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第参拾玖話 二人の協力者

 




「ナポレオン、お主に頼みがある」


「サイ様の頼みとあらば、例え火の中水の中、我輩は何でもいたしますぞ!」


「ありがとう。では、俺の使い魔になってくれないか」


「ふぇ? 我輩が、サイ様の使い魔でありますか?」


「うむ、そうだ」



 エイダン宰相閣下とのやり取りの後、俺はすぐに大魔境にあるオーガの里を訪れていた。久しぶりに訪れた俺に、修羅達が笑顔で歩み寄ってくれる。


 そんな大したことでもないのに、慌てて他の者達まで呼びに行ってしまった。屋敷に集まってくれたタロスや信玄や正宗、ゴップにボルゾイ殿達と挨拶を交わす。



「それにしてもサイ様、急にどうなされたのですか?」


「うむ、ナポレオンに用があってな」


「我輩ですか?」



 修羅に尋ねられた俺は、ナポレオンに使い魔になって欲しいと頼んだ。

 何故突然使い魔になって欲しいと頼んできたのか疑問を抱いていたので、オリアナ王女の話を詳しく説明する。



「驚きました、サイ様にそれほど慕っておられる者がいたのですか」


「ああ、俺の命よりも大切な御方だ」


「そ、それほどまでですか……」


「何驚いてんだよシュラ。がきんちょにも好きな女ができたってだけだろ~が。ませやがってよ~このこの~」


「そういう訳ではないのだがな」


「やめなよクレハちゃん、失礼だよ」



 にまにまとかんさわる笑みを浮かべながら、枯葉が俺の頭をぐりぐりと撫でる。その無礼な行いを、青ざめた顔の命が止めてくれた。

 うむ、お主等も相変わらずで何よりだ。



「ですがサイ様、何故よりにもよってナポレオン(こいつ)なのですか? 政宗オレやシンゲンでもよいではないですか」


「サイ様の為なら、どんな敵でも倒します」


「タロスもできる。ムフー!」


「その気持ちは嬉しいが、お主達は『竜魔結界』がある限り国内に入れんだろう」


「「あっ」」


「成程、だから亜人のナポレオン殿という訳ですな」


「そうだ」



 納得したような水月の言葉を肯定するように頷く。

 実力的に考えれば、シュラ達の方が頼りがいはある。だが、そもそも魔物や魔族は王国の中に入れない。


 しかし、亜人であるナポレオンなら話は別だ。

 ボルゾイ殿やダンケがゾウエンベルク領に避難してきた時のように、亜人ならば『竜魔結界』を通ることができる。


 ドワーフも亜人ではあるが、彼等はそういったことに不向きだろう。彼等の中で一番適任なのがナポレオンなのだ。



「俺が信頼している者達の中で、オリアナ王女を任せられるのがお主しかいないのだ。どうか俺に協力してくれないだろうか。この通りだ」


「はっはっは! サイ様にそこまでお願いされては、引き受けない訳にはいきませんでしょう! このナポレオン、王女殿下のつるぎとなりましょう!」


「ありがとう、ナポレオン。恩に着る」



 頭を下げて頼むと、ナポレオンは剣を天に掲げながら引き受けてくれた。

 早速、小夜にした時と同じように、使い魔の契約を行う。俺の血をナポレオンに舐めてもらうと、契約が交わされた。



「よろしく頼むぞ」


「お任せあれ」


「頑張れよ、ナポレオン」


「サイ様の期待を裏切るんじゃないぞ」



 ◇◆◇



「我輩はナポレオン! 可憐な乙女よ、よろしく頼むぞ」


「ね、鼠が喋った……」


「彼は鼠人そじん族のナポレオン。見た目は鼠だが、れっきとした亜人だ。言葉も話せるし、人間と同じだと思ってもらって構わない。まぁ、少しお喋りだがな」


「そ、そうなのか……」



 ナポレオンを目にしたエリスは目と口を大きく開けて驚いた。


 俺も初めてに会った時は同じように驚いていたから気持ちは分かる。どう考えても鼠にしか見えない動物が喋っているのはおかしく思えるからな。



