2章 29話 発見
例によって、アルファベット順冒険者の登場です。
領都レイアムのギルドマスターは、昨日行われた領都周辺探索の結果報告書を読んでいた。
冒険者ギルドは週に1度、ギルドからの依頼で冒険者に周辺の探索をさせている。探索には中級以上の冒険者を用いることになっている。基本的にありえないことだが、万一ダンジョンや今までに生存が確認されてなかった魔物がいることも考えた結果だ。もしダンジョンや洞穴等が見つかった場合は、その探索も含めての依頼になっている。よって、ダンジョンや洞穴が見つかった場合は、冒険者は中の確認をする必要があるからだ。
「北東は問題なしか。」
一枚目の領都北東側の報告書を読み終わる。
領都北東側には特に変わったことはないようで、冒険者の報告書にはモンスター数匹を討伐した。と言う内容だけが書かれていた。そのモンスターもゴブリンのような弱いものであった。
その他、南東側,南西側も同様の内容だった。これはいつもの通りであり、特に何もないと言うことは良いことであるためギルドマスターはほっとする。
しかし、3枚目の報告書まで読み終わったところで次が無いことに気付いた。北東,北西,南東,南西の4つの地域を探索したのだから、報告書は4枚ないといけないのだが3枚しかない。
すると、ギルド員が急にドアを開けて叫んだ。
「マスター!!
大変です!新しいダンジョンが発見されました!」
ギルド員の手にした報告書は一枚目の紙がめくられており、そこにはダンジョン発見と書かれていた。
話は少し戻る。
中級冒険者パーティ灰色の狼は冒険者ギルドの依頼を受け、領都レイアムの北西側の探索をしていた。
「今日は北西側だっけ?北西側の探索は初だよな。
カティ、お前が一番目が良いんだから
いつも通り頼んだぜ。」
先頭を歩いていたカタリナ声を掛けられ振り返った。カタリナは根っからの冒険者気質の探索者だ。父親も探索者をしており、子供の頃から父親の話を聞いて育った。自分も気が付いたら同じ道を歩んでいた。
周りからはカティと言う愛称で呼ばれている。少し厚手の麻の服にブーツ,ベルト,肩当が革と言う軽装で、髪の毛はブロンドでショートヘアだ。
「ヨーゼフ!
あんたはいつもそうやってサボろうとする!
これはパーティの仕事なんだから、全員でやるの!」
仕事を全部押し付けるような言い草をしたヨーゼフをカタリナが睨み、そして叱る。
ヨーゼフはこのパーティのリーダーで魔術師だ。
リーダーだが、とても緩い。そして軽い。しかし、そこがよくもありこのパーティではリーダーがこなせている。
黒い地味なローブを纏っているので地味に見えるため、余計に性格が目立つ。
「そうよヨーゼフ。クレヤボヤンスはあなたにしか
使えないのよ?」
カタリナと一緒にヨーゼフを叱ったのはヘルミ。
修道院出身の治癒術師で割と堅い。このパーティの常識人だ。
修道院で信仰を修めた者は冒険者になった時に冒険用の修道服を渡される。
青みの強い黒色で、決して地味ではないが軽く雰囲気もない。通常の修道服は肌が完全に隠れるようになっているが、動きやすさを重視して関節部分などのつなぎ目や、丈が異なる。そういう服を着ている。
フードはなく、赤みの入った茶色の髪の毛が肩まで流れているのがわかる。
「おいおいそんなこと言うなよ。
常に使い続けられるわけじゃないしな。
イーロも何か言ってやってくれよ。」
「・・・・・。」
ヨーゼフに呼ばれた男は不愛想な顔から目だけ動かしヨーゼフを見る。しかし視線をすぐに前に戻す。
もちろんその際に歩みも止めない。
イーロは全身鎧とまではいかないが、関節部だけを抜いた金属の鎧を纏っており、背中には片手,両手で扱えるバスタードソードを掛けている。
関節部は革の防具で守られていた。
「お前は何か一言でも良いから喋ってくれよ・・。」
ヨーゼフはイーロの無口さには呆れた。毎回こうであるが、必要な時にも喋らないことが多いため、このことには困っている。
