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電脳大乱記  作者: 水室二人
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距離零の悪魔

 距離零の悪魔と言うのは、ムラサメの二つ名だった。

 電脳戦国大乱時代、彼の射撃の命中率は、異常な事で知られていた。

 チートツールを使った、不正ユーザー疑惑もかなりあって、運営が動いた事もある。

 それで、のうけんに目を付けられた経緯がある。


「これは、意外と面白いかな・・・」

 バスターランチャーを撃った後、一度前線から離脱する。

「ECの回収、とEQへの変換は、任せてもいいのか?」

「最優先で、そっちにまわす」

「ありがとう」

 補給ツールを展開したスイカは、移動が難しくなっている。

 それを守る位置で、ミツワがガドリングを設置している。この二人は、基本的にその場所に固定される事になる。それを守るのが、ムラサメの仕事になる。

 ミッションが開始してから、スバルが1人で突っ込んで言ったので、敵はそれを集中して狙っていた。

 このチュートリアルでの敵の思考は、かなり単純だった。

 ほとんどの敵は、スバルを狙っていたが、動かない獲物を見過ごすほど甘くは無かった。

 スイカに寄ってくる敵は、ミツワがガドリングで撃破した。敵の動きを考えて、守りやすい場所をお互いに考えていたので、守るのは楽だった。

 計算外だったのは、ガドリングの燃費の悪さだった。

 特典武器なので、威力はあるけど、無改造の状態なので、テスト中に使っていた便利機能のほとんどが封印状態だった。

 敵から回収したECを、素早くEQに変換する必要があった。

「ふっふ、ふ~~~~ん♪」

 集まってきたECを見て、スイカはご機嫌だった。彼女は、パズルゲームが大好きな人間だった。

 彼女が好きなのは、物を組み立てるのや、揃える系統のパズルだった。ジグソーパズルはもちろん、逆の知恵の輪も好きだった。

 ECは、補給装置に入れれば自然にEQになる。だけど、それを早める方法がある。

 それが、ミリオンパズルと言う最近流行のパズルだった。

 サイコロの一面が、10×10に分割される。各面は、色分けされていて、それが10の破片にランダムで構成される。

 100の破片の組み合わせはランダムになっているけど、必ず外面と繋がっている。

 色を頼りに、破片を組み合わせ、箱を完成させる。

 もっとも、これは初心者レベルで、国際大会れれるになると、正気を疑うレベルの難易度になる。

 スバルは、国際大会の上位入選者。戦国大乱に出ていたのは、システムがパズルに通じる部分があり、興味があったからで、その結果機体の操作は駄目だけど、システムの部分が人外過ぎて、上位まで食い込むことが出来た。

 パズルを素早く完成することで、時間の短縮と質が向上する。ミツワが倒した蟻の破片から、恐ろしい速さでEQが作り出される。

「物足りない・・・」

 簡単すぎて、スイカは少し不満だった。

「数を、集める!」

 自分を守るよりも、敵を倒せと、スイカはムラサメに命令する。

 色々と、不安だったので、スイカの防衛を優先していた事を、彼女は見抜いていた。


「了解。EQの準備は、よろしく!」

 スイカに言われたからじゃないけど、そろそろ仕事をしよう。

 離れた場所から見ていた事で、蟻の動きは大体予測できるようになった。

 スキルの、空間把握と言うのは、一定の範囲の出来事を分析する能力と言ってもいいだろう。

 蟻を集中して見る事で、動きのパターンを把握することが出来た。

 この感覚を、広げる事で戦場を把握する。

「いざ、参る!!」

 ブレードを加速させ、敵の群れの外側を移動する。移動しながら、ランチャーを連射する。

「1,2,3、4!」

 4つの光が走り、4体の敵を撃破する。

 向きを変えながら、次々と、敵を打ち落とす。

「何で、動きながらあんなに、正確に射撃が出来るのよ!!」

 中央で、スバルさんが叫んでいる。

 彼女は、大技を使った影響で、残りのエネルギーが心もとなくなっている。そのことに気づいているのだろうか?

「いざとなったら、助けないと駄目かな?」

 チームメイトの離脱は、評価の低下に繋がる可能性がある。注意しなければいけないだろう。

「ブレード、作動!」

 このままだと、スバルさんはリタイヤしそうだった。酸を何度か浴びた結果、エネルギーが減っている。 直接攻撃のダメージではないので、意識から離れているだろう。刀装備で、普段からエネルギーの残量を意識していない結果だろう。

「上から、援護します」

 ブレードの機能を作動させ、空を走る。円を意識した動きで、駆け抜ける。ただ、からだの角度は地面から見て90度になっている。横向きで、くるりと、スバルを中心とした円を移動する。

