五話 邪竜③
——————リン視点
暗い・・・・ここ・は・・・・どこ・・だ・・・・死んだ・・のかオレ・・・・
はっきりしない意識の中で脳に直接
機械的な声が響いてくる。
『スキル『女神の寵愛』を発動できます。発動しますか?<YES/NO>
これを発動すると一時的にこの場所で生存可能となります 』
女神にもらったスキルか・・・・結局どういう効果があるのか分からず使ってなかったんだっけ・・・・
俺は、心の中でYESと返答した。
『スキルの発動許可を確認しました。これより実行いたします」
そこで、再び意識が途切れた。
————しばらくして、目が覚める。
目を開けると、ドロドロとした液体に足を浸していた。
まわりは一面赤黒い壁・・・・みると収縮したり膨張したりしている。
「そうだ。おれあの竜に食われて・・・・ってことは、ここわアイツの中・・・・」
吐き気を催しながらも一刻もはやくここをでなければならない。
そう考えていると腹の虫が鳴った。
「ろくな物食べてなかったな」
食料は全部、あのバカ勇者に食われてしまったからな。アイツは・・・・絶対殺す・・・・・・
肉はある事にはある——しかし・・・・・
「く・・食うしかないか・・そもそも食える・・のか?」
俺は、腰につけていた短剣で肉壁を裂き、口にいれる。
「うっ・グベぇ・・・・・・・オゥェェェェ」
あまりの不味さに戻してしまう。
腐りかけの生肉のようだ・・・・
ネチョネチョとした食感でさらに不快感が増す。
さすがに、これじゃ食べることができないので
俺は、焼いてみることにした。
<炎魔法 食火>
なんとか、焦げ目がつくぐらいに焼いて口にいれる。先程、感じたぬめりとした感触は
気にならないくらいになっていた。
「えっ、焼いたら割といける。気持ち悪いのは変わらないけど」
気付いたら、かなりの量を食し腹を満たすことができた。
飢餓状態じゃないと絶対食おうと思わないだろう。
しばらくして、異変がおこった。
突然、頭痛が起こりあまりの痛みにリンはその場に倒れた。
バシャッと胃液らしき液体が顔にかかり意識が朦朧とする。
「か、からだ・・が・・・・あつい」
身体の内側から焼かれるような感覚に襲われ
臓器が悲鳴をあげている。
『邪竜の内臓を食べたことにより、大量の魔力を獲得しました。
現在の状態では、これに耐えられないため肉体再構築を行います。』
『スキルを獲得しました』
『新たな職業を獲得しました』
『新たな称号を獲得しました」
『レベルアップしました』
『テイムしたモンスターが進化しました』
『再構築を進行中・・37・・・・57・・64・・・・』
ドクン・・ドクン・・・・ドクンドクンドクンドクン
心臓の鼓動が急激にはやまっていき地震が起きたと錯覚するほどに高まりを感じていた。
『再構築が完了しました。再構築の結果「スキル『女神の寵愛』が破損したため削除しました』
その声を聴くと同時に、完全に気を失った。
——————どれだけたったか・・気づくと先ほどと変わらない光景だった。
身体にも目立った異常はない・・・・・・
しかし、謎の声が淡々と事務的に話していた『肉体再構築』という
ワードのことが気になり『ステータス』を開く。
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[名前] 閑谷 凛 [Lv] 356
[称号] 『邪竜を滅する者』『邪竜殺し』『黒炎の支配者』
[職業] 『テイムキング』『魔術師』『剣士』
[種族] 『竜魔族』
[スキル] 『空間収納』『物理耐性Lv.Max』『剣術Lv.Max』『反転』『黒炎』
『鑑定眼』『万能感知』『体術Lv.Max』『邪竜の息吹』
『邪竜の魔眼』『邪竜の咆哮』
[HP] 367843/367843
[MP] 568950/568950
[攻撃] 89765
[防御] 67890
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「ハッ!!??なんだこれ、強くなりすぎだろ——アイツの肉を食べたからか?
これだけパワーアップしてる——今ならここからでれるか!?」
俺は、肉壁を何度も何度も殴打しまくる。一発打つごとに分厚い壁に亀裂がはいり血が爆ぜる。
しばらくやり続けていると穴が開き新鮮な空気が肺にはいってくる。
ただのパンチが凄まじい威力になっており、もはや人の域を超えていた。
「よし!!。なんて力だ・・・・
ここにきて運が回ってきたとは・・人生なにがあるかわからねぇな」
身体を無理やりねじ込み這いずるように脱出する事に成功し
後ろを振り返ると、白目をむき、舌を垂らし絶命している邪竜がいた。
「俺を食べたのが運の尽きだったな」
ここからさらに出口とは反対の扉が開いている。
きっと、フロアボスを倒したからだろう。
おれは、奥へ進んだ。中央の部屋に、ダンジョンコアがあり
左斜めにある薄汚れた石扉を開けると、財宝があった。
「おぉ~~白金貨まである。これは、かなりの収穫だ・・・・・・」
そう、ここは未だ未踏破なのだ。だから、財宝も残っていたわけだ。
単純な力だけでいえば、アダマンタイト級冒険者は一日で踏破できるだろう。
しかし
問題は、モンスターの強さではなく、ここまで到達するのが難しい点にあった。
————リンは、『万能感知』があったため、難なく来ることができた。
腹立たしいが、ラムには『記憶地図』というスキルがあるため
一度通った道なら覚えてしまう————だから、多分奴らは脱出しているハズ・・
むしろ、ここまで俺に悪質な事しといて、勝手に死んだらとんだマヌケだ。
復讐するまで生きていてくれる事を願う。
ソフィアだが、あの子は頭が良いからスキルがなくても問題ない。
きっと脱出してギルドに向かっていることだろう。
はやく帰って抱きしめたい——。まぁ、付き合ってないんだがなフフフ・・・・
「さてさて、邪竜の素材を回収して、ギルドに戻るとするか。
・・・・あいつらの驚く顔が楽しみだなぁ」
リンは、これから起こるであろう出来事を想像して
おかしそうにけたけた笑うのであった。