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2章 24話 ダンジョン情報

ベルベットって言う言葉を使いたかった人。


「初めまして。

 私が領都レイアムのギルドマスターです。

 貴族様のお名前を伺ってもいいでしょうか。」


低めのテーブルに向かい合う形で座っているギルドマスターはサトルに向けてそう言った。

先ほどまではただのギルド員と思っていた人物だった。


「サトル・サウザンツだ。

 この領には一応旅がてら寄っている。」


ギルドマスターはサトルの名前を聞いて、表情は変えていないが少し考えを巡らせているように見える。聞いたことがない貴族の名前だからかもしれない。

それもそのはず。サウザンツは作られた貴族名なのだから。

しかしギルドマスターはそれを決して口に出すことなく会話を続ける。


「では、先ほどサトル様がご所望されていた情報を

 お伝え致します。

 中には機密になる内容もありますので、どうか

 他の方には内密にお願いいたします。

 まずレイアムに存在する冒険者の人数ですが

 約2000人程です。

 ランク別に申し上げますと、

 上級は10人未満,中級約200人,残りが下級もしくは

 見習いの者です。

 上級は全員貴族か商人の専属のような形になっています。

 実質この冒険者ギルドの主力は中級冒険者です。

 ここまでで何か質問はございますか?」


村には下級しかいなかったが、ここには上級の冒険者もいるらしい。

上級の場合は、レオンやエリスと言う女騎士と同じくらい強いのだろうか。


「特にない。続けて欲しい。」


「では続けさせて頂きます。

 クエストの傾向としては、モンスターの退治,

 皮等の素材収集,中級以上のモンスターからとれる

 魔石の収集でしょうか。

 他にも、個別依頼と言うものがありまして、

 先ほど見ておられた掲示板に貼られているものが

 それにあたります。」


魔石。

知らない単語が出て来た。詳しくは聞きたいが、モンスターからとれると言うことであれば、シスに聞いたほうが早いかもしれない。そう思えば先ほどからシスがいない。いつもの通り買い物だろう。

会話を進める。


「ダンジョンに関するクエストだと、どんなものが

 あるんだ?」


「この領には2つほどダンジョンがありますので、

 その2つのダンジョンについてですと、

 先ほどの魔石収集,モンスターの退治,

 他にはダンジョン内で入手したアイテムの売買

 と言ったところでしょうか。

 ダンジョンだと、宝箱が自動で復元しますので

 クエストがなくても冒険者はダンジョンに

 臨みますね。」


領内にあると言う2つのダンジョンは、つまるところライバルだ。

そのライバルに圧倒的に負けているところが1つある。それは魔石の産出だ。

サトルが自身のダンジョンで今まで見て来たモンスターは倒されてもただ消えるだけで魔石など出さなかった。

しかし他のダンジョンでは魔石が出ると言う。これは圧倒的に負けている点だ。

それ以外では、今後ダンジョンを様々な方面に成長させることでこちらのほうが良い点が多くなる予定である。例えば鉱脈の設置のような手をまだ余してある。


「最後に、最寄りのダンジョンはここから

 どれくらいの距離にあるんだ?」


「そうですね。近い方は冒険者が歩いて半日程の距離です。

 遠い方は丸一日歩いてたどり着くかどうかと言う距離ですね。」


これで情報は全て揃った。

領都付近でダンジョンを作る上で、最小限必要な要素だ。


「ありがとう。依頼することになったら、

 是非また寄らせてもらうよ。」


そう言って立ち上がる。


「この程度であれば、いつでもお寄りください。

 サウザンツ様。」


頭を深く下げて礼をしてくれるギルドマスターに再度お礼を言ってから、サトルは部屋を去る。

部屋を出たサトルの歩く速度が少し早い。次にやることは決まっている。シスを見つけて魔石についてのことを問いただす。


シスの行きそうなところを考えてみると、今までの傾向から布や革関連の服飾関係の店だと思える。

有名な店であれば、大通りを歩いていれば見つけられるだろうと思い、冒険者ギルドを出て領城へと向かう大通りをそのまま歩き続けた。

領都に向かう途中で知り合った商人から聞いた話の通り、大通りにある店は全て立派なものだった。

例えば武器屋だが、村にあったものでもっとも効果だったのは鉄製の武器だったが、ここでは魔鉄と呼ばれる魔力を含んだ鉄で作られた武器があったり、真銀と呼ばれる鉄より硬い見た目が銀の物もあった。


食事ができる店も多くあり、外から見ても中はとてもキレイでお洒落であることが見て取れるほどだ。

これは冒険者には似合わないため、冒険者用の店はおそらく大通りにはないのかもしれない。

しばらく歩いて服飾の店を見つけた。村では服飾だけの店はそれほど需要がなかったかもしれないが、領都であればこれくらいの店の1つや2つあってもおかしくないのだろう。

中を覗き込んでみると、綿の服等が色や柄違いで数多く並んでいる。商人などの着るような服は置いてなかったので、貴族御用達の店であることがわかる。

中に入って服を1つ2つ手に取って見てみると、刺繍や装飾がとても凝っている。サトルが着ている服のほうが、精度や装飾に置いて上であると思われるが、それでも既製品でこれだけの物を作っているのは流石だと思えた。

店の中には他の貴族もいて、たまにサトルの方を見たりはしている。店員は全て他の貴族の相手をしていたためサトルは話しかけられることはなかった。


中にシスもいなかったので、そのまま店を出る。

更に歩いて領城との距離が半分くらいになった頃、布製品の店を見つけた。少し中を覗き込むと、そこには熱心に品物を見ているシスがいた。

行動がわかりやすいおかげで見つけやすくて助かる。


「シス。」


後ろから声をかけると、購入予定らしい布を手に持ったシスが振り返った。


「サトル様。ギルドでの用事は終わったようですね。」


「ああ、情報が揃った。戻るぞ。」


店を出ようとしたサトルに、シスが手に持った布を押し付けるように渡してきた。


「サトル様、これを購入してください。」


布は2種類あり、赤と青に染色されたベルベットだった。これがあれば、サトルの服のバリエーションを更に増やすことができるのだろう。

少し値が張ると思えたが、服の全てをシス頼りになっているサトルはシスの願いを無下にすることができず、布を持ってカウンターに向かう。商品をカウンターに置くと、店員が値札を確認して値段を教えてくれる。銀貨2枚だった。

布の量がそれほど多くないこともあってか思ったより安かったので驚いた。シスは値段のことを考えた上で商品を探していたのだろう。

革のバッグから銀貨を取り出して渡す。店員が買った商品を薄い布1枚で出来た袋のようなものに入れて渡してくれた。

その袋を持ってシスの元に行くと、シスが袋を受け取り中をもう一度見る。そして、


「サトル様。明日の服は楽しみにしてください。」


シスの声が多少喜んでいるように聞こえた。

シスの方を見ると、シスは顔に出さずに喜んでいるように見えた。


約一週間ぶりの更新です。

題名詐欺になってしまいそうなダンジョンとは無関係な話が続きましたが、次話からダンジョンの話に戻ります。


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