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13話 計画始動 (1) ~祐美目線~

 朝、ウサが登校してくるなり、

 チシャに飛びつき、泣きそうな声で


「てててて転校するって、本当!!??」


「・・・はあ?誰が?・・・オレが?」


 ウサはただこくこくと首を縦に振る。


「いや・・・それ、勘違いだから。どーせ

 誰かが流した根も葉もないウワサだろ。」


「あ・・・そうなの?良かったぁ・・・」


 ホッとしたのか、嬉しそうに

 チシャに抱きついている。


 ちょっと興奮して、叫びそうになったけど、

 楓から言われた事をちゃんと

 実行しなくちゃ・・・!


 チラッとアリスの方を見ると・・・

 アリスの表情から、思惑通りにいった事が

 十分わかった。


 あとは・・・・・


 アリスの方へ近寄っていき、

 楓に言われた通りのセリフを言う。


「あの二人、本当に仲良しだよねー・・・

 友達には見えないくらいだよね!

 まあ、私的にはオイシイけどっ♪」


 そして私はアリスが何か言う前に、

 その場から素早く立ち去った。


 そして、ずっとパソコンをカタカタと

 やっている楓に駆け寄る。

 パソコンをやっている時の楓は、

 人が変わったかの様に

 表情が全く違う。


 だが、私以外の人が近づくと、

 瞬時にいつもの表情に戻し、

 何事も無かったかの様に

 にこにことする。


 まあ、PCゲームやってる時とか

 腐ってるものを見てる時は、

 ある意味表情が違うのだが。


「楓!うまくいったみたいだよ。」


「おー。ごくろうさん。」


「それよりさ、チシャが転校って・・・

 本当なの?」


「いやいや・・・違うって。本人も

 そう言ってたじゃん。あれはね、

 私が流した嘘のウワサなの。」


「え?何でそんな事するの?」


 すると楓はうーんとうなり、


「まあ、そのうち分かるよ。言ったでしょ?

 これから面白いコトが起こるって・・・」


 怪しげに笑う楓に、私は

 不安感を抱いていた。


 一体、何をするのか、と。


 誰かが傷付くような事は

 したくない、というのが

 私の本心だ。

 でも、その事を言ったら私は、

 楓に何をされるかわからない。


 だが・・・・思い切って、言ってみる事にした。


「ねえ・・・楓?それって、

 誰かが傷付いたりとか・・・しないよね?」


「・・・何言ってんの?

 傷付くに、決まってんじゃん。知ってるでしょ?

 私はね、誰かが苦しむ所を見るのが、

 すっごく大好きなの。苦しんで、苦しんで、

 もう何もかも無くしたような光の無い目を

 見る時が、私にとっての至福の時なの。」


 楓があまりにも嬉しそうに話していたので、

 私は大きな寒気がして、

 あまりの大きさに吐き気がした。


 やっぱり楓は恐い・・・・

 いや、恐いとかで片付けられる

 恐さじゃない。言葉に出来ない恐さだ。


 ・・・やっぱり楓には関わっちゃいけない。

 

 楓はいわゆる、敵に回しては

 いけない存在なのだ。

 でも、逃げる事は許されない。


 ・・・だが、次の瞬間、

 私の口が勝手に動き、

 言ってはいけない事を言ってしまった。


「あ・・・あのさ、もうやめない?

 だって、傷付いた人が可哀想じゃん・・・

 その人には特に何の恨みも無いんだし・・・」


 ハッとした時には、

 もう遅かった。


 楓の表情がスッと変わった。

 ものすごく大きい威圧感を感じ、

 私は全てを敵に回した様な

 感覚に陥った。


 とりあえず何とかしてごまかそうと

 何か言おうとした時、

 楓がゆっくりと口を開けた。


「ふーん・・・もしかして、私に逆らう気?

 祐美はそこまでバカじゃないと思ってたんだけど・・・

 逆らったらどうなるか・・・

 一番知ってるのは、祐美でしょ?」


 私は震えが止まらなかった。

 泣きそうになって、周りの目を

 気にして、必死でこらえた。


 私は涙声になりながらも

 ようやく声が出せた。


「お・・・お願い・・・・

 許してっ・・・!ごめんなさい・・・・・!」


「・・・許さない。」


 その言葉は刃の様に私の心に

 突き刺さった。


 だが、いきなり楓は

 にこっと笑い、


「・・・と、言いたい所だけど、

 祐美はよく私のために働いてくれるし、

 使えるから、やめとくねっ!!」


「え・・・あ、本当・・・・?」


 すると楓は笑顔のままで、


「まあ、次は無いけどねっ♪」


 その言葉に少しゾッとしたが、

 とりあえずホッとした。


 その時、また寒気がした。

 でも、楓の時の様な吐き気がする程の寒気ではない。


 何だろうと見てみると、

 それはアリスが放ってるものだった。


 アリスがいつもとは違う。

 とても冷たい目をして

 何かを睨んでいる。


 その目線の先には・・・・


 一瞬、私は、え?と思った。

 どうして?どういう事?

 何で・・・・その人なの?


 私は何が何だかワケが分からなかった。

 でも、これはまだ始まりにすぎなかった。

 まさかあんな事になるなんて・・・・

 楓以外は想像もしなかっただろう。


 楓の恐ろしい計画が動き出した事に、

 私はまだ、気づかずにいた。




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