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(完結)男二人、ヤマアラシのジレンマ故に  作者: たろう


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森の調査には、僕の部隊から選抜した十五人とエリックとその部下十五人にキースを加えた部隊が合流して、合計三十三人の小隊を組んで向かうことになった。


その前に一旦倍の人数でキースの駐屯していた監視塔へ寄り、そこに半数を何かあったときの保険として残す。


五月の森は野生の動物のみならず魔物も活発に動き回っている。そのため、実際に森に入って目的地を目指し進んでいると、僕の指揮する隊の隊員だけでは対処が難しい局面が幾度とあった。しかし、心強くもエリックとその部下たちがうまくそれに対処してくれたおかげで、大きな問題に発展することなく行軍を進めることができた。


魔物は世界的に幅広く分布しているが、その多くは特定の地域に固まっている。この国においては、海とこの魔の森が魔物の出没が多い地域だ。時折隣国との国境を越えて他国から入ってくるというようなことも起こる。


そのため、魔物との戦闘に王立軍兵士は慣れていない。その経験に乏しいからだ。基本的に王立軍とは国防のためのに存在であり、対人を主に想定した訓練が施されている。一方、辺境軍人たちは対人と対魔物との両方の訓練を行っていて、その実戦経験にも富んでいる。彼らに助けられる場面が多々あるのは必定というものだった。


だから、対魔物で苦戦することを見込んで手を貸すと言ってくれたエリックには本当に頭が上がらない。


そしてそこにきてさらに、この少人数での作戦行動を支えたのがキースの索敵だった。自分からこの作戦に同行したいと申し出てきただけあって、彼はそれに見合うだけの十分な活躍をして見せた。


道中遭遇する小さい魔物については油断しなければ数の力であっさりと退けることができるため問題はない。しかしこの森には巨大な魔物も多く潜んでいるいる。具体的には巨木のような見た目のトレントやトロール、巨人族のエルダージャイアントなどがそうだ。こういった巨大な魔物は体の大きさに比例して非常に力が強く魔力も豊富だ。だから、こいつらには極力会敵しないように立ち回ることが森の中での行動の基本となる。


それに対して、キースはそういった比較的体の大きい相手を見つける技術を、どこで身につけたのかはわからないが、得意としており道中それが非常に役に立った。


エリックなんかはキースの魔法に非常に関心を寄せていて、調査が終わったら辺境軍の魔法部隊への異動を熱心に提案していた。キースは曖昧に言葉を濁していた。


一日目の終わり、僕らは森の中で野営する。野宿経験者たちがここはという場所に陣を定め、その周囲に魔物除けの光の魔石を配置してから天幕を張った。


野宿と言えば夜番である。


僕は出発前の話し合いで、この小隊三十三人を二つに分割し、初日とその翌日との夜番にそれぞれ振り分けることを提案した。日没から夜明けまでの時間をおおよそで四つに区切り、この四つの時間帯を、各組の十六人で分担するのだ。つまり分割した夜の時間帯一つを四人が受け持つことになる。これは各人の負担が最も少なくなる。そして王立軍でも正式に採用されている夜番の基本形態でもあった。


もちろん僕もその役回りを引き受けるつもりでそう言った。


しかしこれに対して、さすがに僕に夜の番を任せるのはどうなのかということで初めは反対された。僕としては当たり前のことを提案したつもりだったのだが、思いのほか強い反対にあった。


それでも、こういう経験はこのようなときでもなければできないので是非にと言うと、エリックからも面白いという好意的な発言が出たために誰も反論できるような空気ではなくなり、無事に夜の番を受け持つこととなった。


初日の二巡目が僕の担当だった。携帯食による簡単な食事を終え、夜番の担当ではない者たちはみなテントに入り込んで眠っている。


今周囲は闇に包まれ、聞こえてくるのは風の音と、時折森の奥から動物たちの鳴き声がするばかりで、見えるのは夜の闇と夜空の星だけだ。僕は森の中にあって警戒を怠るつもりはなかったけれど、危険な場所にいるという緊張感と同時に、わずかばかりの高揚感も覚えていた。


