1章 7話 ビギナー(ダンジョンマスター見習い)
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俺はダンジョンから去る冒険者パーティの後ろ姿をじっと見つめてた。
当然冒険者パーティは視線には気づかない。
そして冒険者の姿がダンジョンからなくなり、姿をデータで捉えられなくなった。
「……っはぁ。 緊張した……。
それにしても惜しかったな。
あの罠の位置、もう半歩だったのに」
気づけば息を止めてしまっていた。
冒険者の戦いの迫力をデータのウィンドウ越しで間近に感じ、緊張してしまっていたのだ。
それにしても、巧みに設置したと思っていた罠は自分の中での巧みなだけであって、大したことなかったな。
「さて、冒険者が入った結果を確認してみよう。
経験値はどれくらい溜まったのかな?」
データの機能から今回の成果を確認すると、結果は以下のように表示された。
ダンジョンに訪れた冒険者: 3ポイント(3人)
冒険者に倒されたモンスター: 4ポイント(ゴブリン1匹スライム3匹)
合計: 7ポイント
次のレベルアップまで:13ポイント
結果を見る限り、今回と同様の戦いが後2回あれば俺はレベルアップできるわけだ。正直、シスに20日もすればレベルアップ……と言われていたから、もっとかかると思っていたものの想定外のできごとに思わず顔がニヤニヤして仕方ない。
そこで、このタイミングでシスに話しかけられた。
『サトル様。
初の冒険者との関わり合い、お疲れ様でした』
「ありがとう。
20日もあればレベルアップすると言ってたから
もっとかかると思ってたけどな。
この調子だともうすぐだな」
『正直これほど早く冒険者がダンジョンを訪れるとは
思ってもいませんでした。
冒険者達は村の周辺の地図を持っていますから、
まだ地図に載っていないこのダンジョンが
判明するのは、一週間後のはずだったんですよ。
サトル様は運も持ち合わせてますね。
ところでサトル様。朗報があります』
シスに全体的にほめられたような気がした俺は気がよくなっていた。
更に朗報があると言う。とても喜ばしいことだ。
「朗報?何があるんだ?」
『本日訪れた冒険者ですが、おそらく明日も
訪れるでしょう。
それどころか、明後日も訪れる可能性もあります』
「どうして明日も訪れることがわかるんだ?
もしかして、お前が意図的にあの冒険者をここに
導いたわけじゃないよな?」
今回訪れた冒険者はこのダンジョンが2部屋の小さいものだと知っている。そして、ダンジョンにある唯一の宝箱も開けて帰ったから、明日以降はこのダンジョンには来なくなるものだと思っていた。
『今回訪れた冒険者は見習いでした。
しかしここが自然にできた洞穴ではなく
ダンジョンだと理解するほどの知識を
有していました。
ダンジョンであるとわかっていると言うことは、
宝箱もモンスターもリポップがあると
わかっているのです。
確認のために明日も訪れるでしょう。』
ここは自然にできた洞穴とは異なり、意図的に作られたダンジョンだ。それとリポップにどのような関係性があるのか俺には理解できない。
「どうしてダンジョンだと宝箱とモンスターの
リポップがあるとわかるんだ」
『それはダンジョンの特質にあります。
この世界でダンジョンとは、魔素がある場所のことを
言います。この世界のごく一般なダンジョンは
ダンジョン内の魔素によりモンスターや
宝箱が生成されたりリポップするのです』
要するに、魔素があればなんでもできる。と言ったところだろうか。
「じゃああいつらは何をもってここを
ダンジョンだと判断したんだ?」
『それはスライムの有無です。
スライムを召喚するときの説明文にも書いて
ありますが、スライムは魔素がある場所にしか
発生しないと言うのがこの世界の定説です』
「つまり、今回はスライムがいたからダンジョンと
理解したわけか。
もしスライムがいなかったら、モンスターと
宝箱のリポップによって判断するということか?」
『その通りですサトル様。
今回訪れた冒険者は見習いで、ダンジョンに訪れた
経験もなかったようです。よって定説だと知っていても
本当に正しいことであるか完全に納得していないでしょう。
よって明日もう一度確認しに訪れるのです。
参考に言いますが、ここと他のダンジョンの違いは
ダンジョンマスターの有無です。
通常のダンジョンは溜まった魔素を消費してランダムに
モンスターや宝箱が召喚されますが、ここではサトル様が
再度召喚をしない限りモンスターはリポップしません。
宝箱は最初に設定した状態に寄りますが』
冒険者見習いのパーティが明日も訪れることは納得がいった。であれば、明日のためにも準備をしなければならない。
「今日明日は続けて準備しないといけないな。
準備によっては今日以上の経験値が入るって
ことだよな……」
そして、レベル2になって美味しい食べ物をゲット。俺の妄想が膨らむ。
『はいサトル様。よく考えて準備ください』
シスの声は聞こえなくなった。相変わらず向こうから話しかけてくるときはあっさりしている。
俺は明日の準備のために、まず残存ポイントを見た。
今朝クッキーを食べるために見たときに38ポイントあったから、37ポイント残っていると思っていた。しかしポイントは40ポイントあった。想定より3ポイント多い。
「想定より3ポイント多い?
シスに尋ねてみるか……いや、嬉しい誤算なわけだし
敢えて聞かなくてもいいか」
増えた原因は冒険者との戦いにあるに違いないと推測する。
また何か聞く機会があればそのときにでも。そう考えて今シスに聞くのをやめた。
現状、夜にクッキーを食べることを考えてもまだ39ポイント使用できる。結果に、冒険者によって倒されたモンスターと言う項目があったから、モンスターを多く配置すれば今日以上の経験値を得ることができるに違いない。しかし明日訪れるのは所詮冒険者"見習い"パーティである。耐え切れずに逃げ帰ってしまうかもしれない。
毎日訪れてもらうには大き過ぎる変動はよくないだろう。こちらが、あいつらを育ててやるくらいのつもりでモンスターを準備するのがちょうどいいと思える。
溜められるダンジョンポイントの上限も30が限度ではないから、溜めてもっと別なことに使えるようにすればいい。そう考え、今回は無理のないモンスター召喚をすることに決めた。
(宝箱のことは考えなくていいから、
モンスターの数をどうするかだ。
今回より強いモンスターを召喚するのは……ないな。
ゴブリンとスライム、1匹ずつ増やしてみよう)
今日の冒険者パーティの戦い方を見る限り、不意を突かれなければゴブリン2匹と同時に戦っても平気そうに思える。特に前衛をしていたあの戦士は思い切りがよく、他のメンバーとの連携も良い。
1-Aにスライム4匹、ゴブリン2匹を召喚する。消費したのは10ポイントだ。
召喚したゴブリンに1-Bへの移動範囲を設定することも忘れない。
残り29ポイントになったが、今回はこれ以上使う予定がない。
仕方ないので、ダンジョンマスターの部屋に戻って寝ることにする。
「しかし、こっちの世界にきてから
1日が早い気がするよな。おかしいな」
俺は美味しくもないクッキーを食べながらベッドに横たわった。
こんばんは、設定厨です。
自分の小説の中ではダンジョンは魔素が発生している場所だという風にしました。他の方の小説を見ていると、設定にすごく納得がいく内容のものもありますが、せっかくの自身の小説なので新しい(?)設定を織り込みたいと思います。