「王宮内のことは彼と協力して欲しい。王女のことは彼にも事前に伝えてあるから大丈夫だ」


「麗しき乙女よ、我輩がいれば問題ないぞ! 悪漢だろうが悪鬼だろうが退治してしんぜよう! こんな風にな! トゥ! ヘア!」


「“これ”が協力者で本当に大丈夫なのか?」


「……大丈夫だ、ナポレオンは賢く優秀だ。それに俺と彼は使い魔の契約を結んでいて、何かあれば念話で俺と連絡できるようになっている」



 ナポレオンと使い魔の契約を交わした一番の理由がそれだ。


 使い魔とは魂が繋がっているので、遠く離れた所にいても、魔力を使わず会話をすることができる。

 それに俺の場合は、小夜にした時と同じように鑑定眼の能力によって使い魔と視覚を共有することができる。


 本人には悪いが、戦いについては期待していないし、彼の強みはそこではない。彼は賢く、政宗との哨戒訓練によって素晴らしい判断能力を身につけている。王女に危険が迫れば、すぐさま俺に伝えてくれるだろう。



「亜人を使い魔にするなど聞いたことがないぞ……貴様本当に何者なのだ?」


「詮索は無しだ……いや、長い付き合いになるだろうから呼び名くらいはいいか。そうだな……俺のことは“しのび”と呼んでくれ」


「シノビ……聞いたことのない響きだな」



 それはそうだろう。

 異国に忍びは存在していないし、概念すらないのだから。



『ナポレオンも、人前では俺のことをサイではなく忍びと呼んでくれ』


『分かりましたぞ、サイ……じゃなかった、シノビ様!』



 そういえばナポレオンに注意しておくのを忘れていたな。

 彼はお喋りだから、勢い余って俺の正体を明かしてしまいそうだ。それでは折角正体を隠しているのに意味がない。


 後でしっかり念を押しておくか……。



「兎に角、王女から目を離さないように二人で協力して欲しい」


「……いいだろう。貴様と違ってナポレオン殿は悪い奴ではなさそうだしな。私はスタイン男爵家が長女、エリスだ。よろしく頼む」


「エリス殿、共に王女をお守りいたしましょうぞ!」



 うむ、とりあえず二人の気が合いそうで安心した。

 どちらも騎士道精神に溢れているから、似ているところがあるのだろう。



「早速だがエリス殿、王女の敵となる者を教えてくれ。今は少しでも情報が欲しい」


「敵……といってもな。可哀想ではあるが、現状は敵だらけだ。ただ、大きく二つに分けて第一王女のマーガレット様と第二王女のコーネリア様の派閥がある」


「その二大派閥がオリアナ王女の命を狙っているのか。二人の関係性を教えてくれないか」


「分かった」



 エリスから聞いた話を纏めると、マーガレット殿下とコーネリア殿下は父親違いなのもあって姉妹仲が良くない。

 というより、王配である父親同士の仲が悪い。


 第一王配のユーベン殿下は保守派で、今までのように竜と『竜魔結界』に守られながら、争いもせず自国を繁栄していく考え。


 逆に第二王配のオズワルド殿下は軍属の出であり、軍事力に力を入れて争いに備えたり、冒険者制度なども積極的に取り入れたいと考えているそうだ。



 歩もうとしている道が全くの別方向なのだから、仲が悪いのも頷ける。

 そして親の思想は子供にも引き継がれているからか、それぞれの子供達の関係も良くないそうだ。


 それに他の貴族達も、殆どがどちらか二人の派閥に属しているそうだ。因みにゾウエンベルク家は女王陛下に忠誠を誓っているのでどちらにも属していない。



「マーガレット様とコーネリア様も、以前までは裏で命を奪い合うような激しい政争を行っていたそうだ。だが、マーガレット様が次期女王を諦めたので今は落ち着いている」


「何故諦めたのだ?」


「竜紋は十五歳の成人を越えた辺りから発現されると言われているが、マーガレット様は一向に発現されず、二十二歳になった今でも発現しなかったので諦めたんだ。まだ十八歳であるコーネリア様に発現する可能性が高いと踏んだのだろう。しかし――」