結果的に、僕の見張っていた時間帯は魔物が近づいてくる気配は無いままに、無事に終わって交代となった。


僕はエリックと交代すると自分の天幕へと足を運ぶ。


狭い入口をくぐって中へ入ると、キースが一人横になっていた。彼は今日の一番最初の見張り担当だった。


僕は彼を起こさないようそっと自分の寝床へ移動する。まだ眠くは無かったけれど、明日のために眠らねばならない。


向こうを向いて眠っているキースにそっとお休みの声をかけて横になると、不意に彼が暗闇の中で動く気配があった。微かな衣擦れの音がして、暗闇の中僕の名が呼ばれる。


「見張り番お疲れさまでした」

「あれ、起きてたんだ?」

「はい。なんとなく眠れなくて。目は瞑っていたんですけれど」

「そっか。ありがとう。明日も移動なんだから君も早く寝ないと」

「はい」


小さな声が空気を震わせる。周りを気にして細められた声が僕の耳朶をくすぐった。


天幕の内側に沈黙が落ちた。


僕はキースのそばで横になりながら、自分の今の状態に目を向ける。僕はなんでか緊張していた。この、キースと二人きりであるという事実に、この狭く暗い空間の中で彼と二人きりであるという事実に、どうしてか緊張していた。


それは二年という時間の隔てのせいだったかもしれない。僕には話したいことがたくさんあった。聞きたいことがことがたくさんあった。


そのどれもを胸の奥に抱えたまま暗闇の中で僕が耳を澄ましていると、風が時折吹いて木々の梢を揺らした。森の奥に鳥や虫や何か別の生き物の気配があった。そして、薄い布一枚の向こう側では、エリックを含めた別の四人が夜の番をしている。彼らの話す声が、風に乗ってここまで届いていた。何を話しているのかまでは分からない。


「起きていますか?」


ふいに彼がそう言った。それは掠れていてとても小さい声だった。


「うん、起きているよ。どうかした?」

「いえ」


それきりキースは黙り込んだ。


「眠れない?」

「はい」

「明日のために、無理をしてでも眠らないと」

「はい」


そうして、再び沈黙が落ちた。


僕は寝返りを打った。それに合わせるようにキースも寝返りを打つのが、衣擦れの音で分かった。


僕はキースの眠りの邪魔にならないようじっと息を潜めていた。


時計がないために、どれほど時間が過ぎたかわからない。ほんのわずかであったかもしれないし、思ったよりも長い時間が過ぎたような気もした。


僕に眠りは一向に訪れなかった。


ただ僕は緊張感とともにじっとしていた。それは幼い頃のかくれんぼで、鬼に見つからないように隠れているときの緊張感にも似ていたかもしれない。なぜかそんな風に思った。


夜の気配は濃厚で、何か、言葉にできない粘度を持って僕らの周りにわだかまっている。それは、お互いがお互いを意識しているときの気まずさのようなものを孕んでいた。


キースも起きているだろうか。こっちを窺っているだろうか。それとも、もう眠っただろうか。


そんなことを考えながら、僕はできるだけ静かにしていた。呼吸するたびに、暗闇が僕の中に入り込んでくるような気がした。


天幕の向こうを誰かの歩く音が聞こえる。そしてそれは静かに通り過ぎて行った。


「キース、起きてる?」

「はい」


僕はその声に、体を反転させて、彼のいる方へ向いた。キースもこちらを向いたようだった。


「少しだけ話をしないかい?」

「はい」


しっかりとした返事が届いた。


「この二年間どうだった?危険なことはなかったかい?大変だっただろう?」


僕は、これまで忙しさのために彼と話をするためのまとまった時間がとれず、ずっと聞けないでいた彼のこの二年のことを尋ねた。


「そうですね……」


キースが辺境の軍に入隊してからのことをかいつまんで話してくれた。その声が耳に心地いい。


入隊後の基礎訓練、軍隊式のやり方に戸惑ったこと、孤児院出身の一般兵の教育をこっそりしていること、班長になったこと、今回の調査のきっかけになった音のこと、つらつらと、けれど分かりやすく彼は話した。


辺境軍で彼の経験したことはどれも一筋縄ではいかないようなやっかいなことのように僕には聞こえたけれど、彼はそのどれもが大したことではないと言うようにたんたんと話して聞かせてくれた。


