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2章 20話 来客

初めてのネームド商人の登場です。


旅中の食事は簡易的なものだった。

だが御者がわざわざパンを軽く火で炙ってくれて、スープは温め直し、果物まで準備してくれたのでとても満足のいくものだった。

冒険者の移動なんかだと、ほとんどの場合が保存の効く固いパンで終わってしまうらしい。スープのような液体は荷物としてかさばるので準備しないほうが大半とのことだ。


食事を終え、少ししてから馬車が出発すると、今度はシャドウウィップの複数操作や長さの調節に重点を置いて訓練を始めることになった。シス先生のスパルタはとても激しくて、休憩時と寝る時以外決して休ませてくれない。

先ほどまでの訓練で2本までは問題なく操作できるようになった。なので、そこから先と言うわけだ。

訓練の仕方は、シスが石を投げるのでそれをシャドウウィップでキャッチすると言うものだ。

言葉だけで判断すると簡単に思えるかもしれないが、とても難しい。なぜなら、シスがいくつの石を投げるかわからないのだ。

今回の訓練の判断としては、不必要な数のシャドウウィップを出すのもNGのようだ。


まず最初に、シスが1つの石を山なりに俺に向かって投げて来たので、シャドウウィップを1本だけ出して見事にキャッチ。集中もできていたようで、器用に石に巻き付き受け止めている。そして、シスの足元にある籠に入れた。

次に2つ同時に投げてくる。軌道は山なりにはなったものの、片手で投げたため1つは俺の方には向かってきてはいない。シャドウウィップを2本出すが、2つ同時に操作とはいかず最初は1本だけが先に動く。

最初の1本が石に巻き付くか巻き付かないかくらいで、2本目が動き出し石が地面に落ちる寸前で2つ目も受け止めた。その時、シスの眉毛がピクと動いた。しかし何も言わない。

シャドウウィップで掴んだ石を2つ、籠の中に入れる。

そしてシスがまた籠の中に手を入れる。おそらく今度は石3つだろう。

シスが石を空中に放り投げると、石が3つシスの手から飛び出て来た。山なりにはなりそうだが、山の高さが先ほどより低い。

シャドウウィップを3つ出す。しかし、先ほどと同様に1つしか動かせず、2つ目をなんとか巻き付けた時には3つ目の石が地面に落ちてしまっていた。


「サトル様?」


いつになくシスの声が冷たい。

思わずサトルは黙り込んでしまう。


「振動を吸収させる操作の時には、2つ同時に動かせてましたよね?

 どうして急に1つずつになってるんですか」


「いやぁ……なんでだろうなぁ……。

 止まっているものに振動を伝えないように調整するのと、

 実際に物を捕まえるように動かすのは全く異なる内容で

 難しくてな……」


「そうですか。では次からは、"必ず"2本同時に

 動かすようにしてください」


そう言ってシスがまた籠から石をつかんで宙に放り投げる。

2つの石が飛び出て来たため、俺は焦ってプを2つ出して石に同時に巻き付ける。1つずつ動かせばもっと精度はいいのだが、言われてすぐまた同じことをやったら今度はどうなるかわからない。

しかし、片方はかろうじて巻き付いたものの、もう片方は掴み取ることさえできなかった。

完全に失敗であるが、前回とは違ってシスは何も言わない。

つまり、石を落さない訓練ではなく、2つ以上を同時に動かす訓練なのだ。

そうと分かり、俺は同時に動かすことだけに集中した。

まだ2つ同時に動かすのも上手くいってないのに、投げる石の数が1~3でランダムで変わる。

これは集中力を途切れさせないためだろう。

こうしてシャドウウィップを同時に動かす訓練を開始して数十回目。

見事に同時に石を2つキャッチすることができた。


「お、やったぞ!」


無意識だが、小さくガッツポーズした俺をシスが嬉しそうにほめてくれた。


「サトル様、おめでとうございます。

 流石です。。並の魔法使いであったなら、

 出来るようになるのに1週間はやり続けなければ

 ならなかったでしょう」


1週間って……俺はどれだけスパルタなことをされていたんだろうか。

だが褒められて悪い気はしない。特にシスは黙っていれば普通に美人さんであるのだ。美人に褒められれば嬉しいに決まっている。

おかげで、この後の3本,4本同時に操作する訓練にも身が入った。


夜になると御者が馬車内に寝床を作ってから食事の準備を始めた。

休憩の度に出してくれたテーブルを今回も出してくれたので、椅子に座って食事ができるのを待っていた。

その時、暗闇の中に赤い点が見える。どうやら明かりのようだ。

赤い点がだんだん近づいてくると、馬の蹄が地面を叩く音も聞こえてくるようになった。音はゆっくり聞こえるので、商人かあるいは同じように旅している貴族の馬車であろう。

御者が食事を作るのを一旦止めて、向かってくる馬車に備える。

チラとシスの方を見るが、シスは全く慌てもしていないため敵対する相手ではないことがわかった。


馬車は近くで止まり、中から商人と見て取れる恰好をした恰幅の良い中年男性が降りて来る。


「やあやあ。

 私、領都レイアムと鉱山を行き来する商人の

 マティアス・ヴァレーと申します。

 私共は御者と私の二人きりです。

 良ければ馬車を近くに止めてさせて

 頂いてもよろしいでしょうか」


商人は恭しく頭を下げてそう言った。


土曜日はいつも朝に更新していたのですが、今日は朝から出かける用事があったのでこんな時間になってしまいました。

明日は朝早くに更新したいと思います

(用事があるので)

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