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第二話 君との思い出

 僕は梨々香からのメッセージが来たことがまず嬉しかった。しかしそこで浮かれちゃ駄目だと自分を持ち直した。まだ確認していないので母親からのメッセージかもしれないし、もしかしたら話し合いさえ拒否する内容かもしれない。


 勉強途中だけれど、少しだけ休憩するつもりでスマートフォンを開いた。

 そこには通知バナーに一つだけ。


「私がもし不治の病に罹ったって言ったらどうする?」


 もしかしたらただの友人間の遊びなのかもしれない。周囲の人にそう聞いてみるみたいな。それでも僕の胸は波立った。


 大事なテスト前に、体調を崩してはいけない時なのに。やるべきことではないというのは分かっている。だけど。


 僕の優先順位の上位にはいつも彼女がいる。だから多分仕方がない。


 自室から出て一階に下りる。


 母さんに「ちょっとコンビニ行ってくる!過去問コピーする!」と言って玄関のドアを乱暴に開け飛び出した。


 本当な訳がない。けれどほんの一パーセントでも可能性があるのなら、彼女の心に寄り添いたいと思った。


 彼女は何かと冗談がお好きだから嘘だろうという冷静な僕は、その時何故か隠れてしまっていて、本当かもしれないという熱い僕が勝手に走り出してしまった。


 走っている間に、僕の眼鏡はどんどんずり落ちた。冷たい空気は肺を刺し、出る息は視界を曇らせる。曇り眼鏡で見る街灯はイルミネーションのように輝いて、彼女のもとへ向かう僕を祝福していた。


 小鼻のあたりまで落ちる度に眼鏡を軽く押すのだけれど、その度に汗でずり落ちる。


 この眼鏡は、彼女と買いにいったものだ。


 彼女は地域の眼鏡屋さんでアルバイトしていて、高校生だというのに眼鏡に関しては大人も驚くほどの知識を持っていた。僕が眼鏡を買い替えようかな、というと、彼女は決まって私が選んであげるよ、と言ってくれるのだった。


 彼女と別れてから母が安い外国産の眼鏡を買おうとしてくれる度に僕は嫌がった。本当に使えなくなるまで思い出を残しておきたかった。

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