1章 8話 続ビギナー
今回は少しだけグロい表現があります。
自分の表現が拙いので、気にならないかもしれませんが……。
そしてミスがありましたのでポイントを修正しています。
朝起きるといつものエネルギー経口摂取を行う。ポイントの補充もあって今時点では58ポイントあった。
早速1-Bに転移し、リポップしたばかりの宝箱から中間マージンを頂く。
今回新たに発生した銅貨は10枚と多めであったので7枚抜くことにした。
これで俺のポケットマネーは銅貨10枚になった。銅貨の価値が未だにわからないが、10枚あれば何も役にも立たないと言うことはないだろう。
1-Bにいる2匹のゴブリンに昨日と同じ装備を作成して渡す。
2匹分で20ポイント。残りは38ポイントだ。
ゴブリンに装備も渡したことで準備は整った。
昨日の冒険者が訪れるまでダンジョンマスターの部屋で過ごすことにした。
「ねえアーロン、本当に今日も行くの?
今回はもう冒険者ギルドに報告でいいじゃない」
冒険者見習いの三人は昨日訪れたダンジョンに向かって歩いている最中だった。
ケイトは昨日のことは調査と言うことで納得したが、二日連続して訪れることには否定的である。
「いいじゃないか。
ダンジョンであることは確定してるんだ。
宝箱も周期はわからないけどリポップするのは
確実って勉強したよね」
アーロンは昨日のことで味をしめていた。ダンジョンであることがわかったので今日は宝箱のリポップを確認しに行くことに意欲的だった。
ケイトとバードマンの二人の目には、アーロンはどちらかと言うとモンスターとの戦いをしたがっているように見えた。
「でも、もし今日宝箱がリポップしていたら、
毎日通うつもりでしょ!」
宝箱のリポップの周期が短ければ、中身を手に入れるために毎日通うとアーロンが言い出すことは目に見えていた。故にケイトは今回のことに否定的なのだ。
ダンジョン発生を冒険者ギルドへ報告せずに通い続けるのは、完全にルール違反である。
「アーロン落ち着こう。ケイトも一旦俺の話を聞いて。
冒険者ギルドのルールは、
"ダンジョンがあるとわかった場合、直ちにギルドへ通達のこと"
と言うものだから、本当にダンジョンかどうか確信が
もてなかったから再度調査したと言えば冒険者ギルドには
納得してもらえるかもしれない。
だから、今日だけはアーロンの言うことを聞いてみよう。
明日も行くと言い出したらケイトと一緒に止めるから」
慎重派のバードマンが二人の間に入る。明日は一緒に止めてくれるというバードマンの意見に、ケイトは渋々合意した。
「バードマン、ありがとな。
こっち寄りの意見を言ってくれて助かったよ。
あのままだと、ダンジョンの入口まで行ってから
折り返すところだった」
仕方なく折り合いをつけてくれたバードマンに対してアーロンはそんなことを言ってしまう。バードマンからしたらすぐに冒険者ギルドに報告してしまいたいところだ。
渋々今日だけと言う名目にしてケイトを説得したのだ。
「アーロン、君はいつか大怪我するよ。
今日の調査が終わったら俺は一人でも
冒険者ギルドに報告しにいくから。
止めても無駄だからね」
「ちぇっ。わかったよ。今日だけでいいよ。
せっかくいい場所を見つけたと思ったのにな」
バードマンを不愉快にさせてしまったことをアーロンは理解していたが、ダンジョンと言う目先のにんじんを我慢できず、更なる悪態をついてしまう。それに対しバードマンは不愉快さを露わにした。
昨日は上手く行ったが今日もうまく行くとは限らない。ダンジョンとはそういう場所なのだ。
「どうしてもダンジョンに行きたいと
言うなら、冒険者ギルドに掛け合えばいい。
今回みたいな小規模なダンジョンで、
モンスターの数も少なくて弱いなら、
俺たちみたいな冒険者見習いでも
派遣してもらえるかもしれない。
そうやって根回しをすることこそが
君が一番やらないといけないことだよ」
いつも優しいバードマンから不愉快さを詰め込まれた言葉を受けて、アーロンはようやく申し訳なさを感じた。
「ごめん、今日は本当に、ありがとう。
後で冒険者ギルドに報告しに行こう。
バードマンの言う通り、ギルドに掛け合ってみるよ」
アーロンの本気の申し訳なさそうな態度に、バードマンの不愉快さも少しは晴れた。
そしてアーロンの長所はこの素直さだ。年上の人たちにはとても素直なのに同じ年のケイトとバードマンには素直でないのがあまりよくないところだった。
そうこうしてる間に三人はダンジョンの入口に着いた。
「ケイト、バードマン。
今日は本当に付き合ってくれてありがとう。
戦い方は昨日と同じでいく。
俺が前衛。二人は後衛を担当してくれ。
最初の部屋にはスライムしかいなかったから、
バードマンは最初は短剣を構えて。次の部屋では
対ゴブリン用に弓矢に持ち替えてくれ。
ケイトはライトの操作に集中して。
モンスターの数が確定したらヴォルトでフォローを頼む」
