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妹の代わりに女学院へ通う事にした  作者: 双葉
第2章 『秋へのバリエーション』
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第2章5 『焦りのパッション』




 午前の授業を終えたボクは、お昼ご飯を食べる為に皆と食堂を目指していた。今朝の掲示板に張り出された『エヴァンスシスター再投票』は異例との事で、教室でも廊下でもその話題で持ち切りになっていた。


 もちろんボクらもその話を最初までしていたが、今は別の話題へとシフトしていた。それは次行われるであろう授業に関係している、その授業とは『体育』なのだが二年生と一緒にやるらしい。


 そして当たった二年生は千桜ちささんのクラスだ、ボクとしてはサポートをしてくれる人と一緒に授業ができるのは大歓迎だ。




白愛はくあさんは運動得意なの?」


「得意、と言うほどではありませんが好きな部類ですよ」


「今日はドッジボールですから、がんばらないと!」




 へえ、お嬢様でもドッジボールってするんだ。と思わず関心してしまった、もっと平和的なスポーツをすると勝手に思い込んでただけなんだけど。


 りょうさんと雪美ちゃんはスポーツ系が好きな様だが、よみさんと有栖ありすさんは苦手らしく、ドッジボールは凄くやりたくないと嘆いている。さっきの質問でボクは『好きな部類』と言ったが、実際はかなりスポーツが大好きでサッカーも昔良くやっていた。


 白愛と良くサッカーをしていた頃は、キーパーをボクが担当して、ひょろひょろ転がってくるのを見て笑っていた記憶が今も残っている。その頃はまだ白愛も歩き回れる体力があったから出来たこと、その後は話さなくてもわかるだろう。




「今日は何を食べますか?」


「有栖さん、何かオススメとかあるかしら?」


「では…………こちらとか如何でしょう?」



 食堂に着いたボク達は券売機の前で悩んでいた、メニューには和食、洋食、中華など様々な種類の食べ物が記載されている。有栖さんはその中でオススメの『日替わりランチ』をボクに教えてくれた、値段もリーズナブルでお財布に優しいと来たら選ぶ価値もあるだろう。


 ボクは迷わずそのボタンをタッチし、食堂のおばさんに食券を手渡した。先に選び終わっていた雪美ちゃんと涼さんは席を確保し、『こっちこっちー』と手を振ってくれる。ボクは出来上がるのをテーブルで待つことにした、今日の日替わりランチは何なのか気になるが、ここは淑女らしく自然体で居よう。


 …………淑女か。

 やっぱり慣れてくると本当の自分がどれなのか、わからなくなるしちょっと複雑な気分になる。と、一人心の中で溜め息を吐いていると。



  ―――あのお二人ですわよ



 ボク達が座るテーブルの真後ろから、そんな声がボクの耳に入ってきた。後ろを振り向かずに耳だけに真剣を集中させる、すると聞こえてきたのは『お行儀の悪い』『陽芽女としてどうなのかしら』と、悪口にしては少し遠い言葉だが、そこまで言う必要は無いじゃないかと思ってしまった。


 雪美ちゃんと涼さんには聞こえていなかった見たいだ、後ろの生徒もその後は普通に会話をしながら、食事を楽しんでいるようだった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 しばらくしてボク達のテーブルに食事が運ばれてきた、雪美ちゃんは中華Aセットで、十朱とあけ姉妹はオムライスセット、有栖さんは和食Bセットで、ボクの日替わりランチはと言うと。



「から揚げですわね」


「あ、白愛さん今日の日替わりランチはハズレなんですよそれ!」


「ハズレ? から揚げがですか?」



 今日の日替わりランチはから揚げセット、ボクは普通に嬉しい内容なんだけど、雪美ちゃんはそれをハズレだと言う。お皿に大盛りにされたから揚げに千切りキャベツ、お豆腐のお味噌汁に白いお米。


 んー、考えてみてもハズレには程遠いような。雪美ちゃんだけじゃなく、ボク以外の皆は『あー』と口から残念そうな声色を出していた。しっかりと油で揚げられた鶏肉、きつね色にこんがりと仕上がった衣、箸で裂くと溢れ出る肉汁は滝のようにお皿へ落ちていく。


 わからん、わからないよ、何がハズレなのさ。



「この食堂のカロリーランキングトップテン入りしているのです、しかも次は体育ですから重い上に油がすごいので」


「あー、なるほど。それでハズレなのですね」


「体育が午後に回ったのでそれも影響してるんだよねー、白愛さんスタイル良いし大丈夫?」


「あ、あはは…………だ、大丈夫です……はい」



 危ない、ボク普通にガッツリ食べる気で居たけど、ここは女の子しか居ないしお嬢様学院だ。自分が男であることを見失いそうでも、女の子としての苦悩や知恵ってのは知らない。カロリーと言う悪魔の数字まで気にしないといけないのか、なんて世知辛いのだろう。


