呪われたのお前かよ!!
退屈だ。
とてもとても退屈だ。
だから、大分前に呪いの本を作って人間の世界に投げ入れた。
すると人間たちは最初のうちは呪いまくっていて、俺はとても楽しかった。
小さな出来事から大きな出来事まで人間たちはよく理解できていない俺の、悪魔のチカラまあ、呪いに頼って解決もしくはうさを晴らそうとしていた。
いやそれくらい自分でなんとかなるだろ。
っていうものも俺のチカラに頼ろうとしてくるから楽しくてしょうがない。
そんな風にバンバン俺の力を使っていたのにだんだんと本が使われることが減っていった。
人間の感情は変わっていないのにおかしなモンだとおもって詳しそうな知り合い(悪魔)にきいてみた。
「時代が変わっていったんだよ。」
「時代?呪いは流行りじゃなくなったってことか?」
「あー、そうじゃなくて今は本と使われなくなってきているんだ。」
この時、俺はこの詳しそうな知り合いのラックにインターネットというものを教えてもらった。
すげえ。
その一言に尽きた。
このインターネットという無限の広がりはここ最近にできた俺のキズを癒してくれるかのように俺を夢中にさせた。
多種多様の人間の交流。
様々な情報の錯綜。
かなり誇張されている噂話。
匿名という仮面を被り本性を表すものたち…
「すげえ。」
そう、俺の語彙力は死んでしまったのだ。
以前と違い、あっという間に悪意が編み上がっていく様に俺はひどく胸を打たれた。
そうして、俺はどんどんインターネットにのめり込んでいき、昔作った呪いの本のことなど忘れ去っていた。
そんな時に、呪いの本が使用されたのを感じた。
この時、俺が感じたのはどうしてこのインターネットが栄えている時代にわざわざ本なんていうものを使おうと思ったのか。ということと、自分自身の変化だった。
どうして、この時代に本なんていうものを使おうと思ったのか。
そう、おもったときに自分の考え方がかわったと唐突に思ってしまった。
以前のじぶんだったら、動機・背景・本を手に入れた過程とくまなくその人物を調べ上げ、『こいつもこんな呪いの本に頼るしかなかったんだな』と笑ったものだった。
が、俺にはもう他に興味が出るものができてしまった俺は何となく昔の仲の良かった友人に会いに行くような軽いノリでその呪った奴を見に行った。
が、その呪った奴も今までの奴と大して変わりはなかった。
感情に任せて、感情の赴くままに本に記されているように相手を呪ったのだ。
ああ、よくあるパターン。
と思ったが今回少しばかり面白そうだなと思ったのが呪った奴が使ったのが苦しませる呪いだった。
呪った奴は爬虫類がキライだったんだろう。そのキライ感が爆発したようで、
呪われた方は、ワニになっていた。
いや、なかなかいないな。ワニ。
面白かったので俺は呪われた方に顔を出す事にした。
きっと、元に戻してくれと泣き叫ぶに違いない。
その様を面白おかしくかいてSNSに投稿してやろう。
呪い関連のことをうまく伏せて書ければバズるかもしれない!
そうワクワクして向かった。
まずは、相手をビビらせるためににもかっこよく登場を決めなければ。
「ははは。愚かな人間が!のろわれへぶっ。」
声高らかに登場し呪われた奴をビビらせてやろうと思った俺の顔面ど真ん中に衝撃を感じ、俺は勢いのまま壁に打ちつけられた。
なにが起こった…!
どうしよう、はなじがでてるかも!!
顔面から感じるあまりの痛みに俺はかなり思考能力が落ちているようだった。
ワニはその足としっぽでよくそんな器用に立てるな。という感想を抱いてしまうくらい器用に二本足で立っていた。
短い手は腕組みをしているようで、真正面を見れないはずのワニの目は確実に俺を見下ろしていた。
「おい、テメーが犯人か?」
「は?」
そのワニが発する声に俺は心あたりがあった。
忘れもしないこの近年で俺に絶大な心の傷を負わせたやつである。
あの時の屈辱がよみ
「テメーかって聞いてんだ!」
「へぶっ!!!」
ワニの尾は十分な凶器になる。
それを痛感した一撃だった。
左頬にクリーンヒットした。
めちゃ痛い。きっと歯とか折れた!(折れてません)
「どうなんだ?あ?」
どすどす。ワニ短い足がどうやってそんな力があるのか不思議な威力で俺を蹴ってくる。
「おれじゃないです!」
ワニの暴力に屈し、割と素直に答えてしまった俺…。
「じゃあなんでお前ここに来たんだよ。」
あ、至極真っ当な疑問…
そして、ワニの目はしっかりと俺を見ており正直に答えないと俺は更なる制裁が加えられることが容易に想像ができた。
「えっと、呪われた奴がワニになってて、おもしろそうだから見に行こうかなー、と。」
うん、嘘じゃない。
「へー、じゃ、誰がやったんだ。」
ん?
「心あたりがないのか?」
「ない。そして、ワニになるような呪いかける奴にも心あたりがない。」
そう、このワニにされた娘は幼少の頃からやたら霊能力等が高く、大抵の悪魔・妖怪・亡霊なんかはグーパンで何とかできるのである。
俺も以前にボコボコにされた。
ほんの出来心で作ったアクセサリーのせいで。
ちょっとしたお遊びのつもりだったんだもん。
と、まあこの話は置いておいて知識もあり、呪い返しなんかもできたはずだ。
なぜしないのか。
すると、心を読んでいたかのようなタイミングで奴は言った。
「お前がちょうどいい間で来たからだよ。」
あ、とくに理由はない感じですね。