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妹の代わりに女学院へ通う事にした  作者: 双葉
第2章 『秋へのバリエーション』
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第2章6 『嵐の夜へ』





 ボクはよみさんをお姫様抱っこで保健室へ向かう、幸い授業中で廊下にはボクら以外居ない。それでも恥ずかしいのか、読さんは顔を少しだけ蒸気させている。さっきまでは『あの、重くないですか?』と、照れながら質問をされていたが、実際は結構軽く華奢なスタイルをしている。


 無言のまま歩くのもあれだから、ボクは『ダイエットとかしているの?』と聞いたら、特に減量したり運動などはしていないと答えてくれた。世の女性を敵に回しかねないが、体質がそうさせているのだろう。


 保健室に着くと先生はボクらの姿を見て笑っていた、そりゃお姫様抱っこして現れたらビックリもするし、笑ってしまうだろう。読さんは先生の手当を受けた後、午後の授業は受けずに保健室で休む事になった。



「じゃあ先生は職員会議があるから、戸締りを頼めるかしら?」


「あの私はどうすれば?」


十朱とあけさんをボッチにさせたいの?」


「残ります……」



 授業に戻るつもりがボクも休む事になった、ちなみに手首の腫れは酷くは無かった。ちょっと赤くなっているが動かすと痛いわけじゃない、一応冷やす為に氷袋を当てたまま、読さんが持たれているベッドの脇で座っている。


 こうして脇にある椅子に座っていると、白愛はくあを看病していた頃を思い出す。別に読さんが重病って訳じゃないけど、部屋で二人きりでベッドがあるシチュエーションは、やっぱりあの頃を思い出しちゃうから少しだけ悲しい気持ちになる。




「白愛さん」


「なんでしょう?」



 ちょっとだけ過去を振り返っていると、読さんが眠そうな表情をしながら話しかけてきた。まぁ、いくら軽かったとは言え痛みはキツいはずだ、それに運動した直後だし眠くもなるだろう。



「少しだけ眠ります」


「はい。おやすみなさい」



 彼女はまぶたを閉じて、寝息を静かに出しながら深い眠りへ落ちた。綺麗に整ったまつ毛、しっかりとケアされた髪、そして何より女の子から香る匂いがボクの鼻を刺激する。


 ボクも眠くなってきた、ここに来てからバタバタしていたし、千桜ちささんや朱音あかねさんのこともあって疲れてるのかな。まぶたが重くて、抵抗するけどもう限界だった。


 ベッドにうつ伏せになって、そのままボクは眠りについてしまった。保健室の窓から陽の光がボクの身体を暖めていく、それが凄く心地よくて身を任せてしまった。起きたらもう放課後になってるかも、でも今はこのまま眠っていたい。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 白愛さん…………白愛さん…………

 聞きなれた優しい声が聞こえる、ユサユサと身体が不規則に動く。少しずつ頭は覚醒していき、ボクはうつ伏せの状態から身体を起こす。



「あ、私つい……」


「気持ちよさそうに寝ていましたからね」


「あはは……それより今時間は?」


「もう放課後です、寮へ帰りましょう」



 読さんは既にベッドから出ていた、足には包帯が巻かれているが歩けない程では無かったようだ。ボクらの荷物は雪美ちゃんとりょうさんが回収したと、読さんへ連絡があった。


 ボクらは保健室の戸締りをした後、職員室に鍵を返して寮へ帰宅した。ただ陽芽ひめノロードを歩いている間、読さんはずっと無言でボクの横を歩いていた。ずっと何かを考えている様な表情だった、ボクが聞いてもいい事かわからず、結局寮に着いてからも会話は無く部屋へ戻った。


 夕方になると急に天気は一変し、雨が窓を叩きつける程に荒れ始めた。ここに来てからはずっと天気も良くて、予報でも今日は降水確率ゼロになっていたのに、今は台風並の強さで外に出られない状況だ。