 ボクはから揚げを小さく裂いて、口の中へ入れていき咀嚼する。本当なら丸々一個をかぶりつきたい、でもそれをすれば多分ヤバい。


 皆よりわざとペースを落としながら、から揚げを平らげていく。一個を四等分にして食べたせいで、あまり満腹感を得られなかった。女の子って大変だな、これからはもう少し食事に気をつけながら食べよう。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 皆でテーブルを囲んだ食事は賑やかに終わり、いよいよやって来た体育の時間。千桜さんのクラスと合同なので、ドッジボールのチーム分けはそのまま一年と二年、といった形になった。


 だが一気に全員でやると大変な事になる、そこで3つのコートを使用し分かれて行うことになった。ボクが入る一年チームは、知っている人だと読さんだけになってしまった。対する二年チームにはなんと千桜さんが加わっていた、ニコッと笑みを送ってくる千桜さんにボクは苦笑いを返す。


 ちなみに体操服に着替えるために更衣室へ行ったが、ボクの目に毒だし色々耐えられそうに無かった為、千桜さんのサポートで今日は保健室で着替えた。体操服も今時無いブルマと長ズボンがあり、ボクは迷わず長ズボンをチョイスしている。


 あんな引き締まったモノを使用出来るわけない、下着に関しては察してほしい、これはあの悪代官千桜さんが悪いんだから。




「それでは始めてください!」



 うちの担任こと神楽かぐらさんがホイッスルを強く吹く、その甲高い音色は体育館に響き渡り、それを聞いた3つのコートに居る生徒は一斉にボールを投げ始めた。チーム人数は七人で最後の一人が負けるとゲームセット、ボクのチームには運動が苦手な子ばかりでかなりフリだ。


 千桜さんチームは読さん曰く、『運動部の塊』と言っていたので現状で言えば負けしか見えない。ボクが本気を出せば上手くフォローはできる、だがそれは逆に危ない賭けになってしまう。女子と男子ではいくら運動部だからと言っても、基本的なスペックがまるで違う。


 さらに言えばボクが目立ってしまい、変な噂をされてしまいかねない。それだけは回避しないと後の生活に支障をきたす、ここはあっさりと負けを認める動きをしないとダメか。




「せーいっ!!」


「きゃあ!!」



 バスっ! と軽い音が聞こえた、読さんが床に倒れ込みながら避けたボールは、後ろにいた仲間にヒットしアウト。ゆっくりと立ち上がりボールを拾う読さん、それを力いっぱい両手持ちで投げ返す、しかし簡単にキャッチされすぐにこちらへ返される。


 幸い運動部とは言え女の子、投げてくるボールのスピードはそんなに早くない。ちゃんと目で追えるし避けられる、だが見る見るうちにボクのチーム仲間はやられていく。気がつけば息を切らした読さんとボクだけになった、薄らと額に汗をかくボクは突破口を探す。


 そろそろやり返さないと負けてしまう、こんなボクでも負けず嫌いなんだ。やられたらやり返さないと、読さんはもうダメかもしれない。


 そんな時だった、




 ―――危ないッッッッ!!!!




 悲鳴に近い声量でどこからか声が聞こえてきた、ボクは慌ててキョロキョロと視線を変えると、ボールが読さんに目掛けて飛んできていた。その頃には身体が勝手に動き、腕を伸ばしバレーボールのレシーブをするように前のめりに滑り込んでいく。


 パンッ!


 乾いた音と共に手首の内側にキレのある痛みを感じる、ボクはそのまま体勢を維持出来ず読さんを押し倒してしまう。床へ倒れ込んだボクと読さんを心配し、皆が駆け寄ってきた。



「大丈夫ですか!」


「はい、私は無事です。読さんは大丈夫ですか?」


「は、はい。…………痛い!」



 ゆっくりと立ち上がり、ボクは読さんへ手を貸す。しかし立ち上がろうとしたが、足首を捻ったのか直ぐに尻餅をついてしまう。



「直ぐに男性教師を―――」


「あ、待ってください。私が運びます」



 どうしてボクはこんな事を言ったのか。助けたつもりが逆に怪我をさせてしまったからか、それとも女学院ここに居る罪滅ぼしの為なのか。


 そんな事よりボクは読さんの両足の脇に腕を入れ、読さんの左腕をボクの首へ回して立ち上がる。所々で黄色い声が上がったけど今は気にしない、急いで保健室へ行かないと。



「先生、保健室へ行ってきます!」


「……わかりました。白愛さんお願いします」


「はい!」


 ボクは彼女をお姫様抱っこして、保健室へ向かった。



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