「――蓋を開けてみれば竜紋が現れたのは十歳のオリアナ王女だったと」


「そうだ。私の予想では、次期女王と有力視されていたコーネリア様とその派閥が一番にオリアナ様の命を狙ってくると考えている」



 エリスの考えは尤もだ。

 次期女王だと周りから期待されていたのに、横からかすめ取られてしまったのだから怒り狂っていることだろう。何が何でもオリアナ王女を消しに来る筈だ。



「マーガレット殿下の動きはどう見ている」


「マーガレット様の派閥はオリアナ王女を懐柔しようとする動きもあるが、マーガレット様本人には動きがない。恐らく、コーネリア様の凶手からは逃れられないとお考えなのだろう」


「だから今は静観か。どうせコーネリア殿下がオリアナ王女を始末するだろうから、自分が動くまででもない、と」


「そうだと思う」



 ふむ、エリスの考えではマーガレット殿下は年齢の関係で女王の座を諦めたと考えているみたいだが、俺はそうは思ってない。


 何故なら、竜紋の継承者が死ねば必ず次の王女に継承されるからだ。


 オリアナ王女のことは置いておいて、仮にコーネリア殿下に竜紋が発現していたらマーガレット殿下は確実に殺しにいっていただろう。


 そうすれば、次の女王候補である自分に竜紋が発現する可能性が高いからだ。


 そのシステム(仕組み)がある限り、年齢だからと諦める理由にはならない。周囲にそう言い触らしているだけで、実際は虎視眈々と何かを狙っているのだろう。


 次期女王になる為の何かをな。



「目下の敵はコーネリア殿下か。因みに、オリアナ王女に味方はいないのか?」


「残念だがいないだろう。陛下と宰相閣下は中立で、他の者は全てマーガレット様とコーネリア様の息がかかっているからな。唯一の味方であった父君のシュナイゼル殿下も、数年前に亡くなられてしまっているし」


「となると、王女の味方は俺達だけか。一応聞いておくが、お主も味方に含めていいのだな?」



 真意を問いかけると、エリスは「無論だ」と力強く言って、真っすぐな眼差しで俺を見ながら口を開いた。



「私は元々騎士を目指していた身だ。例え誰かに唆されようとも加担したりなどしない。オリアナ様に仕える侍女としての責務を全うする」


「それを聞けて安心したぞ」


「貴様こそどうなのだ。背丈や声色からしてまだ子供のように思えるが、何故そこまで必死になってオリアナ様を助けようとする。目的はなんだ」


「恐らく信じてもらえないだろうが、オリアナ王女を守ることが俺の目的だ。俺の全てがそこに行き着いている」



 俺の意志をはっきり告げると、エリスは大きな息を吐いた。



「王女にも騎士ナイトがいたとはな。まだ子供だし怪しげではあるが、王女が知ればきっとお喜びになるだろう」


「そんな事より、お主に確認したいことがある。何か付け込まれる弱みなどはないか?」


「どういう意味だ、私が弱みを握られて裏切るとでも? それは私への侮辱だぞ、今すぐ撤回しろ」


「いや、何かある筈だ。確かに金や地位ではお主が揺らぐことはないだろう。だがお主にとって大切な人などを人質に取られたらどうなるか分からん」



 負けじと追及すると、彼女は俺を睨むのをやめて顔を俯かせる。

 この様子だと、やはり何か弱みがあるようだな。



「私には、原因不明の不治の病に侵されている妹がいる。体力的にも残り僅かの命だろう。もし妹の病を治せると言われたら、私は揺らいでしまうかもしれない……」


「そうか」


「いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。確かに弱みだが、妹の代わりに王女を売るなど騎士の風上にも置けぬような真似はしない。それに、多くの医者が匙を投げた病だ。今更都合よく治せる筈などない」


