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電脳大乱記  作者: 水室二人
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キャラクターメイキング

 色々と、挑戦してみます。

 

「貴方の名前を教えてください」

「村雨です」

「生体認証を確認。村雨様として、登録します」

「ありがとうございます」

 目の前にいるのは、管理AIと呼ばれる存在。リアルな女性で、会社の受付のような格好をしている。

 と言っても、僕はまだ学生だから、詳しい会社の受付と言うのを見たことがない。

「それでは、村雨様のキャラクターメイキングを開始します」

「なんで、”様”付けなのですか?」

 様と呼ばれる事は無かったので、少し違和感を感じます。

「それは、上からの指示です」

「上?」

「村雨様は、のうけんの登録予定メンバーとしてのβ参加者です。丁寧に扱う様にといわれています」

「そう言うのは、いいのですか?」

「いいのです。金星の加護と言う事になっています」

 システムで、そう言うのがあるなら、同じような待遇の人が複数いると考えるべきだろう。

 僕が、この新作ゲームのオープンβプレイヤーに選ばれたのには、理由がある。


 僕は高校3年生。正直、夏休み直前のこの時期に、VRゲームで遊んでいるのはよろしくない。

 成績優秀と言うこともなく、一芸に優れているわけでもない。推薦で大学と言う選択肢は無かった。

 他人から見れば、これも一芸になった事になるけど、昔からゲームが好きで、春にあったアマチュアのゲーム大会で優勝した。

 脳波リンクと言う技術を使い、本物のロボットに載った感じで自由時際に戦うアクションゲーム。

 電脳戦国大乱と言う、世界規模の人気を誇る作品で、プロリーグの存在していて、そのアマチュア部門で優勝したのだった。

 その結果、”脳科学研究所”通称”のうけん”と言う、世界規模の電脳世界企業から、プロゲーマーへのスカウトが来たのだった。

 この時代、プロゲーマーは高収入の花形職業となっている。

 歌って踊れるプロゲーマーと言うジャンルも確立されているくらいだ。ちなみに、大乱の準決勝で、アマチュア枠で出ていたアイドルに勝った事で、ファンから恨まれていると言う理不尽な状況になっている、

 今日は6月1日。夏休みに正式スタートと言うゲームの、オープンβテストにしては、期間が短い気がするけど。準備に関しては、年単位で行っていたらしい。

 今回のオープンβテストは、宣伝のためのもので、ゲームの様子は、配信され、その数字次第では参加者に報酬が支払われる契約になっている。

 電脳戦国大乱の大会で、かなりの額の賞金を手にしたので、親もプロゲーマーに進む事に賛成してくれている。

 学校を休んでも、脳科学研究所付属の大学への推薦が決まったので問題ない状況が出来上がってしまった。

 幸い、個人情報の保護に関しては色々と守られているので実害は無い。ネットの中での被害が少しあったのが残念だった。

 

「アバターの設定は、どうの様いたします?」

「スキャンデータを、使用します」

 僕が参加するゲームは、”火星大乱”と言うゲームだ。この会社、大乱と言う名前がすきなのか、ほとんどのタイトルに大乱がついている気がする。

 フルダイブ仕様のゲームで、ゲームの世界を動き回る事になる。

 この手の作品は、数多く作られているので、色々な決まりごとができている。個人の実際のデータと違うと、現実に戻ってきた時の感覚に問題が起きたので、法律で決められている部分も多々存在する。

 自分のデータを元に、予め用意しておいたアバターが表示される。

 この場合、体格のみの再現なので、顔等は自由自在となる。もっとも、美化しすぎて現実との差がありすぎると、後々トラブルになる可能性も捨てきれない。

 プロとして活動すると、現実でのインタビュー等もあると聞いているので、実際の顔とあまりいじる事はしていない。

 髪形を変え、目の色を変えるだけで、別人のような感じになったので、それで決定した。

「初期スキルを、選択してください。村雨様専用のスキルが一つあるので、お忘れなく」

「そんなものを、用意してもいいのですか?」

「この、火星大乱の特徴に、個人専用スキルシステムと言うのがあります。脳波を解析して、個人ごとに特化した専用スキルがあります。名前は同じでも、効果が違うスキルです」

 脳波を解析と言うのは、少し怖い気がしたけど、管理AIさんの説明を聞いて、不安は解消されました。

 脳科学研究所は、粉の手の研究の最先端を行く企業です。

 色々と難しい事は、専門家に任せて、僕はプレイヤーとしての責務を果たすだけです。

 予め、資料としてスキルの情報はもらっていました。

 このゲームは、未来を舞台にした作品です。個人の戦闘に関しては、戦闘強化服と言うのを着用して行います。

 これを強化する事で、プレイヤーは強くなります。RPGで言う、ステータスはあまり意味が無く、個人の力量に重点が置かれています。

 主要装備は、近未来兵器。魔法というものは、無い世界の作品です。

 レーザーサーベルや、ビームガン。ホーミングレーザーと言うのもあるそうです。

 今後、人の乗れる小型のメカから、巨大なロボットまで登場する予定らしいです。

 初期スキルは、5個選べるそうです。個人スキルが一つあるので、残りは4つです。


 空間把握と言うのが、僕の初期スキル。空間の存在の位置を確認できると言うもの。脳波を調べての固有スキルと言うのは、恐ろしいと言うのを実感しました。

 これは、僕の電脳世界での切り札です。

 現実世界でなく、電脳世界でのみ実感できる異能。

 このスキルを見た時、普段出来る事を、スキルにされてしまったという気持ちが浮かび上がりました。

 貴重な枠を、無駄にされた気もします。

「無駄ではないですよ」

「心が、読めるのですか?」

 管理AIさんの発言は、タイミングと内容が怖すぎます。

「心は読めませんが、思考はある程度理解できます」

「それ、違法では?」

「管理AIなので、ギリギリセーフです」

「・・・」

「安心してください。個人の能力は最初からある程度は把握しています。それを、成長させるための、スキルです」

「それ、えこひいきとか言われませんか?」

「それは、貴方しだいです。元々あった素質です。いかすも殺すも、貴方しだいです」

「・・・」

 色々と考えると怖くなりそうなので、先に進む事にします。

 射撃、整備、偵察の3枠はすぐに決まりました。近接戦闘は苦手なので、外してあります。

「後で決めることも出来ますか?」

「可能です」

「では、これで行きます」

「了解しました。それでは、チュートリアルを開始しますが、よろしいでしょうか?」

「お願いします」

「それでは、アバターへと意識の転換を行います」


 不思議な感覚に包まれて、僕は電脳世界へと移行する。毎回不思議な感覚だけど、新しい世界へ行くと思うと、わくわくする。

 この世界での出来事が、まさかあんな事になるなんて、あの時の僕は思ってもいなかった。

 と、最初に言っておけば後で形になるだろう。

 


不定期連載です。


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