第1話 その日は突然訪れた
なぜだか、今日はいつもより早く目が覚めた。いつも通り、布団から出ようとする。しかし、どことなく違和感を覚える。「誰かが私のことを呼んでる?」でも私の名前ではない。私の名前は「ミエ」だ。佐藤美恵。それが私の名前だ。けど、呼ばれている名前は、「リ、、リリス?」。「リリス」って誰なの。そもそもこれは誰の声。男の声なのは確か。「お父さん?」そう言ってみると笑い声がした。
「どうした、寝ぼけているのか?」と男が言う。「やっと『特殊攻撃魔法の回避方法、そして反撃手段について』の講義が終わったって言うのに、お前ったら講義聞かずに寝てるんだもんなぁ」。
男はそう言って笑っている。私は困惑している。「魔法?一体何の話?」。気がつくと、私は机にうつ伏せで寝ていたようだ。ここは家ではない。学校だ。けど、私の通っている高校ではない。
「ここはどこ?」と私は尋ねた。「それに、あなたは誰?」
男は苦笑しながら答えた。「リリス、お前本当に寝ぼけているんだな。ここは2628年、エムリエル暦605年の第6国立魔法学院だよ。そして、俺はアダム、お前と同じクラスだよ」
「2628年?エムリエル暦?何言ってるの?ここは日本の20XX年じゃないの?それに『魔法』なんてあり得ないでしょう?」
アダムは不思議そうに私を見つめた。「日本?20XX年?一体いつの話をしてるんだ?お前、本当に大丈夫か?日本も他の国も全て一度消えたんだぜ。歴史で学んだだろ?」
「消えた?それって、どういうこと?」
「20XX年に世界同時核戦争が起こって、地球の文明は一度滅んだんだ。その後、魔法によって再建された。だから今の時代は魔法が存在するんだ」
私は信じられない思いで、手をつねってみた。「痛っ!」現実の痛みが私を現実に引き戻す。これが夢でないなら、私は本当に異世界に来てしまったのかもしれない。
「アダム、魔法を見せてよ」
「急にどうしたんだ?まぁ、お前も魔法使いの一員だから、見せてやるよ。『魔法実技演習空間虚無の間』に来い」
私は少しワクワクしながらも、日本での家族や友人たちを思い出し、少し寂しくなった。「どうして私はこの世界に来てしまったんだろう」
魔法実技演習空間虚無の間に向かう途中、宙に浮いて光を放つスイカ大の球体を見つけた。それに手を触れた途端、光が私を包み込み、吸い込まれるようにして消えた。
「ここはどこ?」
足元があるのか無いのかもわからない不思議な空間にたどり着いた。広さもわからない。
「よう!流石に迷子にはならなかったか」と声がした。アダムがいた。
「当たり前でしょ!」私は強気で答えたが、内心は不安でいっぱいだった。
アダムは黒く美しい光を放つ長剣を振るい、炎や氷、雷を自在に操ってみせた。「この剣は『アーリマン』と言うんだ」
アダムは成績トップで入学した魔法師だった。普通の魔法師にはできない複雑な魔法を次々と見せた。
「リリス、お前も何か魔法を発動してみろよ」
「でも、魔道具なんて持ってないし、、、」
「はぁ?じゃあどうやって魔法師になったんだよ?」
「私、そもそも魔法師じゃなくて、この世界の人間じゃなかったの」
「どういうことだ?じゃあどこから来たんだ?」
「だから、日本だって!私がいたのは20XX年だったんだ、、、」
「タイムスリップでもしてきたっていうのか?日本はもう無いって言ってるだろ?とうの昔に、、、まて、20XX年って言ったか?じゃあ世界が一度消える4年前じゃないか、、、」
「世界が一度消える?なんで?じゃあ私の家族は?みんなは?」
「本当に言っているのか、、、ああ、その当時の人たちはほとんど死んだはずだよ。世界人口が4分の1にまで減ったんだ。この世界に今生きている人たちは、そう学んだんだ」
「けど、なんで?」
「20XX年に起こった『世界同時核戦争』だ。あれで、、、」
それを聞いた私はその場で泣き崩れてしまった。
「何なのもう、、、お父さん!お母さん!レオ!えりさ!みんな、、、」
それから2日後、私は落ち着きを取り戻し、
「みんなの分も、この世界で生きていくよ!」
そう決意したのである。
魔法少女は恋してる 第1話 その日は突然訪れた END