 風の音と雨の音が酷く、部屋で晩御飯ができるまで読書をしていたが集中できない。ベッドから立ち上がり食堂に行こうと、廊下に出た時だった。



「あ…………」


「貴女…………」



 まさか朱音さんと出会ってしまった、お互いに硬直したまま見つめ合うが、先に視線を切ったのは朱音さんだった。ボクは思わず、




「再投票、本当にやるのですね」



 ボクはちょっと空気読めない奴かもしれない、でも聞かずには居られなかった。学院でも異例で創設以来全く無かった再投票、朱音さんは今どんな気持ちで居るのか、千桜さんに対してどんな思いを抱いているのか。


 だがボクの掛けた言葉には反応せず、そのまま自分の部屋へ戻っていった。いつか必ず、朱音さんとも楽しい会話をして最高の学院生活を送りたいと、ボクは小さな夢を持って食堂へ向かった。



 皆と食事を楽しんだ後、リビングに集まって第1回目の放送となる恋愛ドラマを見ていた。しかし、読さんは食事を終えると直ぐに部屋へ戻ってしまった。本当にどうしたんだろう、ボクが何かしたのかな? 彼女はボクと視線すら合わせなかった。




「ちょっと白愛さーん?」


「え? あ、何かしら?」


「もー、ちゃんと見てるー?」



 雪美ちゃんは頬を膨らませて睨んでくる、ボクは苦笑いを浮かべつつ、ドラマを見ていくが全く内容が頭に入ってこなかった。ドラマが終わると各自部屋に戻って行く中で、ボクは千桜さんに声を掛けた。



「千桜さん」


「どうかしました?」


「あの、えーと……」



 読さんの事を話そうと思った、でもボクが勝手にそう考えているだけで、実際は違うかもしれない。だから、ついボクは千桜さんに、



「いえ、なんでもありません。おやすみなさい」


「はい、おやすみなさい?」



 そのままボクはお風呂に入る為に、一度部屋へ戻る事にした。千桜さんは頭に『ハテナ』を浮かべていたけど、これくらいの事なら自分で解決出来るはずだ、また明日の朝にでも直接本人に聞くことにしよう。


 ボクは皆が寝静まるまで、部屋で一人読書を開始した。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 皆が寝静まった事を確認した後、ボク一人だとかなり広い浴場へ向かい、制服をカゴへ入れて熱いシャワーを身体に浴びせていく。こうしてヒソヒソとお風呂に入るのは、正直気分悪いしスッキリしない。せっかくのお風呂を堂々と入れないのは本当に残念でしかならない、お風呂は唯一気を抜ける場所のはずなんだけど。



「はぁ……ボクは何をしてるんだ……」



 自分に呆れながら髪をシャンプーしたり、ボディソープで身体の汚れを落としていく。今日は長風呂を避けるためにさっさと脱衣場へ出ていく、今はお風呂を楽しむより睡眠を優先したい気分だ。


 夢の中へ逃げた方が今は気楽な感じがする、パジャマに着替えて早く寝てしまおう。ボクはドライヤーで適当に髪を乾かして、廊下に出た時だった。



「うわっ! び、ビックリした。読さん、起こしちゃったかしら?」


「いえ、そうじゃないです……」


「そ、そうなの?」



 先日あった謎の視線に実はビビっていたボク、脱衣場の扉を開くと目の前に読さんが立っていた。ドライヤーか何かで起こしてしまったのかも、とは言え裸の所を見られなくて良かった。


 と、安心していると…………



「少しだけ、いいでしょうか」


「え? 少しだけって…………よ、読さん!?」



 突然彼女はボクに抱きついてきた、それも力いっぱいに。一体何を…………だが答えは直ぐに読さんの口から告げられる。













 ―――やはり男の方でしたか












 ボクは慌てて彼女を引き剥がし、頭が真っ白になった状態で出てきた言葉は、




「ど……どうして、なんで…………」



 睨みつけられるとかではなく、彼女の目はもっと別の何かを含んだ瞳でボクの困惑した顔を見つめていた。

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