チュートリアル その1
人類が宇宙に進出して半世紀、火星は戦場だった。
科学技術が進み、ナノマシンによる火星改造計画。
大気を生み出し、人の生存を可能にする計画は、最初は順調だった。
ある時、人類は敵に出会った。
火星の地下に眠っていた生命体。
火星蟻という、ストレートな呼び名の生き物は、人類に牙を向いた。
他にも、火星に眠っていた古代文明の機械兵器も出現して、三つ巴の戦いになってしまった。
人類は、選択を間違えた。
だが、このままでは終れない。
新たな兵士として、火星で戦い、なり上がれ!
というのが、火星大乱の物語。
SF世界を舞台にした、シューティング色の強い物語になっている。
「動きに、違和感は無いな・・・」
アバターに乗り移り、動作を確認する。
自分のも思い通りに体が動くのは、当たり前だけどゲームの中でそれが可能と言うと、凄い事だと思う。
「それでは、まず実際に戦闘をしてもらいます」
「いきなりですか?」
「体で覚えるのが、大事です」
管理AIさんの言葉の後に、目の前に巨大な蟻が姿を現した。
高さは2メートルほどある。昆虫は、巨大になると不気味で恐ろしい。
「これと、戦えと?」
「武器は、手元にありますの好きなのを選んでください」
目の前には、色々な銃器が並んでいる。
「説明は?」
「ご自分で、試してください」
「さようで・・・」
ハンドガンみたいなのから、アサルトライフル、バズーカみたいなもの、剣や、筒だけの謎のものもある。
「最初は、これかな?」
片手拳銃にしては大きめの銃を手に取る。
「レーザーガンか・・・」
手に取る事で、それが何なのかと言う情報が入ってくる。
「ちなみに、見て意識すれば、情報は見えますよ」
「本当だ」
言われたとおりの事をして、謎の筒を見てみると、レーザーブレードと表示された。かなかな、心躍る武器だけど、あれを相手に接点線と言うのは、正直怖い。
「これだと、女性ユーザー少ないのでは?」
敵があんなのだと、女性向けではない気がする。
「ペット人気と、これの需要で、女性ユーザーも多いですよ。安心してください」
何に対しての安心なのか、もしかして、僕が女性にもためにゲームをしているとか思われているのだろうか?
何か言おうと思ったけど、薮蛇になりそうだから止める。
レーザーガンを手に持って、蟻へと向かい合う。
自分装備は、レーザーガンと戦闘強化服壱型というらしい。特殊部隊の戦闘服みたいなデザインの装備だ。
「これは、ブレードシュータですか?」
「公式のものと同じ仕様です」
「なるほど・・・」
大人気のVReスポーツのブレードシューター。二本の刃のついた、スケートシューズみたいなものを使い、地上を駆け抜けながら色々な競技ができるものだった。
eオリンピックの正式協議に、何種類か採用されている。公式の設定を利用するなら、色々なジャンルのゲームにも取り入れる事が可能だった。
「わが社は、eオリンピックの人材育成も目標としていますから」
管理AIさんの言う事は、本当だろう。メダリストも、何人か脳科学研究所から出ている。
「これ、なぜか女性のほうが適正強いのです・・・」
日本人の場合、女性の銘だリストは多数要るけど、男性はいない。少ないのではなく、誰もいない。
「目指してみます?」
「考えては、おきますよ」
これに関しての、適正を考えた事は無い。僕の目的は、メダリストではない。プロになるのも目標だけど、胸に秘めた目標は別にある。
「残念です」
僕のその気が無いのが伝わったのか、管理AIさんがそう呟く。やっぱり、この人少し怖い。
「それでは、実践その一を始めます」
それを合図に、蟻が動き出した。
距離は、10メートルほどある。
「移動は大丈夫ですか?」
「やってみます」
ブレードを使った事は無い。スケートも、実際やった事は無い。それでも、ゲーム中と言うことで、体は自然と動く。
体の傾きで、ブレードは速度を変える。方向転換などは、意識すれば体が自然と動く。