アーロンは普段はともかく、いざと言う時はとても頼りになる。指示は的確で度胸もある。こんなアーロンだから二人は見捨てずにパーティを組んでいるのだ。
そして三人はダンジョンに入っていった。
「入ってきた……」
ウィンドウに、入口から入って来る冒険者達の姿が映る。シスの言った通りだ。
三人の冒険者の内の一人は、1-Aでスライムの姿を見つけると即座に斬りかかって行った。斬りかかられたスライムの核が潰れ、辺りに飛散する。この戦士は本当に思い切りが良い。
レンジャー役の男は前回とは異なり最初から短剣を構えていた。弓ではスライムの核を狙えないからだろうか。周りを警戒しながら戦士の近くにいるスライムを攻撃している。例え相手がスライムと言えどもいい連携だと言うことがわかる。
女魔術師はライトを周りに向けて敵の数を確認しているようだ。
彼らは昨日より一匹多かったことに少し驚いているようだったが、混乱まではせずにしっかりとやることをこなしていった。
「さて……スライム4匹、無事に倒してくれるかな」
女魔術師が周辺の状況を確認し終え、スライムに向けてヴォルトを放つのが見えた。
スライムはそのヴォルトを受けて飛散した。前回とは異なりヴォルトが核まで届いたらしい。
戦士はすでに次のスライムに攻撃を始めている。レンジャーはスライムの核に短剣を突き刺すことに成功していた。
早くもスライムは残り1匹しかいない。
「昨日よりスライム1匹多いのに、倒すのが早いな。
緊張がほぐれて実力が出せているのかもしれない」
調子よさそうな冒険者達の姿に、俺が育ててやったとばかりに思わずうんうんと頷いてしまう。
そして戦士が最後のスライムの核を切り払うのが見えた。1-Aのスライムはこれで全滅させられてしまった。
データを見るとすでに経験値が4ポイント入っていた。
そして同時にダンジョンポイントが増えていることにも気づいた。
増えたポイントは2。合計は40ポイントになっていた。
スライムが4匹倒されて手に入れたポイントが2。単純に倒された数の半分なのか、スライムを召喚するときに使用したポイントの半分だからなのかはまだわからない。
だが、それもゴブリンが倒されればわかる。そう考えながら再度ウィンドウを見ると、レンジャーが短剣から弓に武器を変えていた。次の部屋のゴブリンの対応のためだろう。彼らは前回の経験を得て、更に成長していた。
三人は次の部屋に進んでいった。
「次はゴブリンが2匹だぞ。
今度こそ驚いてくれるかな」
俺はあたかも冒険者を試しているような言い方をするが冒険者たちには聞こえているはずもない。
冒険者たちは1-Bに到着すると、戦士は昨日と同じように一匹目のゴブリンにチャージした。
こいつは2匹いることに気付かずに同じ戦法をとったのか?やはり所詮見習いかと思っていたが、戦士はチャージで床に倒れたゴブリンには向かわず、もう1匹のゴブリンに向かっていた。
残りの二人がもう匹のゴブリンを指差して指示しているのが見える。
仮に指示されたとしてもすぐ行動に移せるわけではない。これは訓練の賜物か信頼の成せることか。とにかく、良いパーティだと思う以外なかった。
チャージによって倒れたゴブリンにはレンジャーがすかさず矢を射かけ、狙い通りゴブリンの首に刺さった。ゴブリンが首に刺さった矢を抜こうもがく。とても苦しそうだ。レンジャーはすでに2本目の矢を弓につがえていた。このゴブリンはもうレンジャーに倒されてしまうだろう。
戦士と向かいあっているゴブリンに女魔術師がヴォルトを放つ。ヴォルトはゴブリンの肩口に吸い込まれるように当たり、よろめいたところに駆け込んだ戦士が剣を横に薙いでゴブリンの腹が深く切り裂かれた。
ゴブリンの腹から血が出て、うわ、気持ち悪いと思い額に皺が寄った。
その後数秒もかからず2匹のゴブリンは戦士とレンジャーにとどめを刺され息絶えてしまった。
ゴブリンが倒されたのを見届け、データでダンジョンポイントを見る。
冒険者に倒されたモンスターのポイントが4ポイントから6ポイントに増えている。ダンジョンポイントは3ポイント増え、43ポイントだ。
これでダンジョンポイントの増え方は確定。召喚に使用したポイントの半分で間違いない。
俺がダンジョンの仕組みに考えを巡らせてる間に、冒険者三人は宝箱に向かっていた。彼らは昨日宝箱に罠がないことを確認していたから、そのまま宝箱を開けてしまうかと思ったがレンジャーは今日も罠がないか改めて確認していた。冒険者見習いと言え、優秀だ。
レンジャーが罠がないことを告げたのか、三人は宝箱に向かって並び、宝箱を開けた。中身がリポップしていたことを確認した三人は喜んでいた。まあ俺が少し抜いたけど。
女魔術師が最下級ポーションと銅貨を回収して小さなバッグに入れていた。
そんな中、戦士が辺りを飛び跳ね始めた。こいつは喜びを表現する方法をガッツポーズだけでは抑え切れなかったのか?
