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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある王国にて起こった処刑騒動にてその身を犠牲にしたとある騎士の話

作者: トモナ

おかしいな、流行り物を書きたかったのになんでこんなのに

とこれってハイファンタジーもので良いのだろうか

 吾輩は王家直属の死刑執行人の家系に勤める由緒正しい騎士である。

 戦争の際には優秀な騎士として活躍する御当主様は敵国からはまさに死をもたらす者として、自国からは勝利と生還をもたらすお方として評判も高く、仕えている吾輩達も鼻高々である。

 その功績に報いる為にとこの度は侯爵家である当家のお嬢様が第一王子の婚約者として正式に決まり吾輩も嬉しさでいつもより道具の点検に力が入っている程だ。


 お嬢様は幼少の頃より聡明で可憐なお人で、皆が大変可愛がっているほどだ。


 お家を継がれる兄君の若様も親友である王子の嫁ならば安心と言われているが、やはりいつか嫁がれる事が悲しいのか愚痴をこぼされる。

 素直に悲しいと言ったり面倒を見たいと言えばよろしいのにそれが出来ない不器用なところは御当主様に本当によく似ておられる。

 御当主様と奥様の関係を見てきた吾輩としても出来る事ならこんな老骨ではなく、ご自分の婚約者に言うべきなのだがそれが出来ないのはまだお若いという事なのだろう。


 王妃としての勉強は大変なようで、時折お嬢様は時折吾輩に辛いことなどを語ってくださる。


 吾輩はそうした事が判らないので黙って聞くことしか出来ないが、それでも良いのか弱音をひとしきり吐き出すと感謝の言葉をくださる。

 御当主様達ももう少しフォローというものをするべきだが、それとも王妃という役職故に助けるべきではないとお考えなのだろうか?