ある程度、動きを試しながら、蟻に近づく。
「ポインター付きか・・・」
銃を構えると、レーザーポインターが作動して、目標を教えてくれる。
銃の射程距離に入ると、色が変わり射撃OKとなる。
「反動は、あまり無いのか・・・」
実際の銃を売った事は無いけど、電脳戦国大乱の時に使った機体で、銃撃に物凄い反動のある武器があった。
それとは違うようだった。
動いていると言っても、ゆっくりだったので、問題なく玉は頭部に命中する。
それだけで、蟻は倒れた。
「一撃ですか・・・」
「あれ?一撃で倒せないの?」
「蟻には、弱点があって、そこに当たれば倒せます」
「生き物だから、頭を狙えばと思っただけだけど?」
「それを、過ぎにできる人は、中々いませんよ・・・。それではテスト2をはじめます」
そう言うと、今度は蟻が5匹出現した。
「このゲーム、敵は多数同時に出現します。蟻の歩兵体は噛み付きと、たまに酸を吐き出します。これは、噛み付きだけする初級の歩兵です。戦闘モードで動かすので、試しに戦ってみてください」
「了解」
と言った瞬間、蟻が動き出した。その速さは意外と速い。 ただ、別のゲームで戦った敵よりは遅い。
「後、ブレードの設定は後で変更できますが、現時点ではベーシックルールの状態です」
ブレードと言う協議は、色々と遊び心があり、上級ルールだと空の移動も可能になる。
ベーシックルールは、確か100メートル移動すれば10秒間空中移動が可能になるはずだった。
「試してみるか・・・」
敵の速度は、人の全力疾走に近い速度。ブレードの移動は、それよりも早い。
接近してくる蟻に、噛み付かれない様に注意してその横をすり抜ける。ついでに、一撃打ち込んで、一匹始末した。
少し大きめに迂回して、振り向きながら丁度いい位置にいた蟻の頭を打ち抜く。
蟻は、意外と素早く向きを変えて、こちらに再度向かってくる。この数なら、苦戦することなく倒せる気がする。
「折角だから!」
視界の隅に、ブレードのゲージが表示されている。機動時間は10秒になっている。
「クイックアッタク!」
意識して、ブレードの空中機動を発動する。起動するには、色々と方法があるけど、念じればたいていの動作が可能なのが、フルダイブゲームの特徴でもある。自分が、こう動きたいと強く操作すれば、イメージが上手ければその通りに行動できる。
僕の場合は、この手の操作が得意みたいだ。肉体感覚に頼ってプレイするリアル派と、イメージで操作するゲーマーと分類される今、ゲーマーに属す形になっている。
僕の体は、カーブを描きながら浮かび上がり、横になった状態で上に向かう。
螺旋階段を昇るように、くるくる回りながら、蟻の上を駆け抜ける。
上にいる敵への対処が出来ないみたいで、蟻は足をとめてしまった。
その隙を逃す事はせず、3つの光が敵を打ち砕いた。
「凄い、命中率ですね」
「この手のゲームは、やりこんでますから」
「それでも、凄いです。ただ、今はチュートリアルなので、弱点で一撃ですが、実践ではレベルと装甲などの要素が絡むので、注意してください」
「了解」
「それと、武器のエネルギーに関しての説明がありますが、次のチュートリアルはどうします?」
「受けます」
「了解しました」
次の瞬間、背中に違和感を感じる。
「基本装備、エネルギーバックパック、通称EBPを装備しました」
振り向けば、ロボットアニメなどで見かける、バックパックの小さい奴が背中に装備されました。
「細かい設定や、改造は、本編で楽しんでください」
「色々と、出来るのですか?」
「武器もそうですが、戦闘強化服、EBPのカスタムなどは、本編の売りの一つです」
そう聞くと、楽しみが増す。戦闘ばかりと言うのは、面白みが無いからね。
電脳戦国対戦でも、自分の乗る機体を色々といじり尽くして、工夫を重ねたものです。
「それでは、説明を始めます」
「お願いします」
管理AIさんの説明は、まだ続く。
まったり更新予定です。