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第二の人生は好き勝手やらせていただきます  作者: 秀作殿
一章 覚醒編
3/12

三話 邪竜


「オイ!どうなってやがる。なんでここにこんな奴がいるんだよ。ックソが」

「知らないわよ!!!私が聞きたいくらいだわ」


ラムとゾフィがこんな状況にも関わらず揉めている。


今は、そんなことをしている場合じゃないのに何をやっているのか・・・・


しかし、どうする?相手は、災害級の魔物・・・・

アダマンタイト級の冒険者がパーティーを組んでやっと狩れるかどうかのレベルだというのに

リンは必死に頭を巡らせていた——しかし、解決策など思いつくはずもない。


「みんな、俺のテイムしているモンスターで時間を稼ぐ——そのうちに逃げ・・・っぐ・」


突如左足に痛みが走り、視線を下にずらすと短剣が刺さっていた。

この短剣の柄に刻印されている四葉のマークに嫌というほど見覚えがあった

——そう、勇者ゾフィのものだ——奴が背後から投げつけたのだろう。

本来のリンであれば、躱せたかもしれなかったが緊急事態という事もあって

気付くのが遅れてしまった。


「いわれなくても分かってるつーの!さっさとやれよ!オイ!・・お前はもう要らねえ

 ここで死にやがれハッハッハハ!あばよ」

「そうよ!ちゃんと時間稼いでよね!!!!!まだ死にたくないもの」


ゾフィとラムはすでに扉にむかって走って一目散に逃げていた。

だが、ソフィアだけは、足を震わせながらもその場に残っている。



こいつら、なんて奴らだ・・前々から自分勝手な奴らだと思っていたがここまでとは・・・・

仲間意識のかけらもないのか・・・・クソッ

あいつらはともかくソフィアだけは逃がしてやりたい。


リンとしては、彼女を死なせたくないという想いもあるがそれと同時に

ゾフィやラムを野放しにしたくないという想いもあった。

ここで自身が時間稼ぎをすることで、例えリンが死んだとしてもソフィアさえ生き残ってくれれば

ギルドに奴らが働いた悪行を報告してくれる可能性が高まる。


——それに、このパーティの中で、一番レベルの高いリンが

邪竜と戦うべきであるとヤツと出会ってしまった時から覚悟していた。


「ソフィア!!!!何してんだ!はやく逃げろぉぉぉぉぉぉぉ」


「だって、リンはどうするのよ!絶対しんじゃうよ——あんなのと戦ったら・・」


邪竜は、唸り声をあげており今にでもこちらに突っ込んできそうだった。


俺は、額に汗を浮かべながら無理に笑顔をつくる。


ここで不安な表情をだしてしまうと優しいソフィアはリンをおいて行ってくれないだろう。

しかし、それだと二人仲良くあの世だ・・無駄死にもいいところだ・・・・


「大丈夫だ!あとで追いつく。まじで、やばくなったら逃げるから・・・・頼む、時間がない!!!

 約束する絶対帰ってくる!信じろ」


「ぜ・・ぜったいだよ?約束したからね・・・・りん」


ソフィアは目に涙を滲ませ、下唇を噛みしめると出口に向かって走っていった。


「ったく、生きて帰ったらあのクソ勇者とクソエルフどうしてやろうか・・・・」


先ほど、受けた傷は、かなり痛むが

そこまで深くはない・・・・なんとか動けそうだ。


「一応みとくか・・・・」


リンは『鑑定眼』を発動させる。

それと同時に瞳の中に黄色い小さな魔法陣が展開される。


『鑑定眼』相手のステータスを確認する事が可能。

     ただし、自身よりもレベルが離れすぎている場合は数値化することができない。

    


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[名前] 邪竜 アリヴァス [Lv] ???????

[称号] ???????

[職業] ???????

[種族] 『竜種』

[スキル] ???????

[HP] ???????

[MP] ???????

[攻撃] ???????

[防御] ???????