「そろそろ道を外れるわよ。」
パーティは領都レイアムを西に約4時間ほど歩いた場所まで来たため、話の途中だがカタリナがメンバーに宇声を掛ける。ここからは道を外れて北に向かうのだ。
これは冒険者ギルドで決められている探索時の移動方法であり、大きく蛇行するように西側を探索し最終的に領都に戻ってそのまま冒険者ギルドに報告する方法だ。凹の字を反時計回りに移動すると思えばわかりやすいかもしれない。
カタリナを先頭に道を外れて北に向かう。
この辺りは平地であるため、魔物や動物、木などの障害物があった場合に見つけやすい。
「あれから結構歩いたが、やはり何もないな。」
パーティはあれから北に4時間ほど歩いたが、そこまで何もなかった。
これはいつものことであるから、別に何分思うこともない。
ここでパーティは休憩を取ることになった。
かれこれ半日近く歩いているため、疲労はそこそこ溜まっている。
皆平地に荷物を下ろすと、食事の準備を始める。
食事の準備と言っても、街は徒歩数時間の距離であるから、朝買ったパンと水くらいの準備しかない。
「ギルドからの依頼って、受けるの何回目でした?」
パンを千切って口に運んで食べながら、合間にメンバーに聞いてきた。
「そうだな。俺たちが去年中級に上がってからだ。
5回くらいか。」
片やパンを手に持って食いちぎるように食べながらヨーゼフが答える。
灰色の狼は、各々のメンバーはそれほど強くない。
全員Gランク程度だ。但し、依頼の丁寧な対応やギルドからの信頼をこつこつと積み重ねて、去年ようやく中級冒険者パーティに上がった。但し、もちろん中級の中でも一番下だ。
週に一度のこの探索の依頼は支払いがいい。たった1日安全に探索しているだけで銀貨1枚が支払われる。もちろん、何か発見した際には追加で支払われる。
「おかげで、そこそこの装備も揃ったよね。
イーロなんてヘヴィアーマまでは行かないけど、
ほぼ全身鎧だもんね。」
その話にカタリナが食いついてくる。イーロは当然その話を聞いても我関せずただパンを食べている。
その後、昔話について少し雑談した後それぞれ立ち上がって荷物を背負う。
「さ、日が暮れる前に探索できるだけ探索しちゃおうか。」
相変わらずの緩い感じでヨーゼフ皆に伝えると、さっきまでの疲労はどこにいったのかと言う状態でまた移動を開始した。
パーティは朝早くに街を出たため、時間はまだ昼を過ぎた辺りだった。
凹の字を描くように歩き続ける。
そこから時間が経ち、丁度北西の領の真ん中より少し東あたりについた頃だった。辺りはすでに夕暮れで、これ以上は暗くなるため休憩をするかどうか考え始めようとしていた時、先頭を歩くカタリナの足が止まった。足を止めたカタリナは前方をしっかりと見ているが、時々首を回して周りを確認している。
「カティ、どうかしたの?
何かあった?」
ヘルミに呼びかけられたカタリナは数秒同じことをつづけた後、ヨーゼフの方を向いた。
「ヨーゼフ、あそこ。あの少し黒く見えるところ。
見える?」
カタリナは、自身が黒く見えた方向を指した。
「わからないな。お前の目で見てわからないものが、
俺の目でわかるはずがない。」
ヨーゼフは目を凝らしてみたりしてみたが特に何も見えなかった。
ヘルミやイーロも見ているが、二人も何も見えないようだ。
ヨーゼフは杖をしっかり持ち、遠見の魔法を唱える。
「クレヤボヤンス。」
唱え終わった瞬間、ヨーゼフの視界が意識から一瞬離れた。
視界は今まで見えなかった場所まで見え、ヨーゼフの思う通りに移動することができる。
「んー・・これか?確かに黒いな。穴みたいに見える。」
それを聞いたメンバーは顔を見合わせた。
穴、もしかすると洞穴、最悪ダンジョンかもしれない。
その日、新ダンジョンに初めての冒険者が訪れた。
2週間も空いてしまいました。
ごめんなさい。