「そちらはどうでしたか?」


僕のことをキースが尋ねる。


「僕?そうだなぁ」

「王立軍に入隊されて、今は中隊を預かっていると聞いて驚きました」

「あぁ、うん。そうなんだ」

「でも何故です?」

「必要なことだと思ってね」

「そうでしょうか」


キースの声に不思議がるような響きが込められていた。


「一般的な訓練のほかに、王都から離れて野外機動訓練のために遠征したりもしたよ」

「え、まさか、野宿したりもしたんですか?」

「もちろん。だから今こうしてここへ来ることができている」

「なるほど。でも大変でしたでしょう?」

「君だってそういう訓練はあっただろう」

「ええ、まぁ、はい」

「同じことだよ」

「でも王族のすることではないですよ?地面の上で寝たり、泥だらけになって走らされたり」

「何事も経験だからね。僕はやってよかったと思っている」

「そうですか」

「数日なら風呂に入らなくても平気なようになったし」

「そんなことまで」

「そうそう。一度ね、遠征の途中で替えの下着をだめにしてしまったことがあったんだ。そのせいで同じものを数日の間穿き続けなければならない事態になったよ。君に話したいと思っていたんだ。笑えるだろう?」

「そんなの笑えませんって……」

「……そうか」

「その時、誰か予備を貸してくれなかったんですか?」

「いたよ。親切な者が自分のものでよければって申し出てくれた。でも、断ったんだ。悪いから」

「そんなことはないですよ」

「君が同じ状況になって、自分の不注意でそうなって、簡単に他人に頼ることができるかい?」

「まぁ、そうですね」

「僕だってそうさ。甘えは無くさないと訓練にならない。それから、みんなで料理もしたよ」

「料理!上手くできましたか?」

「いや、全く。普段食べているものと、目の前にある食材や調味料とがうまく繋がらなくてね。組み合わせで味が変わるというのはわかるが、どう組み合わせるのかだとか、火の強さや焼き加減だとか、処理の仕方だとか、僕には完全に未知の領域だったよ。こればかりは周りの者に頼んでしまった。空腹のみんなの食事を完全に駄目にすることが怖かった。そんなことになったら目も当てられない。でも、その代わりやり方についてはしっかりと見せてもらったからね、いつか自分でやってみたいと思っている。この調査でそれが叶うかと思ったけれど、敵との距離が近いだろう?火は熾せないというじゃないか。だからね、次に持ち越しだ」

「ではそのときには、ご相伴に与らせてください」

「もちろん。味の保証はできないけれど」

「それも一つの経験です」

「そうそう。経験と言えばね、もう一つ君に話そうと思っていたことがあるんだ」

「何ですか?」

「僕は最初の一年は一般兵と同じ訓練を受けたんだ。その時のことをね話したかったんだ」

「一般兵と?本当ですか?」

「もちろん」

「平民や下級貴族に混じって?」

「そうだよ」

「よく許されましたね」

「伯父がね、王立軍の総帥なんだけれど、許可を出してくれたんだ」

「そんなことなさらなくとも良かったのに」

「そうでもないよ。必要なことだ。僕にもできることをなそうと思ったら、こうするのが一番良いと思ったんだ」

「でも、一般兵ということはかなり訓練がきつかったはずです。貴族と平民では扱いや待遇が違いますから」

「そうだね。かなりしごかれた。それでも、ほかの人よりは優遇してもらっているだろうから、辛いなんて言えないよ」

「うーん……」

「それでね、話を戻すんだけど、訓練だけでなく、食事や風呂も他の隊員にまじってしたんだ。さすがに軍の兵舎で寝起きするのは許可が下りなかったんだけれど」

「当たり前です。食事や風呂までなんて、それだけでも信じられません」

「そうかもね」

「辺境軍で出される食事は、こういってはなんなのですが、あまりおいしくは無いんです。もう慣れましたけれど、王立軍ではどうでしたか?」

「いや、うん、なかなか衝撃的な味だよ」

「あぁ、やっぱり」

「最初は完食することもできなかったんだ。でも、訓練はかなり辛いだろう?食べないと体が保たないんだ。だからね、気付けば食べきれるようになっていた」

「あぁ……」


感慨深そうな声が僕の耳に届いた。


「それからね、軍の大浴場も利用したよ」

「裸を下々の者に晒したんですか?それは……、いいんですか?」

「いいんじゃないかな。伯父上も入隊直後は利用したと言っていたよ」

「そうなんですね」

「君と学園のシャワー室を利用した経験が生きたよ。恥をかかずに済んだ」

「それは、良かったです。複雑な気持ちですけれど」

「軍の設備もね、あの寮のものと同じでね、大人数が一度に利用できるようになっているんだ。広さもずっとある。仕切りなんてそんなものは一切なくてね、下手すると外からも見えるよ」

