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第十五話 加護の力【アルトリオ】

 オースレーベンまでの道のりは滅多に魔物が出ることもなく、何ならとても平和で退屈な旅のようで、騎士様二人から道中に稽古をつけてあげようという話になった。


 僕としても、狩人として長く生きていきたいと思っているので、格上の騎士様に教えていただけるのはとてもありがたいことなので断るという選択肢はなかった。


「まずはアルトリオの実力を見たいと思う。僕に向かってかかってきてくれ」


 大きなロングソードを持つジュードさんが僕の育成方針を見極めるべく、またどのぐらい動けるのかを判断するために一対一の模擬戦をすることとなった。


「お互い武器を使っての模擬戦だからジュードはアルトリオに怪我をさせないように注意してください。アルトリオは一本取るつもりでいってください。ポーションがありますので思い切りいって大丈夫です」


「は、はい」


 まあ、僕とジュードさんの実力差は相当離れているはずだから攻撃が当たることもないということなのだろう。とはいえ、盾すら持っていない騎士様に、せめて驚かせるぐらいの実力は見せたいところ。


「お前さま、しっかり」


 そして、ツェリも見ているというこの状況が少なからず気持ちを高ぶらせている。


 ツェリにとっては僕が戦う姿というのは初めて見るのだろうし、そうなるとあまり情けない姿は見せたくはないと思うのが男ってものだろう。


 僕としても長く村の狩人として生きてきて、魔物を何頭も狩ってきた自負というものがある。簡単にはやられたくない。やれるだけやってみようじゃないか。


「では、いきます!」


 僕の手には使い慣れたショートスピア。そして、旅に出る前にドノバンさんから頂いた片手用のシールド。基本的に動きやすさを重視した装いと言える。


狩人にとっては罠が基本であるし、運悪く魔物と遭遇した場合においてもすぐに逃げられるように身軽な装備であることが多い。


 そして、攻撃は一撃離脱が基本。相手の力を削ぎ、仕留める時は一撃で急所を刺す。


 このスタイルが対人戦の模擬戦で通用するかというとちょっとよくわからない。でも、僕には亡くなった父から教わったこの戦い方しか知らない。


 鎧を装着しているジュードさんより、僕の方がスピードでは勝るはず。それならば、正面から戦う必要はない。いつも通り、後ろや横からの攻撃を繰り返しながら隙を窺いつつ一撃を狙う。


「なるほど、それが狩人の戦い方ということだね」


 騎士同士の訓練ならばきっと正面からやり合うのが普通なのだろう。でも、これが狩人の普通の戦い方なのだ。


 後ろに回り込んだ僕の刺突はあっさりと剣で弾かれ、その勢いのまま大きく吹き飛ばされる。僕の軽い攻撃とは異なり、剣の重みがまるで違う。


「ほう……。なかなかやるじゃないかアルトリオ」


 それでも、僕はこの攻撃を続けるしかない。フェイントを加えながらジュードさんの脇を目掛けて飛び込む。


僕の狙いは片手用シールドでジュードさんの攻撃をいなしてからの刺突。


「なるほど、悪くない攻撃だがやはり軽いかな」


 僕の飛び込みに合わせて振り出された剣を盾でいなそうとするものの、そのまま押しつぶされてしまった。もちろん、僕の攻撃は失敗で、剣の勢いのまま背中から地面に落とされてしまう。


「どわっ」


「そこまで!」


 倒れた僕の目の前にはジュードさんのロングソードがあって、それはもうあっさりとツェリにいい所をみせることなく圧倒的なまでな完敗だった。


「アルトリオ、大丈夫かい?」


「は、はい。思っていた以上に何もさせてもらえませんでした」


「戦ってみて思ったことは何かあるかな?」


「はい、スピードは僕の方があると思ったのですが、攻撃の重さが全然違くて……」


「うん、そうだね。今の戦いで僕は大地の加護を使って攻撃をしたんだ」


「大地の加護ですか」


「そうそう、僕には生まれつき大地の加護があって攻撃に厚みをもたらせてくれる。あとは防御がこの加護の真骨頂なんだけど、それはアルトリオが成長して僕に使わせるようになったらみせてあげるよ」


 ジュードさんの攻撃力の重みという理由が加護によるものなのだという。そういえば、攻撃の時に少し体が光ったような気がする。これが加護持ちの強さなのか。


「ちなみに僕の加護は風の加護だよ。スピードの強化と遠距離攻撃が可能なんだ」


 ヒューゴさんは風の加護……。騎士になるぐらいの人というのはやはりそれだけ凄い人達なのだ。少しの間とは言え、稽古をつけてもらえる僕は運がいい。


「お前さま、怪我はございませんか?」


「うん、ジュードさんが手加減してくれていたから大丈夫だよ。それにしても全然いいところを見せられなかったな」


「ほう、いいところを見せるつもりだったのかい?」


「あっ、いえ。僕も小さい頃と比べたら体の動きが素早くなっていたので、もう少しやれるかと思っていたのですけどジュードさんが強すぎて全然でした」


「まあ、今回の模擬戦はアルトリオに加護の力を身をもって知ってもらいたかったというのがある。そして、剣をかわして感じたことがある。君にも加護はあるみたいだよアルトリオ。これでも最初の一撃で倒そうとしたんだけど、守るように逃げられてしまった」


「そうだね、あの時アルトリオの体もジュードのように光っていたんだよ。少しだけだったけどね」


 それは衝撃の事実だった。ジュードさんもヒューゴさんも僕の身体が光ったと言う。


 僕にも加護があるのか……。

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