家族(現代童話)
暗いので読まない方が良いかもしれません。
部屋にぽつんと一人でお父さんが座っている。
手元には家族との写真があった。
子供達と家族一緒に行ったキャンプ。
子供達と家族皆での旅行。
子供達と家族でのくだらない会話。
写真はあるのに、全部無くなった。
突然、事業が行き詰って廃業した。
子供達の進学や夢が駄目になった。
仕事を探したが急な不景気と年齢で仕事が見つからない。
最初は優しかった家族もどんどん冷たくなっていった。
仕方なしにアルバイトを始めた。
家族のお父さんへの呼び方がお父さんからあの人になった。
「何でこんな事になったんだろう」
お父さんが寂しそうに呟いた。
それでも必死に頑張った。
事業の借金の絡みで住んでいる家の権利は無くなりそのまま賃貸になった。
家族から顔も見たくないと言われて二階の奥の部屋に引きこもった。
家族の目をしのいでアルバイトに行くようになった。
お金は就職活動用のお金以外は全部渡す。
それでも、家族の輪には戻れなかった。
はした金だったからだろうか。
家族がお父さんに会わないで済むように食事は部屋の扉の前にそっと置いていくようになった。
もう、ずっと家族と話をしていない。
仕事は履歴書を出しても返ってくる。
仕事は見つからない。
「全然見つからないよな」
お父さんは嘆いた。
そして、寂しさのあまり、何で俺を無視するのか家族と喧嘩になった。
これが決定的になった。
あの人からあのゴミになった。
ご飯もまともに扉の所に置かれなくなった。
コンビニの弁当ではお金がかかる。
倉庫を一人で探している時に、バーベキュー台の横にキャンプで一回だけ使った日輪があった。
練炭も残ってたので、それを二階に内緒で持って行く。
今日はクリスマス。
家族の笑い声が下から聞こえる。
一人で写真を見て家族仲が良かった時を思い出した。
二階の奥の部屋から匂いが外に漏れないように厳重に隙間に詰め物をした。
下の人達に怒られないようにひっそりと昔を懐かしんで一人で安い見切りの肉を買って来てバーベキューをやった。
「私の家族はどこに行ったのかな」
お父さんがバーベキューをしながら呟いた。
「ATMだったのかな。壊れたからいらなくなったのかな」
もう一度ぼそりとお父さんが呟いた。
次の日、お父さんは締め切った部屋で冷たくなっていた。
家族の昔の仲が良かった写真を握りしめて。
書いてて悲しい( ノД`)シクシク…