「あぁ、はい。わかります」

「最初のとき、みんながね、びっくりした顔でこっちを見るんだ」

「それはそうでしょうね。まさか王子と一緒に体を清めるだなんて、想像すらしてなかったでしょうし」

「そう。それでね、すれ違う人すれ違う人みんなに見られてね、さすがに少し恥ずかしかったな」

「想像できます」

「でもね、やっぱり僕が軍にいるのが気に食わない人間というのはいるんだ。僕のせいで予定が狂ってしまった貴族の子息たちなんかはね。訓練初日の朝からずっと嫌な視線を投げかけてくる男たちがいたんだ。僕の挨拶も聞こえなかったように無視をするし。注意されれば適当な調子で返事を返してくる程度だから大したことはなかったんだけどね。彼らに何か思うところがあるというのはすぐに分かった。でも、彼らはそれを言葉にはしないし、直接何か仕掛けてくるなんてことはなかった。言いたいことがあれば言えばいいのにそうしない。なのに、態度は悪い。午前中の訓練でも、昼食時でも、午後の訓練でもずっとそういう感じなんだ。やっぱりそういうのははっきり言われなくても察せられるものだろう?僕としては普段通りにしているのに、意味も分からずそうされるのはさすがに少し堪えたな」

「そんな不敬な真似をする者がいるんですか……」

「うん。訓練自体はまぁ大丈夫だった。しっかり準備して体作りをしていたから。でもね、食事だけはね。どうしようもなかった。それで残しちゃったんだ。それを見て、まぁ、遠回しに揶揄されたんだ。周囲の者たちがそれを聞きとがめて一触即発の事態にまでいった。僕としてはそう言われるのも仕方ないと思ったしいい経験になったと思ったから、その場は抑えるよう頼んで大事にはならなかった」

「そんなことがあったんですか」

「午後の訓練のときもね、そんな調子でね。本人は隠しているつもりなんだろうけれど、そういうのはやっぱり漏れ出てくるものだ。まぁ、言葉にするわけでも行動に移すわけでもないから、無視したけれど、やっぱり気付く者にとっては気分の良いものじゃない」

「そうですね」

「それでその後すぐに、つまり最初の日の訓練が終わった後でさっそく問題が起きたんだ」

「どういう問題が起きたんですか?」

「汗を流すためにみんなで大浴場へ向かったんだ。その浴室で、とうとう彼らの態度に業を煮やした周りの者たちが僕の代わりにその問題の男たちに注意してくれたんだ。それは完全な善意からきた行いだとは思うけれど、僕はそれを望んでいたわけではないから、少し困ってしまった。慣れないきつい訓練でイライラが募っているだろう?些細なことで、どんどん言い合いは苛烈になっていった。いつ手が出てもおかしくない状況だった。軍内で隊員同士の暴力はご法度だ。懲罰もありうる。だから、僕はどうやってこの場を収めようかと悩んだ」

「自業自得ですよ、それは。いい歳をした大人が態度に不満を現すなんて、しかも一国の王太子に向かって。それは仕方ないことだと思います」

「そうだろうね。でもそれは、こうなってしまったのは自分の責任でもあるから事態の収拾のために騒いでいる男たちの元へ近づいたんだ。相手は僕の知らない貴族の男だったんだけれど、言い合いしているところに僕は声をかけたんだ」

「はい。それでどうなりましたか?」

「それがね、なんというか、僕は本当に運がないんだけれど、彼らを止めに入ったときにね、腰に巻いていたタオルが落ちてしまってね」

「……はぁ」

「なんというか、みんなを驚かせてしまったようで、周りのみんなの視線が一度に、その、僕に集まったんだ、急にみんな黙りこくってしまって、一種異様な空気が浴室に落ちた。けれど、こういうのを怪我の功名というのかな、そのおかげで騒ぎは一時中断してしまったんだ」

