第1話 ○○と初めまして。
前の三作が終わらないまま何故か四作目を書き始めています。(笑)
他の三作も続き書きますのでよかったらご覧下さい。
作品タイトルは予告無く変わる可能性があります。
最愛の彼女が死んだ。
こんなどうしようも無くダメな僕を、ただ一人愛してくれた彼女。
時間が戻るならあの事故の日へ戻りたい。どれだけ悔やんでも悔やんでも彼女は帰ってこない。
「やっぱりあの時断っておけばこんなことに……。」
そう呟いてからふと思い出す。
「私が守ってあげるよ。」
この言葉が彼女、凛花先輩の口癖だった。
「凛花先輩……。」
先輩との思い出が蘇る……。
先輩と出会ったのは大学の部活勧誘の場でだった。
「ちょっと君!」
声のするほうへ振り返るとそこにはとても綺麗な人が僕を見つめて立っていた。
黒くサラサラで長い髪。まるで女優のようなスタイルと顔立ち。ああ、これが一目惚れってやつなのか。
「ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「あ、は、はい!大丈夫です!」
「元気が良くてよろしい!もう部活って決めちゃったかな?」
「いえ……。特に入るつもりもないので。」
「あら、、。何か理由があるの?」
「まあ、あるといえばありますけど。」
「気になる言い方ね。先輩に話してご覧なさい?」
「信じて貰えないと思いますけど。」
「決めつけるのは良くないわ。何事も挑戦してみましょっ!」
随分明るい人なんだな……。大抵の人はこう告げるだけで面倒臭がっていなくなるのに。
「僕不幸なんです。」
「……?」
「あ、言葉足らずですね。昔から不幸な体質って言うんですかね、、。遠足に行けば車に轢かれかけたり、海に行けば波に流されて遭難したり、工事現場の鉄材が頭上から降ってきたり、、。」
「……。」
「まあなんとか生きてこれてるのでそれだけは幸運なのかもしれませんね。」
「じーっ。」
「一緒にいる友達が怪我することも多々あったので、中学の時からは一人で過ごし始めました。」
「じーーっ。」
「だから大学でも勉強一筋で部活には入りません。もう誰かが傷つくのは見たくないんです。」
「じーーーっ。」
「……何か言ってもらってもいいですか?そんなに見つめられると対応に困ります。」
「……そ、そうよね。」
なんて伝えたらいいのかしら?あーでもないこーでもない……。
何やら先輩は葛藤している様子だ。
「僕そろそろ帰りますね。誘っていただいてありがとうございました。」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんですか?」
「私オカルト研究部なの。」
「は、はぁ。」
「そしてオカルト研究部は部員が一人。どういうことかわかる?」
「先輩がぼっちってことですか。」
「その通り!……じゃなくて!このままだと部の存続が怪しいのよ。」
「そうですか。なら早く他の人に声をかけないと、、。」
「こ、こんな美人と二人きりの部活なんて他にないわよ!」
「それ自分で言います……?」
「と、とにかく見学だけでも来て!今すぐに!」
「僕の話聞いてました?僕といると先輩が怪我したりするかもしれませんよ?」
「聞いてたわよ。だからこそ見学に来て欲しいの。」
どういうことなんだろうか?グイグイ来る先輩を断りきれず僕はオカルト研究部の部室へと連れていかれた。
「ここが部室よ。どうかしら!」
怪しげな本の山、薄暗い部屋、謎の魔法陣。
「いかにも厨二病の部屋って感じですね。」
「えっ。」
「まあ人の趣味はそれぞれなので悪いとは思いませんよ。」
「わ、私が厨二病みたいに言わないで!」
「この部屋堂々と見せたあとで言われましても……。」
「……。」
「な、泣かないでくださいよ。」
「……泣いてないもん。ぐすん。」
「と、ところで部室へ連れてきたってことは何か見せたいものでもあるんじゃないですか?」
僕は逃げるように話題を逸らす。
「……あ!そうなの!」
暗い顔がパッと明るい顔へと変わる。
よかった。辛いこととかもすぐ忘れるタイプの人なんだろうな。
「さっき話してた不幸のことなんだけど。この本ちょっと見てくれないかしら?」
「本……?」
『悪霊に取り憑かれた哀れな者の末路』という本を手渡される。
「いかにも胡散臭い本ですね。」
「いいからいいからその本の23ページ目を開いて。」
なんでページ数まで覚えてるんだこの人……。
「えーと?悪霊に取り憑かれた人に起きる現象について。」
「そう、そこ!」
「悪霊に取りつかれると運気が下がります。悪霊が低レベルだとアイスの当たりが出なくなる、コイントスが三回連続で外れる、自転車のチェーンがよく外れる等の不幸が訪れます。」
これ僕が小学生の時よく起きてた事ばかりだ。
「強い悪霊になってくると、交通事故に合う、病気にかかる、自殺行為をする……。」
自殺しようと思ったことはないけど、交通事故も病気にもかかったことはある。
「どうだったかしら?」
「確かに経験したことはありますけど、決めつけるには信憑性がないと言いますか……。」
「確かにその本だけだとあなたの言う通り。あ、君の名前聞いてなかったわね。」
「このタイミングで聞きます?!」
「私は風野凛花。ほら君も自己紹介して。」
「鈴宮久志です。」
「久志君ね。久志君の言う通りその本だけだと信憑性が足りないわ。でも私にはそれを確信に変えるほどの情報がもう一つあるのよ!」
「そ、それは……?」
「私霊感あるの!!!!!」
「……えーと?」
「だから私霊感あるの!!!!」
「いや聞こえてますよ。それを踏まえた上で聞いてるんです。」
「何を?」
「察してくださいよ……。なんの役に立つんですか?ってことですよ。」
「悪霊が見えるのよ。」
「は?」
「君の後ろにずーっと悪霊がいるのよ。」
「え?」
「久志君に声をかけた時からずーっと見えているのよ。」
「またまた〜冗談きついですよ先輩。」
ちょっと待てよ……?僕が話をしていた時先輩はずっと見つめていたよな。
あれって僕のことじゃなくて僕の後ろの……?
「あ、あのそろそろ帰ります。」
「危ないから送っていくわよ。」
「危ないってどういうことですか?!」
「さっきの本に書いていた通りよ。久志君に取り憑いてる悪霊はかなり強い個体だと思うわ。」
「な、なら尚更僕一人で帰らないと、、。先輩を危険な目に合わせる訳には行きませんから。」
「男の子なのね、でも心配入らないわ。不幸が身についている訳ではないの。悪霊に不幸な道へと導かれているのよ。」
「全然ピンと来ないんですけど?」
「そうね……一つ例を挙げてみるわ。今真っ直ぐな人生という道を歩いているのが久志君なのよ。」
「は、はぁ。」
「その先の分かれ道で右に進めば幸せな人生へと一歩近づくわ。でも悪霊は久志君の手を左へと引っ張るのよ。」
「左は不幸な人生へと一歩近づくって所ですか。」
「その通り。私は悪霊が見えるから悪霊が引っ張る方向と逆の方向へ久志君を引っ張ってあげる。するとどうなるかわかる?」
「……幸せな人生へと近づく!」
「Excellent!悪霊も使い方次第では守護霊になってくれるわ。」
「是非一緒に帰りましょう!」
「喜んで。」
正直先輩の話を全て信じた訳では無い。信じたフリをして一緒に帰り、少し不幸な目に一緒に合えば諦めてくれるかなと思った。
これが僕と胡散臭いオカルト研究部長、後に彼女となる凛花先輩との出会いの話。