レンジャーも女魔術師もすでに警戒を解いてしまっていて、戦士が飛び跳ねる止めなかった。そして戦士がウッドアローの罠の発動床に少しずつ近づいていき、足がウッドアローの発動床を踏み込んだのを俺は見た。
壁から発射されたウッドアローが浮かれて無防備になっていた戦士の脇腹に突き刺さった。
「やった!罠にはまったぞこいつ」
俺は歓喜していた。昨日は発動することなかった罠に今日は戦士がはまった。
あの位置に罠を置いた自分の狙いは正しかったと思うと、喜びもひとしおだった。
戦士が装備していたのは革製の鎧で、前掛けと後掛けにより前後は胴体の全面が守られているが、サイドの脇に関しては何も守られてはいなかった。矢が突き刺さったのはこの場所で、運が悪かったのもあったのがわかった。
これが背中か腹であれば、矢は刺さらずに鎧に阻まれたことだろうなのに。
戦士は矢が突き刺さった部分を押さえて苦痛の表情をで横向きに倒れていった。
「「アーロン!」」
二人は同時に声を上げて駆け寄った。
「うっ……うぁっ……」
あまりの痛さにアーロンはまともに声を出せない。
アーロンの辛そうな姿を見てケイトはおろおろするだけで何もできていなかった。
バードマンはそんな状態のケイトに叫んだ。
「ポーションだ!急いで!」
バードマンに声を掛けられたケイトはなんとか正気に戻り、鞄から最下級ポーションを取り出す。ポーションをアーロンの口に近づけるとアーロンに叫んだ。
「アーロン、飲んで!ポーションよ!」
アーロンが口にポーションを近づけたのを見て、バードマンはこのタイミングでアーロンからウッドアローを抜いた。
このタイミングで矢を抜いたのには理由があった。
矢が刺さっている間は矢が血止めの役目を果たしている。抜いてしまうと血が勢いよく流れてしまうのだ。回復するタイミングで抜けば、矢を抜いた穴はすぐにふさがり血が流れだすことはない。
また、ウッドアローには返しのついたような鏃がないのも幸いであった。
返しがあると抜くときに傷を広げてしまうため簡単に抜くこともできない。
「ぐぅっ……」
ウッドアローが引き抜かれたことに更なる痛みを感じアーロンが呻く。
呻いたことによって開いた口にケイトは強引にポーションを流した。
「アーロンごめんね。
ちょっと無理やりだけどしっかり飲んでね」
ケイトがポーションを流すと、せき込みながらもアーロンはポーションを飲んでいく。ポーションを飲む度傷口は薄く光り、流れ出す血の量が減っていく。
アーロンがポーションを全て飲み干しても傷は治りきらなかった。
所詮は最下級ポーションである。切り傷であればともかく深く刺さった矢の傷までは治せなかったようだ。
傷が治らないことがわかるとバードマンはすぐケイトに伝えた。
「急いで村に戻る。
村に戻ってアーロンを癒してもらおう。
血が完全には止まってないから、早くしないと!
手遅れになる!」
二人はアーロンの手をそれぞれの肩に担ぎ、ダンジョンの出口に向かって進んでいった。
俺は逃げ帰る冒険者を見て、喜んでいたのがバカみたいになった。
先ほどまではダンジョンに来る冒険者を相手どったゲームをしている気分だった。ウィンドウ越しだったが、これほど現実的な光景を見ることになるとは思っていなかったのだ。
矢を抜いたときにぽっかりと空いていた空洞。そこから流れる黒に近い血。汗をたくさんかいて辛そうな顔をした戦士。
それを思い出すと食べたクッキーが胃から出てきてしまいそうだった。そんな中、シスからの連絡があった。
『おめでとうございますサトル様。
レベル2になりました』
しかし俺はその声に耳を貸す余裕はなかった。
10話まで後2話まできました。
1話だけ投稿してもすごいつまらないストーリーだと思っていたので、土日で合わせて1章の10話まで投稿することにしました。
途中寝てしまうかもしれませんが、もし続けて読んでおられる方がいましたら10話までお付き合い頂けたら幸いです。