「教えてくれて感謝する。では、その妹に会いに行こう」


「会いに行くって……ステイン家は王都から遠く離れているんだぞ。侍女としての仕事があるのに、いつ会いにいくのだ」


「何を言っている。今から行くぞ」


「はっ?」



 ◇◆◇



 俺はナポレオンとエリスを連れて、ステイン家の屋敷を訪れた。


 彼女の言う通りステイン家は王都から遠く離れているが、千里鑑定眼と変わり身の術を何度か使えば辿り着くのに時間はかからなかった。

 移動する度に驚き、エリスが「お前はいったい何者なんだ」としつこく尋ねてくるのは面倒だったがな。



「彼女が妹か」


「ああ……私の三つ下、まだ十三歳のユリスだ」


「可哀想でありますね……」



 俺達の目の前には、寝床に伏せている一人の少女。

 濃い青髪のエリスに比べて、ユリスは薄い青色の髪色だった。本来は綺麗であろう顔は病人のように痩せこけ、肉体は枝のように細い。


 辛うじて生きているような状態だった。


 大切な妹を見下ろすエリスは、悔しそうに身体を震わせながら話し出す。



「ユリスは、私なんかでは遠く及ばないほどに剣の才があったんだ。このままいけば、父上の跡を継いで女でも騎士になれる可能性があったんだ」


「……」


「なのに、一年前に突然体調を崩して、治るどころか身体の感覚をどんどん失ってゆき、今ではもう死を待つだけの寝たきりの状態なんだ! 大好きな剣も持てず、自分の足で立つことも、目を開けることさえできない! 変わってやれるものなら、今すぐ変わってやりたい! ユリスが感じている痛みを、苦しみを、私が全部引き受けてやりたい!」


「エリス殿……」



 己の無力さを嘆くように叫ぶエリスに、ナポレオンが労わるように寄り添う。


 彼女はそこまで妹を大事に思っているのか。

 やはり今知っておいてよかった。妹の命が助かると交渉されれば、エリスはオリアナ王女を売って妹を助けていた可能性が高い。


 人間という生き物は、目の前に希望を用意されたら飛びついてしまうものだからな


 さて、後は俺の力で妹を治せるかが鍵になってくるな。


(鑑定眼!)


『ステータス

 名前・ユリス=スタイン

 種族・人間

 レベル・3

 スキル・【剣豪】』


『【剣豪】スキルとは、【剣術】スキルが進化した能力』



 ふむ、【剣豪】スキルがあるからして、確かにエリスよりも剣の才がありそうだな。だが、レベルは3と子供程度しかない。


 これは死人同然にまで身体が衰えてしまったから、レベルも下がってしまったのだろう。レベルは“個体の強さ”だからな。衰えれば下がることもある。


 しかし、俺が知りたい肝心の情報が出ていないな。

 もっと深堀するか。



(ユリスは何の病に侵されている?)


『消失病』


(消失病とはなんだ?)


『消失病とは、身体の感覚が徐々に失われ、最後は死に至る奇病』


(消失病を治す方法はあるか?)