 あぁ無知な吾輩が憎い、この身は物心ついた頃よりこの剛剣を振るって罪人を切り捨てる事しかしてこなかった故にそういった知識はないのだ。

 しかしお嬢様は時折弱音こそ吐かれるが決して逃げ出す事はなかったのは、やはり芯がお強いからだろう事は無知な吾輩でも判る。


 しかしそんなお嬢様が下位貴族を陰湿に苛めているという噂話が流れている。


 何を馬鹿な事を、お嬢様ほどのお方なれば苛めなどせずに実力で排除される事くらい誰でも判る事だ。


 それに苛められている下位貴族はどうも王子を始めとした高位貴族に媚を売っているそうだ。

 そんな事をすれば注意されるのは当然だと言うのに、どうもそれも理解しない愚か者らしく馬鹿な発言を繰り返しているという。

 珍しく若様が愚痴を言われたと思ったがどうもその小娘は若様にも媚びを売っているらしくあまりにも言って聞かない有様に流石に疲れるご様子だ。

 特に媚びを売られるおかげで婚約者から冷たい眼で見られるようになっているらしく、このままでは不仲が酷くなってしまうのではないかと不安なご様子であった。

 さっさと排除してしまえばよいのに優れた魔力の持ち主で成績も比較的良いので教師陣営は倫理観を直せば良いと楽観視しているとも愚痴られている。

 ひとしきり言いたい事を言われたら若様は御当主様への報告の為に出て行かれたが、手遅れにならねば良いがさてどうするべきか。


 あれより更に噂話は酷くなっていた。


 王子だけでなく若様や他の貴族までもが小娘に骨抜きにされているという。


 更には各々の婚約者に酷く当たり散らしたり、まるで犯人であるかのように決めつけて横暴な態度で周囲からの反感を買っているという。

 将来の事を考えて実力で解決させようと陛下達はお考えになって非干渉をしたことが手遅れの事態になってしまった。

 御当主様も流石におかしいと方々に手を回しているそうだが遅れている分を取り戻すのは容易ではないらしくしばらく家を空けられるとのこと。

 このお家は若様しか男児がおられないのでこのまま行けば最悪待っているのはお家断絶の危険となれば流石になりふりはかまってられないようだ。

 吾輩の部屋からは青い空しか見えないのだが、こうして見る大空に広がる暗雲の姿からこの国に、お家に訪れる危機に備えねばならないと心に誓う。



 そして王子が、いや愚か者がついにやらかした。



 方々への仕事で陛下を始めとした御父上世代が王都を空けたタイミングを見計らってあろうことかお嬢様を見せしめに処刑すると言うのだ。

 王子を始めとした高位貴族に加えて学園に通っていたであろう学生達のことごとくがこれに賛同して処刑を行うと言う暴挙ならば最悪鎮圧すれば良い。

 だがあろうことか学園の責任者や教師達までもがあの小娘を讃えるだけでなく率先して処刑の段取りをつけるという始末。

 屈辱なのはその処刑の執行人として吾輩を指名してきたことだが、同時にこれはまだチャンスとして利用できる部分がある。

 お嬢様をお救いするチャンスを手にするべく吾輩は愛剣である巨大剣を担いで王都広場の特設処刑場へと足を運ぶ。


 そして処刑場から見る例の小娘の身体からは醜い魔力が立ち上っていた。


 どうやら巧妙に隠しているらしく、見えているのは吾輩や一部の友くらいらしい。


 あの魔力は魅了に加えて先代国王陛下が滅ぼしたかの国の型に似ている。


 あの国の王族は吾輩が根こそぎ首を切り落としたつもりだったが、まだ残っていたとは一生の不覚だ。


 くだらない罪状を読み上げる馬鹿共と内容の無茶苦茶さにざわめきを隠せない民衆。

 そんな現状でも処刑場にて堂々と佇んでおられるお嬢様のなんと御いたわしい事か。

 長ったらしい罪状をようやっと読み上げると小娘が聞く堪えない事を言っているがお嬢様はただ一言の否定を持って答えられる。

 その姿から民衆もお嬢様の素晴らしさが判っているらしく、小娘に疑問の眼差しを向けているがそれを恫喝で黙らせる小娘のなんとも無様滑稽なことか。

 己が不利を悟ったのか小娘は若様にお嬢様の首を切り落とすように指示を出し、若様が虚ろな眼で吾輩に指示に逆らえない吾輩はこれに従う。



【神の名において此れを鋳造す、汝らに罪なし】



 吾輩の剛剣に刻まれた執行人への祈りの言葉に祈りを捧げる。

 執行人の剛剣は分厚く、重く、巨大であるがそれは神の意思を体現して躊躇いなく苦しめることなく罪人を一撃で切り殺す為のまさに重圧の化身に他ならない。


 だが吾輩はお嬢様の無実を知っている、だからその重さを全てを持って止める。


 お嬢様の首の直前で全ての力を使って剛剣を支えて止める。


 切り落としたのはお嬢様の首筋に繋がっていた小娘が使っているであろう魔法の呪いを指し示す糸だ。

 魅了の魔法の要である糸を切り落とした事で若様達を始めとした者達が解放され、呪われていた反動からか嘔吐する者などが現れているが気にする余裕はない。

 気を取り戻した若様がお嬢様を助け出すがここから離れるよりも早く小娘の無数の魔法の攻撃が迫っていた。

 吾輩はこの身を崩してお二人をお守りするが油断したな小娘め、旧い魔法の力を持っているのは貴様だけではないぞ。

 全身に魔法が叩きつけられる、元々老骨であったこの身は容易く砕かれてしまうがそれでもまだ抵抗する為の力は残っている。


 吾輩の旧き友よ。


 お仕えしてきた王城よ、散って逝った友の下へと一足先に逝く。


 戦場を見続けてきた継承の武具よ、もう自慢話は聞いてやれん。


 法を示した経典よ、どうか次の者をよろしく頼む。


 魔法を極めし杖よ、呪われていた若様達を救ってくれ。



 そしてこの国を守る力を吾輩に貸してくれ!



