2章 23話 ギルドマスター
情報収集が大事であると、村で経験したサトルは情報収集のために冒険者ギルドに向かいます。
大通りを歩いていると、武器や防具を身に着けたいかつい冒険者たちが増えて来た。冒険者ギルドが近づいている証拠である。
少し経って人だかりの出来ている大きな建物が見えて来た。集まっている人たちは漏れなく冒険者だ。村で見た冒険者とは違い、しっかりとした武具をつけている人たちが多いことからランクの高い冒険者がいることがわかる。
冒険者ギルドの前に着く。建物はとても大きく、ちょっとしたビルディングのようだった。
入口から中を覗き込むと、入口を入って正面に冒険者達が列を作っている。入口の正面がクエスト用カウンターであるのはどこでも変わらないらしい。
中に入って周りを見渡す。
村の冒険者ギルドを更に広くしたような感じで、正面のカウンターではギルド員が五名ほど受付をしている。
そのうち一人は男性で、残りは若い女性である。男性のところだけ列が異様に少ない。
こんなところまで村と一緒である。
入って左側は、依頼書の貼ってある看板とギルド員一人だけが受付をしているカウンターがあった。
この辺りは少し村と違う。依頼書に近寄って見てみると依頼者は貴族か商人かほとんどで、素材の収集や希少アイテムの取得が多いようだ。
中には、家庭教師の依頼と言うものもある。子供の相手をさせるのか、教えさせるのか。
依頼書を見ていると、右の方からじっと見られているような気配を感じた。気になってそちらを見てみると、依頼書のカウンターにいるギルド員がこちらを細めでじっと見ている。怪しい人物を疑いの目で見ているような目だ。すでにこちらが見ているにもかかわらずその目をやめないのは、本気で怪しんでいるのかもしれない。
「何か?」
ずっと見られているのもいい気がしないので、声を掛ける。
すると、びっくりして目を細めるのをやめ、手をパタパタと振り始めた。明らかに焦っている様子だが、怪しすぎて仕方ない。
「もし気になるようなことをしていたのなら、
教えて欲しいんだが。」
数歩近寄ってからギルド員に言うと、
「ああああ、いえ、、その、、、お、、あた、、私は、、
最近ここに、、冒険者ギルドに勤めましてですねはい、、、」
どもり過ぎてやばい。
「その、、め、、目も、、わる、、くて、、、、
へ、、細い目で、、、見てしま、、うことが、、
多くて、、、」
たどたどしい言葉から察することが出来た。
つまり、この子は最近冒険者ギルドで働きだした。で、目が悪いため細い目で見てしまうからよく誤解を招くと言うことなのだ。
そう言えば、この世界にはメガネがない。目が悪い人たちはさぞ苦労していることだろう。
ガラスもほとんど普及してないようだが、もしメガネが存在すればガラスの需要も上がるかもしれない。
「そうか。わかった。
大変だな。」
それだけ声を掛けて離れると、はいっっすいませんっっ。と勢いよくおじぎするのが見えたが、放っておくことにした。
一応チラと名札を確認すると、カレン・グラシアと書いてあった。貴族なのにこのような仕事をしていると言うことは、貴族の家督を継げない者だろう。貴族名をはく奪されてないと言うことは、まだ若いか、直系に連なっているかと言うことかもしれない。何にしろこんなところにいると言うことは相当な問題を抱えていることがわかる。
カレン・グラシアのことは忘れて再度依頼書を見てまわる。
他の物を見ても、少し変わったものがあるくらいで概ね素材の収集と希少アイテムの探索であることは変わりない。
「貴族様。もしかして、依頼をされに来られましたでしょうか。」
後ろから声を掛けられた。
貴族と声を掛けられると自分ではない気がするが、こんなところに来ている貴族の様な人物はサトルしかいない。
「いや、今日レイアムに着いたばかりで。
情報収集のために来たんだ。」
振り返って伝えると、話しかけてきた人物は通常の女性ギルド員の制服とは違ったパンツスタイルのスーツのような服を着た30代くらいに見える女性だった。
「どんな情報をご所望ですか?」
「そうだな。所属している冒険者のランクや人数、
他にはクエストの傾向や、周辺のモンスターに関する
情報ももらえるなら欲しい。」
「わかりました。
ここでは何ですので、個室へどうぞ。」
声をかけてきたギルド員はそう言って先に歩き出す。ついてこいと言う意思表示だ。
サトルは後について歩くと、このギルド員を眺める。
30代くらいの年齢に見えるが、後ろ姿は20代でも十分に通じる。
体にはやわらかそうな感じより、筋肉がしっかりついてるように感じられるので、おそらく元冒険者なのかもしれない。
ギルド員は階段を上り、廊下を歩いていく。その間にいくつかの部屋を通り過ぎ、何人かのギルド員とすれ違う。
他のギルド員は率先して頭を下げ、このギルド員はそれを見た後で軽く会釈をする程度だ。もしかすると、冒険者ギルド内でも相当職位の高い人物なのかもしれない。
「ここです。お入りください。」
ギルド員があるドアの前で立ち止まってこちらを振り返る。
ドアには、ギルドマスターの部屋と書かれていた。
地味な巨乳っ子が出てくるのって王道ですよね。多分。




