第23話 魔女のアニキ/魔女で相棒
※三日後
最後の部屋で、三日が過ぎた。私の計算が正しければ三日のはずだ。何故三日もいるのかというと、あの温泉での出来事のせい。……あの流れで寝所も一緒になったんだけど、なんかその……すごかった……。
……その後、休んだり知識の共有や魔法や武器の訓練を行って三日が過ぎていた。そして、もう十分だと思った頃に外の世界に出る準備を始めた。ちょっと名残惜しい気もしなくはない。そこで一線を越えたのだから……。
「いよいよだな」
「うん」
今の私は、嫌な思い出を思い起こす服から動きやすそうな服に変えている。その上にローブを羽織った。その下にはいくつかの武器と小道具を隠している。まだ使えるものがそれだけあったのだ。
ゼクトは防具と剣を装備しただけだけど、あの剣は、ちょっとね……。まあ、古いから大丈夫だとは思うけどね。
「この魔方陣を使えば外に出るんだな。なんか緊張してきたぜ」
「ふふっ、それは私もよ。それ以上に楽しみにしてるけどね」
「そうか、そうだよな。なら一緒に」
「行きましょう!」
「「せーのっ!」」
ダンッ!
パアッ!
私達は魔方陣の上に立った。その状態で一緒に魔力を流し魔方陣を起動させた。そこで、光に包まれた。
※グオーラム山。
光が収まった時、私達は火の光に照らされた。日の光……そう、私達は外に出たんだ!
「外に出れたな……! 久しぶりに外の空気を吸った気がするな!」
「う、うう……! 太陽が、お日様が見える……! こんな日が来るなんて!」
遂に、遂に! お日様を拝められた! ああ、輝く光が私たち二人を祝してくれているように感じる! 何度目だろう、生きててよかったと思うのは……!
「ははっ、泣くなよ『相棒』」
「『アニキ』~……だって、だって……!」
私達のお互いの呼び名は、すでに、この三日間で変わっている。ゼクトがアニキで、私が相棒だ。
「まあ、泣くのもいいか。だけど、いつまでも泣いていられないぞ。おそらく、俺の故郷の連中が俺のことを探してるだろうからな」
「うう、グスン、アニキ……」
「その中には親父や幼馴染もいるかもしれない。多分、戻って来いというだろう」
「…………」
「だが、連中が俺を見つけても俺は戻らない。相棒であるお前と一緒にいたほうが俺は幸せだからな」
「アニキ……!」
アニキは故郷よりも私を選んでくれた。アニキの身の上を知っているから当然だけど、私は嬉しくて仕方がない。アニキは一番愛する者とともに行く道を選んだのだから!
「相棒、お前のほうは魔界には未練とかはないよな?」
「アニキ、私に故郷に対する思い入れは一切ないわ。ガルケイドには恨みがあるけど、魔王が変わっているとなれば奴はもういないはず。復讐は無理よ……。父と母がいない今、私の居場所はアニキの隣だけよ」
これは間違いない。父と母がいない魔界に価値はない。そもそも、私にとって魔界にいい思い出があるかどいうかなんて聞かれれば、ないとしか答えられない。人間の血を引いているという理由で周りから遠ざけられ、時には迫害の言葉を掛けられたことすらあった。そんなとことに戻るつもりは絶対にない。
「そうか、嬉しいな。それなら、ずっと一緒にいようぜ」
「ええ。喜んで」
たとえ、魔族だろうと人間だろうと、私達の愛を引き裂こうとするものは許さない。私達の冒険の邪魔はさせられない。これが私達の『これから』だ。私とアニキの行きつく先が希望か絶望かは分からない。いや、間違いなく希望を感じる! だから今は、希望を胸に進んでいこう。
「行くぜ、相棒」
「アニキとなら、どこまでも」
「「『目的』を求める冒険を!」」
私は魔女で相棒なのだから……。