 残された力を使って剛剣を小娘のいる場所まで投げ飛ばすが吾輩の剣の狙いはこの騒動の混乱に乗じて王子を殺そうとした小娘だ。

 いや最初から狙いはこうした大きな騒動で王国上層部を混乱させ後継者である王子の殺害だったのだろうがそうはいかんぞ。

 吾輩の剛剣が小娘の身体を両断しその両断された身体から現れた黒いモヤが人の形を形成するがその顔はかつて吾輩が切り殺したかの国の王族の一人のものだ。


 祖国の仇と叫ぶが元を正せば貴様の王が先王妃様を手籠めにしようとしたことであろう。


 無礼討ちされても文句言えないという所を情けで帰したと言うのに逆恨みして攻め入ったのであろうが。


 そして敗戦によって滅ぼされておいて何という言い草か。


 ならば今一度吾輩の剛剣を持って貴様を討ち取り、共に冥府にて神の裁きを受けようではないか。


 吾輩の執行人の剛剣を防げるなどと思いあがったようだがそんなもので防げるほど吾輩の一撃は甘くはないぞ。

 人の形を形成し剛剣を持ってモヤを守りの魔法ごと一撃で両断しモヤの霧散するのを見届ける、もう若様とお嬢様に別れの言葉を残したいがもうその力も残っていない。

 どうやら吾輩の姿が見えている愚か者に遺憾だが最後の言葉を託す。



「お嬢様を幸せにしてやってくれ」



 愚か者であった王子は確かに頷いていていた。

 そっと視線を移した先にある若様とお嬢様の無事な姿があった。

 どうやら吾輩の最後のご奉公は、剛剣で断ったモノは善いものを守ってくれたようだ。

 あぁ誇りある生涯であった。




 さる王国では王都の広場にギロチンと老骨の騎士の銅像が建てられている。



 旅人達は物騒な銅像であると恐れるが、その理由を聞くと王国の人のように花を捧げていく。



 真実の愛を守り抜き、偽りの愛を切り裂き、王国を守り抜いたギロチンに宿った魂の武勇伝だ。



 この王国では身の潔白や真実の愛を誓う際にこのギロチンの騎士に誓うのだ。



 王国の長い歴史が終わるその瞬間まで、その信仰が無くなる事はなかったという。

誤字報告ありがとうございました。


あと後書きにちょっと追記


ギロチンの騎士(吾輩と言ってる人)

王国で長年大切にされながら使われてきたギロチンが付喪神になったもの

霊感のない相手に話しかけることは出来ないが自我だけでなくある種の魔法を使う力を持っている

仕えてきたお家を守る為に全てを賭して亡国の復讐を阻止し王国次世代の未来を守った

最後の瞬間に王子が霊的な感覚に目覚めて消えゆく騎士の姿を見たので銅像として姿を残す事に

霊的な感覚のなかった人達からは古いギロチンが一人でに暴れまわったようにしか見えていない

それも相まって精霊のようなモノとして捉えられ、愛や潔白の守護者として信仰される事になった


王子達

今回の標的になってしまった哀れな次世代達で祖父世代の負の遺産を清算する羽目になる

父親世代が過剰な干渉を良しとしなかった為に魅了の魔法の餌食になってしまい今回の騒動を引き起こしてしまう

一連の騒動の後に各々の婚約者となんとか仲直りしてお家を守り抜く

これは騒動の原因となった祖父世代からの執り成しも大きく、父親世代も行動の遅さを恥じた事によるものもある

自分達の人生を守り抜いてくれたギロチンの騎士を尊敬し、銅像を建てたりある種の信仰を作りこれを後世に残した


小娘の祖国

王国の国王である祖父母に手を出したあげく、戦争を引き起こして返り討ちにあい滅ぼされる

ギロチンの騎士によって一人残らず首を刎ねられたと思っていたが実は王家の生き残りがいた

復讐として一連の騒動で上層部を崩壊させ、王子暗殺による大きな傷を作ろうとするも失敗

旧い魔法を残しており魅了や洗脳の魔法を使えるので人心を好き勝手してきたが、王国の付喪神達による妨害によって崩壊した

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