 範囲は、結構広くくるり、くるりと、移動する。その速度は、最高速度。

 その状態でも、敵を外さない。敵の動きと、自分の動き。それを把握しているから、僕の攻撃に距離の意味は無い。

 撃つ瞬間、当たる事がわかる。昔から、そう言うことが電脳世界で出来た。

 外れるときも、それが解る、だから、当たるはずの攻撃を交わしたスイカは凄いと思う。

 

「な、何なの?」

 スバルの周りを、高速で移送するムラサメ。その射撃は正確で、まるで敵が自分から当たり行っている様な錯覚を感じた。

「距離零の悪魔・・・」

 ここに来て、スバルはムラサメの二つ名に気づいた。電脳戦国大乱で、脅威の命中率を誇るゲーマー。

 彼に射程距離は関係ない。撃てば当てると言われた存在。ただ、何故悪魔になったのか、スバルは知らない。

 スバルの周りの、敵の数は減っている。それでも、攻撃の勢いは落ちていない。

 ムラサメは、確実に敵の数を減らしている。でも、それはスバルを敵と認識していないのから、撃破しているからだった。

 蟻は、敵を認めるとそれを睨む。その状態でないのを優先的に倒していた。

 その事には、誰も気づいていない。なんとなく、スバル周辺の敵を倒していないと、見ている人たちは思っていた。

「消費が激しいな・・・」

 ムラサメに意識を裂いた結果、スバルは自分の状況を見つめる事ができた。勢い良く前に出すぎたと言う事に、今更ながら気づいた。

 これは、個人競技ではない。ゲームとはいえチームプレイは必要だ。

 補給に関しては、スイカという子に頼めばやってくれると思う。だけど、そこまでたどり着ける自信が無い。

 ミツワの援護は、場所が悪い。スイカを守るには適している場所でも、中央を援護するには不向きな場所に彼女はいた。

 普通なら、中央を援護するのがセオリーだ。文句の一つも言いたい気分だけど、最初の打ち合わせすらしていない状況なので、文句は言えない。

「ここまでかな・・・」

 気がつけば、後ろから大量の酸がやって来る。

 前方の敵に集中しすぎて、背中ががら空きだった。悔しいとも異ながら、上を向く。そこには、なぜかまっすぐ上に向かって加速する人影があった。


「この場所でいいだろう」

 敵の数を減らし、一度補給をして、再び敵に向かう。スイカのパズルの腕は凄く、エネルギーの回復はあっという間に終わり、特殊なアイテムの勢作まで終らせていた。

「まずは、これ!」

 ランチャーを、スバルに向けて撃つ。彼女は、諦めているのか、動く事をしない。動く気配が無いから、外す事もない。

「え?」

 それは、エネルギーを回復する特殊弾。大量のEQを消費するから、造れたのは一つだけ。しかも、その回復量はあまり多くない。

 彼女の腕だと、包囲された場所から撤退するのはギリギリだろう。

「そして、最大出力で撃つっ!!」

 バスタランチャーを、上空から撃ち込む。出力は、全開。着弾点は、スバルの後方。飛んでいた酸を巻き込み、一気に爆発する。

「ちょっと、まて、これだと私まどぇええ!」

 地面に着弾したバスターランチャーは、その場で爆発を起こす。爆風は、側にいたスバルを巻き込んで、空に打ち上げる。これは、とっさに上にブレードを使って移動した結果だった。

「そう来ると、思いましたよ」

 上に来たスバルを、ムラサメは蹴り飛ばす。

「ちょっと、何をするの?」

「安全圏まで、飛んで行け!」

 蹴り飛ばされた先は、スイカの側だった。女性に対する行為とは思えない行動。

「何をするのよ、この悪魔!!」

 エネルギー残量は、残りわずか。ギリギリの状態だった。

「補給を、お願いできるかな?」

「その必要は無い」

 スバルの問いに、答えたのはスイカではなくミツワだった。

「何で?」

「もう終る」

 ミツワは、手ぶらだった。

「持ち場を離れても良いのか?」

「武器が無い」

「え?」

「何であんな芸当が出来るかな・・・」

 ミツワがいた場所に、ムラサメがいる。彼女のガドリングを、彼が操作していた。

「武器の受け渡しは、可能だった?」

「固定武器は、出来るみたい」

「いつ見ても、あれは可笑しいね」

「敵から見ると、悪魔だと思います」

「女性に多雨する扱いも、充分悪魔だよ」

 怒りながら、文句を言うスイカに、スバルか過去に何かあったのだろうと考えた。

「あの連射状態で、ミスが無いなんて、異常です」

 ムラサメの攻撃は、一発も外れていない。ガドリングの、高速射撃でも、ミスが無いというのは、異常だった。

 結局、最後まで彼はミスをせず、チュートリアルは終了した。

 結果は、彼がトップだった。

 2位がスイカで、3位がスバル。ミツワはが4位と言う戦功結果。

 何とか、オーダーをこなせたと、ムラサメは安心するのだった。


 タイトルとあらすじを変更しました。

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