「あぁ……」

「僕はこれ幸いと、自分の正直な気持ちを語った。実際に訓練の過酷さを知らねば、この国を支えてはいけないからというようなこと、王立軍入隊のために体作りに励んできたこと、それから、この国を守るために日夜訓練に励んでくれている王国の兵士を僕は尊敬しているというようなことをね」

「どうなりましたか?」

「それで、一度冷静になったからだろう、いきり立っていた男たちの気勢がそがれてその場はそのまま解散になったんだ。僕の恥と引き換えに、大事にならずに済んだというわけだ」

「いや、まぁ、はい。なかなか貴重な体験でしたね……」

「うん、そうなんだ。それで、それ以来、なんでかその僕のことが気に食わなかったらしい彼は随分大人しくなってね、今では気さくに話ができるようになった。まだ僕のことを気に食わないと感じている連中はいるみたいだけれど、一年もすればほとんどいなくなったと思う」

「その場が丸く収まって良かったです。でも、だからそんなに体つきががっしりしているんですね。最初見た時別人かと思いました」

「そうだろう。僕は相当頑張ったんだよ」

「そうでしょうね。私にはわかります」

「君もだいぶ変わったよ。ずいぶん体が出来上がってるからね」

「はい。私も頑張りました。あちらでは体が資本なので。でもあなたにはかないませんね」

「どう?すごい?」

「はい」

「触ってみる?腹筋もね、八つになったんだ」

「八つ?!それはすごいです。私は六つなので」

「見る?」


僕は横にしていた体を起こした。


「え、いや、結構です」

「そう?遠慮しなくていいのに。君のために鍛えたんだよ」

「意味がよくわかりません」

「君が喜んでくれるかなと思って」


ほら、と僕は魔法で小さな明かりを灯そうとした。一応周囲に配慮してほんとうにろうそく程度の明かりを。


「駄目ですって。その、そういう状況でもないので」

「そうか。そうだね」

「はい」


安堵の声が耳に届いた。


「じゃあ帰ってからね」


僕の言葉にキースは答えなかった。


久しぶりにキースと話ができて、緊張がほぐれたのだろうか。眠気が僕に訪れていた。


「なんか眠くなってきた」


あくびが口をついて出た。


「私もです。お喋りしたからでしょうか」

「そうかもしれない」

「明日も朝から歩き通しでしょうから、そろそろ寝ましょう」

「うん。そうだね」


キースが体勢を整えるような音がした。僕もそれにならって起こしていた上半身を横たえる。


「アルベルト、おやすみなさい」

「うん。おやすみ、キース」


そう言って目を閉じると、急に今日一日の疲労が意識された。そして、しばらくして睡魔がやってきて、僕は知らぬ間に眠りに落ちていた。


意識を手放す直前、キースの声がもう一度おやすみというのを聞いた気がした。


そして、翌日。僕らが監視塔を出て二日目。


順調に歩き進め、遅い昼の休憩をとっている頃だった。


ここまでくると、耳を澄まさなくても爆発音が遠くから微かに聞こえてくる。腹に響くような低音は間違いなく爆炎魔法のそれで、一定の間隔で届くその音から明らかに人為的な活動がこの先で行われていることが知れた。


それにつれて、徐々に出くわす魔物の数も減っていった。おそらくはこの音を忌避してこのあたり一帯から離れたのだろう。


僕らは最初、調査が無駄足になる可能性も心配していたが、こうなると実際に調査に乗り出す決断をしたことが英断だったと思うようになっていた。もはや疑いようもなかったからだ。近づくごとに、爆発音だけではなく硬い何かが魔法によって破壊され、それが崩れるような音と、空に上がる白い粉塵が遠くに薄く見えるようになった。


ここまでくると、僕らはそれを目指して進むだけで良かった。


あと僅からしいという地点までやってきたところで、夜が近付いてきて、そのまま僕らは野営に入ることにした。見通しの悪い森の中で無理は禁物だった。どこに罠が仕掛けられているかわからないし、こちらの接近を知られたりしては、全てこれまでの準備が無駄になる。


これ以上近づくのは夜が明けてからにすべきだいう判断から、僕らは野営の準備に取り掛かった。


同行者たちが気を使って、アルベルト・エリック・キースの三人を同じテントにしてくれました。


フルチンで話をする王子を見ながら

モブ「あそこのサイズもロイヤルなのかよ……」

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