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第7話 悲しみ嘆く魔女/悲しみ笑う少年

 私の結論を聞いたゼクトは黙ったままだ。というか、呆然としてる? 真実を知れば少しでも楽になれると思ったんだけど、まだ整理できないのかな? 当然かもしれないわね。魔族の社会構造をいきなり聞かされたって、それが原因ですと言われてもどう反応すればいいか分からないかもしれない。




 ……そう考えた私は、……本当に……馬鹿だった……。




「はは、ははは、あははははは…」

「ゼクト?」

「あははははは!あーははははははははははははははは!! あははははは!!」

「ゼクト!?」

「なんだよそれ! そういうことだったのかよお! あははははは! なんてひどい笑い話だよなあ!」


 ゼクトがこのタイミングで笑い出した! ちょっ、どういうこと!? どうしてここで笑い出すというのよ!? でも、この笑い方に聞き覚えがある……それは、私が初めて聞いたゼクトの笑い声と同じ……追放されて絶望した……あっ!!


「あははは! 俺は親父やお袋みたいになりたかったのに! 勇者になりたかったのに! 最初から無理だったんだ! ありえなかったんだ! 勇者の息子なのに! いや、勇者の息子だからこそか! ははははは!」

「!?」

「ははははは! 呪われてたのか! 親父が呪われてたせいか! だから俺は才能が無かったんだ! 勇者より魔王の力があるって! なんてひどい笑い話だ! ふざけんな!」


 そうだった、これは心から笑ってるんじゃなくて、絶望のあまりに笑っているんだ! 私に直接出会う前と同じように! そんな……私は……私のしたことは……!


「なんで俺なんだ! 俺は関係ないだろうが! 俺が何をしたってんだ! 親父と魔王の因縁を俺の代まで持ってくるな、巻きもむな!」 

「…………」

「何だったんだ俺の人生は!? こんな苦しい思いをするくらいなら、俺なんか生まれなければっ!?」

ガシッドサッ

「もういいいよ!」


 私は思い切って、ゼクトに抱き着いて押し倒してしまった。もう見ていられないから……。


「もういいいよ、ゼクト! もういいから!」

「……ミエダ?」

「ごっ、ごめん、ごめんなさい! こんな、こんなに傷つけちゃうなんて! ゼクト、ごめんなさい! 私がこんな事実を見つけなければ、言わなければ! ゼクトがこんなにつらい思いをしなくて済んだのに! 私のせいで!」

「何を言ってんだ?」


 私はとんでもないことをしてしまった! ゼクトのために言ったことは、逆につらい思いをさせただけだったんだ!


「ははは、気にするなよ。どうせ遅かれ早かれ分かることだったと思うぜ? ていうか、俺としては、自分のことが理解できてよかったと思うんだけど」

「それなら……」

「?」

「どうして泣いてるのよ!」

「!?」


 ゼクトは泣いていた。笑いながら泣いていた。怒りと悲しみで笑いながら泣くなんて、絶望の仕方がひどすぎる! 見ている私もつらくなる! こんなはずじゃなかったのに!


「私はゼクトに救われた、希望を持つことができた! それなのに私はゼクトを絶望させてしまった!」

「……元々、絶望してたんだけど……」

「だとしても! さらに絶望させたことに変わりないわ! 私は、私は! うう……」

「……?」


 私は自分が嫌になってしまった。こんなバカなことをしでかすなんて! 恩人を苦しめてしまうなんて! ……もう、死にたくなってしまった。


「……ミエダ、ごめんな」

「うう、ぐすっ、……どうしてゼクトが謝るの?」

「ミエダが泣いてるのはさ、俺のせいだし、悪いことしたなと思ってさ……」

「ゼクトだって泣いたでしょ、しかも、笑いながら……ひどい泣き方だったわ」

「そんなにひどかったか? ははっ、俺たち泣いてばっかだな」

「そこで笑う? ゼクトはおかしいわ」

「おかしいか……俺はあの時で全部失ったからな、おかしくなって当然だよな」

「あっ……それは……」

「ちょっ、そんな顔するなよ。大事なのはこれからなんだからよ」


 ……ゼクトは優しいな。こんな私のために、愚かな女のために、元気づけようと笑いかけてくれるなんて。今度は本当に笑ってるし。だけど、そう早く元気になれないわ。……ゼクトの言うこれからの意味も分からないし。

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