると祐美は少しハッとした様に、


「もしかして・・・それってウサとアリスが

 付き合い始めた事に何か関係あるの?」


 ふーん・・・案外鋭いじゃん。

 まあ直接は関係無いけど、

 大きな計画の一部という点では

 関係がある。


「なんでもいーから、早く行ってきて!

 早く行かないと本当にどうなるかわかんないよ?」


 すると祐美はあせった様に

 バケツを持って二年の校舎の方へ走って行った。


 ・・・とりあえず、今日やる事はこれで終わり。

 あとは明日、どうなっているか・・・・・


 私はずいぶん前からつまらない事ばかりで、

 とても退屈していた。

 そんな時思いついたのが、

 落ちこぼれクラスを作るという事。


 おかげで今は退屈しない。

 特に、ウサとチシャとアリスが来てからは。

 やはり、情報という物は人より役に立つ。

 あの3人をこのクラスに来させたのも、

 その情報を見たからだ。


 それは実に興味深いもので、

 私の好奇心を刺激させるものだった。

 ただ、この情報はアリスは知らないだろう。

 ・・・まあ、そんな事はどーでもいーか。


 私は、カバンから小瓶を取り出した。

 今日やった事が成功すれば・・・

 次はこれだ。

 これも成功すれば、あとは放っておけば

 そのうちに面白い事になる。


 人の愛って、時には恐ろしいよなぁ、と

 思いつつ、私はカバンに瓶をしまった。



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