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


相手との力量の差は理解していたが

実際に目の当たりにすると無力感を感じざるを得なかった。


「分かってはいたけど・・・・次元が違いすぎて嫌になるなハハッ

 まじで、運悪すぎだろオレ・・・・・・」


顔を引きつらせながらも

リンは、テイムしていたモンスターを顕現させる。


召喚(サモン)


そこに、『白狼(ライガ)のハク』 『牛頭人(ミノタウロス)のリルド』 『毒巻蛇(デューラ)のスー』が

リンの前に姿を現す。


「グルゥゥゥゥゥゥ」

「グモォォォォォォ」

「シャルルルルルル」


ごめんな。お前らも‥恐いよな・・俺もさっきから震えが止まらないんだ・・・でも


「少しでも時間を稼ぐぞ。オイ!トカゲ野郎オレが相手だ」


邪竜がスっと目を細めこちらに向かって手を振りかざす。

巨大な掌が大地を砕きその衝撃で俺らは、吹き飛ばされそうになるもなんとか堪える。


「ふぅぅ・・さすがは竜種。当たってもないのにこの威力かよ」



「グォォォォォォォォォォォォォ」


地鳴りのような甲高い声がダンジョン全体を震わせパラパラと石クズが落ちてくる。



——高位な竜ほど、高い知性をもち人と会話することもできるはずなのだが

この邪竜は、闇そのもの・・堕ちた存在・・まともな会話はできない——狂人と同じだ。


「ハクは左へ、スーは右へ!そして、リルドお前はおれと一緒にこい」


一斉に四方に散って動き回ることで、邪竜の注意を分散させるのが狙いだ。

今の俺じゃ、絶対に勝つことは不可能・・だから少しでも時間を稼ぎたい。


ハクに注意がいったようで、何度も白めがけて攻撃しているが

うまくそれを避けている——だが、捕まるのは時間の問題だった・・・・


<雷魔法 『撃光矢』(ボルジヤ)



かなりの速度で放たれた雷の矢がヤツの胴に直撃するも、まったく効いている様子はない。

構わずうちつづける。そもそも——アダマンタイト級冒険者でやっと倒せる魔物に

俺の魔法が効くはずがない。


<雷魔法 『撃光矢』(ボルジヤ)

<雷魔法 『撃光矢』(ボルジヤ)

<雷魔法 『撃光矢』(ボルジヤ)

<雷魔法 『撃光矢』(ボルジヤ)



「くそっ、上位魔法じゃなきゃ話にならないか・・・・魔力もそんなねぇのにっ・・」


邪竜は、飽きたと言わんばかりにのそのそと最初のいた場所まで戻ったかと思うと

口の端から黒い炎があふれ出し、一気に下にむかって放出した。

すさまじい黒の爆炎は渦を巻き襲い掛かる。

リルドがリンを庇うように前に立ち持っていた巨大な盾で咄嗟に防ぐが

あまりの威力に盾が破壊される。

——リン達は、その爆風に耐えられず無様に吹き飛ばされそのまま壁に叩きつけられた。


「ッガッハッッッ」


召喚獣は壁に激突する寸前で、なんとか戻すことができた。一度モンスターが死んでしまうと

蘇生魔法で生き返らせない限り再び召喚するのは不可能だ。それこそ『ネクロマンサー』のスキルが

あればいいのだがあのスキルを持つ者は滅多にいない。アダマンタイト級冒険者の中に一人いるらしいが

名前だけで顔も知らない。


あいつらまで死なれるのは勘弁だ・・・・


リンは壁にぶつかった衝撃で身体の至る箇所が折れ、もはや動ける状態ではない——足も変な方向に曲がっており壊れかけの人形のような状態になっている。


とっさに防御魔法を展開したおかげか——即死は免れたのは幸いだった。

だが、ただれている皮膚がかなり痛々しい・・・・遅かれ早かれ死ぬのは確実のようだ。


「はぁ・・・はあ・・・・ここ・・まで・・か」


俺にしては、よくやったよね母さん父さん・・・・逃げなかったよ・・おれ・・・・


薄れゆく意識の中、奴は倒れている俺の前に顔を突き出す。————伸びてきた舌に絡み取られ


『ゴクリ』


ソイツは満足そうに——俺を飲み込んだ。

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