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2章 38話 領都の食事

領都の宿での食事風景です。

話が進まなくてすいません・・。


サトルがシスを伴って食堂へ行くと、サトル達が到着した時間が遅いためいくつかの料理が出せないとのことだった。

では作れる物を見繕って出してもらえませんか、とシスが言うと店側は気持ちよく承諾してくれた。

かくしてテーブルに着くサトルだったが、給仕をしようと後ろに回ったシスを無理やり正面に座らせるのに時間を割かなければならなかった。

なんとかシスを座らせ、給仕に来たウェイトレスに酒を注文し、銅貨を5枚握らせる。

ウェイトレスは普段渡される倍以上のチップに喜び、まだ周りに他の客がいるにも関わらずサトル達のテーブルを優先的に給仕してくれるようになった。


「サトル様、渡すチップが多かったですね。

 こういうのは、少なくても多くてもよくないんです。」


ウェイトレスの態度に目ざとく気づいたシスが突っかかってくる。


「いいじゃないか。

 他のテーブルが少しおざなりになるかもしれないが、

 ほとんど食べ終えて会話を楽しんでるテーブルばかりだしな。」


実際テーブルの多くは食事を終えており、葡萄酒を片手に会話が盛り上がっていた。

そんなこんなで最初の皿が置かれる。


「申し訳ありません。すでに新鮮な野菜が切らしておりましたので、

 まだ未熟な果物を刻んだものを前菜として出させて頂きます。」


出された更に乗っているのは、白と桃色が混じった色をした果実が角切りされたものだった。透明なソースとハーブで合えてあるのがわかる。

未熟な果物と言うものも1つくらいしかなかったのだろう、サトルとシスの分を合わせても少ししか出てこなかった。

スプーンで掬い取り口に含む。果物本来の味であろう酸味を透明なソースがうまくまろやかに抑えてとても不思議な味を感じる。

急ごしらえで作ったにしてはとても出来のいいものだった。特に酸味が食欲を刺激し、1皿食べ終わる頃には更に腹が減るのさえ感じるほどだった。


量も少なく、数口で食べ終わってしまったためウェイトレスが慌てて次の料理を持ってきた。


「スープです。

 本日は品数を減らすため、スープにベーコンや野菜を入れてます。」


琥珀色のスープに角切りにされて煮込まれた野菜がたくさん入っている。

トマトの色がないミネストローネのような感じだ。

これもスプーンで頂く。

スプーンで掬うと、ベーコンの強い香りがした。

ベーコンは少し焦げ目がついていて外側がカリっとしている。

わざわざ一度炙ったベーコンを入れており、ベーコンの油も入ったので味と香りが強くなったに違いない。

野菜は形が崩れない程度に煮込まれていて、しかし歯を当てるとやわらない。とても素晴らしい料理だった。

気づくと目の前にいつの間にかバゲットが置かれていた。自身が料理にどれだけ集中していたかがわかって少しだけ恥ずかしくなった。


バゲットを手を取り契って口に入れる。普段なら水分を吸い取って飲み物が欲しくなるところだが、スープが多めだったこの料理とは相性がいい。

そのままバゲット半分くらいと一緒にスープを食べ終える。

食欲の赴くままに食べてしまったが、ふと前を見るとまだシスは食べ続けていた。シスの所作は貴族のような気品さをうかがわせる。

葡萄酒を手に取って口に入れ、ゆっくりとシスが食べ終えるのを待った。


ここで、次の料理との間が空いたので今回の街にきた理由についてシスに問いかける。


「今回ダンジョンで起きていた冒険者パーティの仲違いの理由、

 シスには見当つくか?」


「はっきりとはわかりませんが・・・。

 魔法を使える者は、選民意識が強くなります。

 この国では魔法を使える者は皆、そうでない者を

 下に見る傾向があり、それであのような事態に

 なったのかもしれませんね。」


「なるほど。

 しかし、そうだとすると魔法使いの入ったパーティは

 連携が悪く、パーティとして弱いということになってしまう。」


「単にそうではない魔法使いもいる。と言うことかもしれません。

 何にせよ推測に過ぎないのですが。」


当たらずとも遠からずのような気がする議論を少し重ねていると、ウェイトレスが次の料理を持ってきた。


「キノコと鶏肉を炒めたものにチーズで作ったソースをかけたものです。

 熱いので少し冷ましてから召し上がりください。」


皿を前に持ってこられた瞬間に熱気を感じた。

チーズは牛乳に溶かしたようで、ねっとりとした感じはなくトロっとしていた。

きのこと鶏肉は一口サイズになっており、チーズがかかってはいるものの絡めて食べるようだ。チーズフォンドゥによく似ている。

フォークできのこを刺し、フォークをまわして全体にチーズソースをまとわりつかせてから口に入れる。

溶けた熱々のチーズと水分をじっくりとため込んだきのこのうまみが広がった。


「このきのこは・・・美味しいな・・・。」


「ノースランドでのみ取れるきのこだそうですよ。

 乾燥したものを王都にも卸しているそうです。

 それほど愛されている食材のようですね。」


思わず口にしてしまった言葉にシスが返してきた。

しかし、この美味しさ。王都に卸しているのも頷ける。

ソースの量が多く、バゲットにつけて食べている内にサトルはおなか一杯になってきてしまった。

まだこれ以上出てくるのか、と若干びくびくしていると計ったかのようなタイミングでウェイトレスがやってきた。


「もしかするとまだ食べたりないかもしれませんが、

 本日のメニューはこれで終わりです。

 あとは簡易的なデザートのようなもので良ければ

 まだお出しできますが・・・。」


「ありがとう。

 デザートはいい。葡萄酒を一杯ずつ頼む。」


これ以上の食事がないことをほっとしたサトルは、葡萄酒を自身とシスに頼むとウェイトレスを下がらせた。

そして腹も満たされた後で先ほどの会話の続きを行うのだった。


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