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第六話 サラマンダー【ツェリ】

 私と暮らすことになって、かなり家計が苦しいということがわかりました。確かに今まで一人分だった食費は二倍になり、私の身の回りの生活用品も買い揃えてもらっています。


「そろそろ、役に立たなくては普通に追い出されてしまいますね」


 少しばかり、村の奥様方の調略に時間を掛けすぎてしまったようです。


 今日はアルトリオが鍛冶の手伝いで終日家を留守にする日なので、ここは不死鳥らしく一狩りしてこようと思います。


 ただ、あまりに不死鳥っぽい狩りをしてしまったら、私が魔物であることがわかり追い出されてしまいます。


「ということで、罠道具はアルトリオのを持っていきましょう。アルトリオの罠で掛かったことにしておけば手柄もアルトリオになるのですから」


 道具は土間の端にある木箱の一番下に隠してるのは把握済みです。私は三つほど罠道具を拝借して山へと入りました。


アルトリオが狩場として任されているのは南側の山で、実はその先にある頂上が不死鳥の生まれる火山だったりします。


 と言っても、そこへ辿り着くにはかなりの標高があり険しい山を登っていかなければならないので、普通の村人の足で到底辿り着けるような場所ではございません。


 さて、適度に村から離れた場所でアルトリオが行かなそうな場所に罠を置いておこうと思います。置いておくというのはそのままの意味で、特に仕掛けをするわけではありません。その場所にぽいっと置いておくという意味です。


 えっ、それでは魔物が罠に掛からないって? はい。罠は使いません。結果として罠に掛かったことにはしますが、魔物を捕まえるのは私のお友達にお願いしようと思っています。


「では、サラマンダーちゃん、お仕事を頼みますよ」


 私の呼びかけに応じるようにして目の前に炎の精霊が現れます。サラマンダーちゃんは言葉は喋れませんが、私のお願いをちゃんと理解して行動してくれます。


私の持つあたたかい魔力が大好物なので渡した魔力に応じて仕事をしてくれるパートナーのようなものです。


 姿は炎に包まれたトカゲ的生物ですが、その精霊力はこの山にいる魔物など敵ではありません。


「あなたの役割はこの南の山にいる大きな魔物を狩ってくること。そして、この罠に魔物が掛かったようにしておいてください。明日の昼頃には回収に来ますのでよろしくお願いします」


 サラマンダーちゃんは、舌をびろろんと出し入れして、目をぱちくりしながら私に質問をしてきます。


「そうですね、ロックスコーピオンはやりすぎかもしれません。今回は様子をみるので、とりあえずワイルドボアにしておきましょうか」


 うんうんと頷いたサラマンダーちゃんはその足でゆっくりと山を登っていきます。こんなにゆっくりとした足どりで大丈夫なのでしょうかと思わなくもありません。


しかしながら、精霊の真骨頂は精霊魔法にあります。ワイルドボア程度なら炎の魔法で瞬殺してしまうでしょう。


 さて、私はあともう二箇所でサラマンダーちゃんにお願いをしておかねばなりません。そういう訳なので、やはり普段アルトリオが行かないような急斜面の場所だったり、岩陰にある洞窟の中に罠を放り投げてはサラマンダーちゃんにお願いをしました。


「私が山から降りてしまって悲しいの? 大丈夫です、近くにいるから平気ですよ。それに離れていてもこうやってたまに会いに来ますからそれで勘弁してくださいね。えっ、ブラッドマンティスは大きすぎるからやめておいた方がいいですね。さすがに村人が驚いてしまいます」


 これで、明日には魔物をプレゼントすることができます。アルトリオも家計が苦しくて私を家から追い出すようなことは考えないで済むでしょう。


 いえ、そもそもアルトリオはそんなことをする人ではないのですけどね。とても優しくて、出会った頃と変わらずに心優しい青年に成長しておりました。


 その温かさに触れたくて寝る時はいつもアルトリオの背中にくっつきながら一緒のお布団に入ります。元々、布団は別々に用意されていたのですが、寝相が悪いというスタンスを貫いて毎晩もぐり込んでいます。


 そうして何度も、もぐり込んでいたらさすがに怒られてしまったのですが、夜は怖いからと泣き真似をしたら「わ、わるかった」と言ってあっさり許してくれました。


それからは手を繋いでくれたり、頭を撫でてくれたり、背中をぽんぽんと優しくたたいてくれたりします。これはもう役得ですね。恩返しをするはずが、返す恩がまた増えてしまいます。美少女の泣き真似はめちゃくちゃ効果的なようです。


 おそらくですが、記憶のない少女が暗闇を怖がっていると不憫に思ってくれたのかもしれません。アルトリオの中では、私は盗賊から何とか逃げ出してきた少女で、その恐怖体験から記憶を失くしてしまったと思われています。


 それにしても、アルトリオと一緒に寝ることが癖になってしまいました。もうアルトリオ無しでは寝れない体にされてしまったかもしれません。最近は夜になり一緒のお布団に入ることがとても楽しみなのです。

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よろしくお願いします。

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