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第二十三話 サクラステラへ【ツェリ】

山に不死鳥が住んでいるのを知っているとは驚きました。いや、人の目に触れることは今までもありません。私が人と会ったのもアルトリオと出会ったあの時だけ。


きっと、火山活動の激しい時に生まれた宗教なのでしょう。霊峰ポイニクスは長い周期で火山活動をしています。今は大人しくしているので、二百年ぐらいはこのままでしょうけども。


「ツェリ、何か考えごと?」


「はい。昨日お前さまに頂きましたイヤリングがとても嬉しくて寝不足気味なのです」


「そ、そうか。気に入ってくれてよかった」


そう言って耳に付けているイヤリングをみせると、アルトリオは照れくさそうに顔を赤くしています。私がイヤリングを気に入ったのをちゃんと見ていてくれたというのは嬉しいことです。


ということで、昨日が私の誕生日ということになったようです。人間の世界では生まれた日を祝福するそうなのです。そういうわけなので、とりあえず十五歳ということになりました。


つまり、来年には結婚が可能な歳になるらしいです。ようやくアルトリオと番になるチャンスが訪れたようですね。この一年でさらに距離を縮めたいと思います。


「相変わらず見せつけてくれるじゃないか」


おっと、あまり騎士様方を刺激してしまうと昼の鍛錬でアルトリオが大変です。少し話題を変えましょうか。


「ジュード様、お昼の食事は何かご希望はありますか?」


「ツェリ殿、そういうことでしたらまた鍋料理がうれしい。お肉もたっぷり入れてくれると助かる」


食事の話になると、ジュード様の表情は柔らかくなります。すっかり私の料理の虜になってしまいましたね。


馬車を操縦しているヒューゴさんも聞き耳を立てていたようで、うんうんと頷いていらっしゃいます。やはり、体が資本な騎士様ともなると圧倒的肉派なのかもしれないですね。


「お前さまもそれでよろしかったですか?」


「うん、それで構わないよ」


「それではウサギ肉を使った鍋にいたしましょう。臭みを消す野草はお願いしてもいいですか?」


「もちろんだよ」


サクラステラに向かう道のりは、それなりに整備されているものの、村からオースレーベンに来たように周辺を他の騎士様方が魔物を狩り安全を保証するということはオースレーベン周辺のみでサクラステラに近づくほどしておりません。


大きな街道になるので定期的に冒険者に周辺の魔物を討伐させているというのもあるらしいですけど、何よりもサクラステラ側に余計な反応を与えないためとのことらしいです。


あまり大勢の騎士でサクラステラの近くに行くというのはよく思われないことらしい。ということで、夜番はしっかり行わなければならないので、騎士様方の負担はそれなりにありそうです。


今も、ジュード様は欠伸をして少し眠そうにしております。アルトリオが夜番を手伝うと申し出たのですけど「これは、私たちに与えられている仕事だから」とのことで、頑なに断られます。


おそらくですが、アルトリオが夜番に組みこまれると私がその間に眠れなくなるのではと心配されているようなのです。


アルトリオと一緒に寝られないのは嫌なので騎士様方には頑張ってもらっております。それも、あと少し。今日の夕方にはサクラステラに到着出来そうとのことなので、もうひと踏ん張りしてもらいましょう。


そうして、日が沈む少し前に何とか到着したのですけど何やら様子が変です。


「あれがサクラステラの街なのですか?」


「ちょっと物々しい雰囲気がするのは気のせいかな」


アルトリオが不安になるのも致し方ありません。私たちを歓迎しているというよりは、人質を早く寄越せといった荒々しい感じがします。


「ヒューゴ、アルトリオ。私が先に話に行ってくる。二人はツェリ殿をお守りするように。ヒューゴ、私に何かあったら」


「わかっております。二人を連れて安全な場所まで死ぬ気で守り通します」


えーっと……。一体何なのでしょうか。


サクラステラでは顔を見せてすぐにトンボ帰りする予定なのですけど。何なのでしょう。


身振り手振りでジュードさんが説明している後ろ姿を見ているのですが、どうも話が上手く進んでいる感じがありません。


いくら強い騎士様が二人いると言っても、多勢に無勢ではどうしようもありません。私が不死鳥になって暴れれば問題はありませんが、それはそれで別の問題が発生してしまいます。


私の恩返しはまだ始まったばかりなので、まだ正体を明かすわけにはまいりません。それにアルトリオの加護もこの状況を打破するにはまだ力不足です。


「どうしたものでしょうね」


「心配しなくていいよ。何があってもツェリのことは僕が守ってみせる」


うーん、これはあまり良くありません。アルトリオは自らを犠牲にしてでも私を守ろうとしているようです。これでは返す恩がまた増えてしまうではないですか。


そして、話し合いが平行線に終わった様子のジュードさんが馬車へと歩いてくる姿が見えました。サクラステラの要望とやらは一体何なのでしょうか。


サクラステラでアルトリオとゆっくり観光してから翌朝というか昼ぐらいに帰るというプランが台無しです。

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よろしくお願いします。

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