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2章 10話 食事

すいません。世界観の話は次かその次に持ち越しです。

今回と次の話は食事をメインにしようと思っています。


「どうぞごゆっくり」


部屋に案内してくれた店員は部屋から出て行った。

足音が部屋から遠ざかったのを確認してから、ヒルダと会う方法について考えた。


まず俺からヒルダに会いに行く方法について考えてみる。

直接部屋に会いに行ったとしても、会うことはできないだろう。先ほど見た感じだとレオンと同室だからだ。

では別の方法だ。この宿内にいることはもわかっているのだから、どこかでヒルダが来るのを待つのがベストだと考えられる。

一番遭遇率が高そうな場所は……食堂か。村の中では高級の宿とは言え、規模は小さい。ロビーは受付を済ますだけの場所であったし、時間を潰すことができる場所は部屋以外だと食堂以外ないのである。よって夕食にはまだ早いが食堂に行くことにした。お茶くらいを飲むことはできるだろう。


そう思って部屋を出る。

階段を下りて1階に降りると、受付をしてくれた店主がまだ1階にいた。

そちらの方に歩み寄ると、気づいた店主が話しかけてきた。


「お客様、どうかされましたか」


「ああ、夕食前に少し喉を潤したい。

 お茶か何か飲めるか?」


「食堂で朝,夕の食事時以外はお酒等が

 飲めるようになっております。

 入口から入って左側が食堂になっております」


店主は必要なことのみを教えてくれた。

もし今会えなかったとしても夕食後にに会える可能性もありそうだ。

ありがとうとだけ言って受付を離れる。

食堂は50人は入るだろう広さだったが、この時間は二人掛けのテーブル席が2つほど使われているだけだった。

カウンターの椅子に腰をかけると食堂にいた店員が近寄って来る。


「いらっしゃいませ。何をご所望でしょうか」


「酒以外で喉を潤すものを何か頼む」


流石に酒は控えたいので、酒以外で何か頼むと店員は少し考えた。


「では……果実水はいかがでしょうか。

 今朝市場で購入した果実を朝から水に

 漬けております。酸味もついてさっぱりした

 味わいです」


「ではそれを」


店員はかしこまりました、とカウンターの奥の部屋に消えていく。奥の部屋が厨房になっているのだろう。

少し待つと、店員が木製のカップをトレイの上に置いて持ってきた。

隣まで来ると、カップを前に置いてくれる。


この村では木製のカップが当たり前のようだ。もしかしたらガラス製品はあってもそこまでこの世界に普及していないのかもしれない。

部屋も外からの採光を取り入れたりしているわけではなく、明かりはライトの魔法だった。ここに所属している店員の誰かが生活魔法が使えるとかそういうことなのかもしれない。


木製のカップを手に持って口元に近づけると酸味の効いたスッとする香りが感じられた。

少し喉に流し込むと口の中が洗い流されたようなさっぱりとした気持ちになる。

カップをテーブルに置き、先ほどのヒルダについて思い返す。

前回ダンジョンで会ったヒルダは鎧姿だった。白銀のライトアーマを身に着けてフードを被った姿だったので、当初は女性であることさえわからなかった。

しかし先ほど会ったヒルダは私服だった。ショートパンツにシャツ、その上にジャケットを羽織っていた。村で女性は見てきたが、可愛らしい姿をしていると感じたのは酌婦くらいであった。

よってヒルダの姿がなおのこと可愛く感じられる。


そんなことを考えながら、たまにしかないゆっくりとした時間を過ごした。

残念ながら夕食までの間にヒルダが来る様子はなかった。

結構な時間が立ち、カウンターでゆっくりしていると店員が近づいてきた。


「お客様、もうすぐ夕食の時間帯です。

 このまま食事にすることも可能ですが、どういたしましょう」


「頼む。メニューはあるか?」


メニューを頼むと、店員は後ろ手に持っていたメニューを差し出してきた。


「お食事はコースになってしまっているので、

 1種類しかありません。

 飲み物は、先ほどの果実水に果実酒、葡萄酒、

 後はハチミツ酒もございます」


「では果実酒を」


「了解しました。順にお持ち致します」


店員が頭を下げて厨房に戻る。

そのまま料理を待っていると、宿に宿泊しているだろう客がまばらに入ってきた。

多くは商人のようだ。恰好を見るとわかる。

サトルやヒルダのように、綿のシャツを着ているような貴族はわずかで、2・3人見えるだけだった。


カウンターには一人で来ているらしい客が数人座っていたが、お互いが話しかけるようなことはない。

高級な食堂だとこういうことが当然なのだろうか。

そのまま少し食堂内を眺めていると、店員が料理を運んできた。


「前菜でございます。

 すでにソースをかけてありますので、

 そのまま召し上がり下さい」


木製の皿と木製のフォーク、果実酒をテーブルに置く。

先ほどのカップもそうだが、食器は木製なのだけど今までに通った居酒屋の木製品とは異なり高級感がある。

木の材質も違いそうだ。

フォークを使いサラダを食べると、かかっているのはドレッシングだった。

正しくは、お酢にオリーブオイル、塩やハーブなどを混ぜて作られたものだった。現代の味にとても近く、食べやすい。


思わぬところで現代を感じられ、思わず嬉しくなってしまう。

そんなときに食堂の入口からヒルダとレオンが現れた。目線だけ動かして確認すると、ヒルダも一瞬だけ俺を見たが何も声をかけてくる様子はない。

そしてそのまま奥の二人掛けのテーブルにレオンが先に座り、ヒルダも次いで座った。

ここでは声をかけられる感じではないため、知らない振りを装った。


そんなことより、今は次に出てくる料理のほうが実は気になってたまらなかった。


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