2章 40話 企み
今年初の投稿になります。
今後は頻度よく投稿・・がんばりたいです。
今回はいつもより短くなっていますが・・今後は長く・・長くしていきたいと思います。
「と言うのが理由だそうだ。」
冒険者ギルドを出たサトルはシスと共に部屋に戻り、冒険者ギルドにて目撃した一部始終を伝えていた。
「それは大変なところを目撃しましたね。」
シスは話を聞き、労いの言葉をかけてからどこからともなくカップとポットを取り出し、紅茶を注ぎ始めた。
「この問題は一朝一夕で片付くものではなさそうだな。
ヒルダが戻って来るのを待ってからでないと、
何も出来なさそうか・・・。」
サトルは言葉の後に紅茶をすする。少しだけ柑橘系の香りがしてそれが心地よい。
「・・もしかすると意外に簡単に片付くかもしれません。
魔術師ギルドのマスターである、セルマ・ノルディーンは
根っからの研究家です。
冒険者ギルドのマスターの話では礼儀がなってないような
言い方でしたが、実は違うのです。」
「ほう。
と言うのは?」
「彼女は、興味を持てないことに対して単に何もする気が
ないだけなのです。」
天才となんとかは紙一重と言う言葉がある。
天才とは人として非常に付き合いにくいものなのだろう。
「随分と物知り様だな。
いつの間に知り合いになったんだ。」
「いいえ、違いますサトル様。
メイドの情報網のなせる業ですよ。」
シスが悪戯っぽく笑う。
「で、その興味ないことは何もする気がない奴をどんな餌で
釣り上げるつもりなんだ?」
「簡単な話です。
サトル様ですよ。」
「は?」
「ですから、サトル様です。」
「どういうことだ。」
「サトル様の固有魔法を餌に使います。」
言われて納得がいった。
「なるほど。
人間の、それも上級貴族しか会得し得ない固有魔法を
研究させてやる代わりに魔術師ギルドのギルド員に
言うことを聞かせろと言うわけか。」
「そういうことです。
エルフには人間の固有魔法を覚えられません。
人間の上級貴族に秘匿されている固有魔法をチラつかせば、
必ずしも食いついてくるでしょう。
更に、サトル様の固有魔法はこの世界において唯一の固有魔法です。
食いつかないはずがありません。」
そこまで言った後、シスは急に真顔になってサトルを見つめて来た。
「しかし、それにはもう1つ必要なことがあります。」
普段見せない真面目な顔をされ、緊張でサトルは唾をのみ込む。
「それは・・なんだ?」
「固有魔法が強いことを証明するんです。
言わずもがな、彼女はこの世界で最高の魔術師です。
通常の魔法より弱い固有魔法には見向きもしないでしょう。
ですから、彼女を負かせるほど強い固有魔法であることを
アピールする必要があるのです。」
サトルはそれを聞いて嫌な予感がした。
「サトル様。今日から修行です。
2日でセルマに勝てるほど強くなって頂きます。
サトル様の魔法は、現在の世界の魔法の理の外に
ある魔法です。戦い方さえ覚えればサトル様に
勝てる相手などおりません。
彼女は二日後に領都へ視察に来ることになって
いるようですから、そこまでに仕上げますよ。」
悪いことを企むシスは、とても嬉しそうな顔をしていた。