『人魚の生き血と仙桃せんとうの葉を混ぜた仙薬を飲ませる』



 鑑定眼のお蔭で情報を得ることができた。

 まずユリスが侵されている病は消失病。そして治すには人魚の生き血と仙桃の葉を混ぜた薬が必要だ。

 どちらも俺には心当たりがある。今すぐ取りに行ってくるか。



「妹の病気を知っている」


「本当か!?」


「ああ、消失病といって身体の感覚が徐々に失われて死に至る奇病だ」


「消失病……聞いたこともないが、症状はユリスのと同じだな」


「治す方法も知っている。今から薬を取ってくるからここで待っていろ」


「何だと!? あっおいちょっと待っ――」



 驚くエリスを無視して、俺は空間転移(変わり身の術)で再び大魔境に訪れる。魚人族のペペに事情を説明し、人魚の血を少し分けてくれないかと頼んだ。



「サイ様のタスケになるならば、喜んで差し出しましょう。どうぞ、ワタシのでよければいくらでも持っていってクダサイ」


「いや、お主の血ではなく人魚達の血が欲しいのだが」


「ソ、ソウデスカ……」



 ペペに協力してもらい、人魚の血を分けてもらう。

 今は急がねばならんので、礼は後にして仙桃の葉を取りに行く。


 仙桃の木はオーガの里に生えている。

 甘くて美味いし、食べると身体の回復が早いので、修羅達の鍛錬をしていた時に皆でよく食べていた。


 今は時期的に実ってはいないが、必要なのは実ではなく葉なので、枝から数枚抜き取って回収する。

 仙薬の作り方を鑑定眼に教えてもらいながら作り終えた俺は、再びスタイン家に転移した。



「薬を持ってきたぞ」


「うわぁ!? いきなり現れるな、びっくりするだろう」



 驚いているエリスに、懐から仙薬が入っている小瓶を取り出して差し出す。



「これが薬だ。強力だから数滴だけ飲ませろ。」


「わ、わかった」



 俺から小瓶を受け取ったエリスは、蓋を取って寝ているユリスの口元に近付ける。

 ユリス自身が口を開けることはできないので、エリスが片手で口を開けさせながら薬を飲ませた。


 すると――、



「ん……んん……」


「ユリス、ユリス」


「お……姉ちゃん?」


「ユリス、目を開けられるか?」


「うん、開けられる。開けられるよお姉ちゃん。私、お姉ちゃんの顔が見えるよ」


「ああ、ユリスッ! もう大丈夫だ!」



 意識が目覚め、ゆっくりと目を開けて姉を見た妹。

 そんなユリスを、エリスは嬉し涙を溢れさせながら優しく抱きしめた。俺とナポレオンは席を外し、姉妹のひと時を静かに待つ。



「具合はどうだ」


「ああ、疲れたのか眠ってしまった」


「そうか。薬を渡しておく、強力だから毎日一滴ずつ飲ませてくれ。空になる頃には完治しているだろう」


「ありがとう、シノビ殿! なんとお礼を言ったらいいか!」


「むぐ……」



 勢いよく抱き付かれ、顔が胸に押し付けられて息ができん。

 仮面越しなので顔もそこそこ痛いぞ。俺はエリスの肩を掴んで引き離すと、用事を済ませるよう伝える。



「礼などいい、俺の為にやったことだからな。それより王女が心配だ、王宮に戻るから家の者を叩き起こして薬の説明をしてこい」


「分かった、だがもう一度言わせて欲しい。私の大切な妹を救ってくれてありがとう、シノビ殿」


「礼はいいから早く行ってこい。それとくれぐれも俺の存在は他言するなよ」


「ああ、分かっているとも」



 家の者に説明を終えたエリスとナポレオンを連れて、王女の部屋に戻る。王宮には直接転移できないので、上空に転移してから空を滑空し、開けておいた窓から侵入した。


 王女の無事を確認してから、エリスにもう一度俺のことを他言するなと注意し、二人に王女のことを任せて俺も隠れ家に戻った。




「ふぅ……流石に疲れたな。千里鑑定眼と変わり身の術を使い過ぎた」



 ふかふかのベッド(寝床)に背中から倒れる。

 今日だけで、王都から大魔境の距離を二往復している。こんなに千里鑑定眼と変わり身の術を使ったのは初めてで、久しぶりに魔力を使い果たした疲労感が襲ってきた。



「だがそのお蔭で、今日中に王宮の中を固めることができた」



 侍女のエリスに、使い魔のナポレオン。

 王宮の中に関して俺は干渉することができないので、二人を信じるしかあるまい。分身の術を置ければ一番安心なのだが、あれは魔力の塊なので王宮の中では使えんしな。


 妹の件で俺に恩があるエリスは裏切ることはないだろう。

 ナポレオンに関しては心配する必要もない。

 後は二人が協力して上手くやってくれることを祈るだけだ。



「やれることはやった。これで閣下の試験に集中できる」



 これからやるべき事を整理していたのだが、いつの間にか眠ってしまったのだった。



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