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2章 9話 遭逢

次の回で、この世界の説明をヒルダがしてくれる予定です。


ヒルダが救出され、無事ダンジョンを出て行くのを確認するとほっと一息ついた。

ヒルダを殺す意志を持っていないのだから、間違いなくこのダンジョンでは安全なはずなのだが、それでも気にしてしまっていた。


「サトル様」


「レベルアップだな」


後ろに控えていたシスが声を掛けてきたのを遮るように呟く。

今回手に入る経験値は前回を大きく上回るだろう。であれば、レベルアップも当然と判断した。

早速成果を確認する。


 ダンジョンに訪れた冒険者:390ポイント(12人)

冒険者に倒されたモンスター:395ポイント

 冒険者の吸収      :  0ポイント

           合計:785ポイント

   次のレベルアップまで:915ポイント


ダンジョンに訪れた人数は前回より少ないが、Cランク級が二人いたことで、ポイントが高い。

また、コボルトリーダー,オーガキングが倒されたことでモンスターからのポイントも前回より多かった。モンスターからのポイントを見ながら、オーガキングから言われた言葉を噛みしめた。

そして、今夜村に行くことを決めた。


「シス、今夜村に行く。回収した銀貨を鞄に入れておいてくれ」


「もうすでに準備出来ております」


村に行くためのお金のことをシスに告げるまでもなく、準備をしてくれていたようだ。革の鞄を差し出してくる。

先日買った革の製品の端材で作られた、とても小さい鞄を渡してくれた。

そう言えば、麻の鞄を見て嫌がっていたな。確かに今の綿の服を来た恰好に麻の鞄はちぐはぐである。

鞄の中を覗くと銀貨は10枚入っていた。

毎日、サトルが知らない間に宝箱から回収しておいてくれたのだろう。とても助かることだ。

シスに行ってくる旨を伝えると、


「サトル様、今後自身のことは貴族だと思って行動してください。

 流石にその服装で旅人とは信じてもらえませんから。

 それに、貴族であることのほうが何かといいことも多いです」


そう言って、深くおじぎをして行ってらっしゃいませ。と見送ってくれた。

今回はついて来ようとしないのが気になるが……。


革の鞄を肩にかけて、村に行く。

前回同様、村の正門から入るのだがもう俺は旅人ではない。いつまでもこの方法で村に入るのはきっと厳しいだろう。今度は新しい方法を考えなければならない。


正門につくと、門兵はいつもと雰囲気が違った。

何かあったんだろうか。

門兵に近づいて、何かあったんですか。と話しかける。


「ええ、領都からきた近衛騎士の方々が聖騎士様を

 救いにダンジョンに行ったようでして。

 聖騎士様が無事救出されたと言うことまでは噂で

 聞いたのですが、心配で」


俺が貴族に見えるようだ。実際は貴族扱いと言うことにしているのだから見えなくては困るのだが、門兵の掛ける声も丁寧な言葉になっていた。

ヒルダはこの村に来てわずかだと言うのに、こんなにも村の人に心配されるほど信用を置かれているのだろうか。

それとも、村にとって聖騎士と言う存在自体が有難いのだろうか。

ありがとう。とだけ伝えるとそのまま村に入る。

今回はヒルダの噂のおかげですんなり入れた。


村に入ってヒルダに会う方法を考える。

間違いなく一番手っ取り早い方法は、ヒルダが泊っている宿に直接行くことだ。

ヒルダは領主の娘と言う話だから、おそらく村で一番高い宿に違いないだろう。

つまり、大通りをまっすぐ行ったところにある。

歩いていると、村人の視線が自分に向いているのがわかる。前までは見向きもされなかったのに、変わったな。と自分の立場が変わったことを理解した。


村一番の宿屋の前にたどり着く。

この村は木造りの建物が多いが、この宿屋は冒険者ギルドと同じく石を積み重ねて作られている。

ドアが開けっ放しになっている入口から入ると、とても清潔そうな服装に身を包んだ老年の店主が近づいてきた。


「貴族様、お泊りの予約でございますか」


店主の背筋は伸びていて、とても老いを感じさせない。とても美しい所作である。


「ああ、1日頼む」


サトルは店主の方を向いてただそれだけ告げる。貴族として生きてきたことがないサトルは、多くを発すればメッキがはがれてしまう可能性があるため、話すワードをできるだけ減らした。


「では、こちらにお名前を記載下さい」


差し出された宿帳には、すでにこの宿に泊まっている人物の名前が書かれていた。

宿帳を軽く見ると、ヒルダ・ヴィズダム・アイスの名前がある。その下にはレオン・ヴィズダム・アイスと言う名前とエリス・アンバー・ソイルと言う人物の名前も載っていた。

レオンと言う人物はヒルダと同じ貴族名、名誉名でヒルダの家族だ。ダンジョンにヒルダを助けにきた人物で間違いない。であれば、あの時いたもう一人のC級のステータスの持ち主がエリスと言う人物になる。

俺は自身の名前をその下に記載する。

サトル・サウザンツ。この世界に来て決まった自分の名前。まだ書きなれないその名前をぎこちなく書く。

自身の名前をぎこちなく書くその姿を店主が少し不思議に見つめているが、敢えて何も聞いてこない。

そういうところを疑問に感じても、プライベートを追求しないのが高い宿のサービスでもあるのだろう。

書き終えたサトルのサインを見て、


「サトル・サウザンツ様ですね。

 ようこそ、いらっしゃいました。

 当店は1泊銀貨1枚になります。

 食事は別になりますが、サービスは

 全て含まれております。

 どうぞごゆるりと」


店主がそう言うと、小間使いではなく店主と同じような仕立ての服に身を包んだ店員が案内してくれる。

この宿屋は3階建てで、俺は2階に案内された。1つ目の部屋のドアと2つ目の部屋のドアの間はとても離れていて、1つ目の部屋がとても広いことがわかる。店員が1つ目のドアを通り過ぎ、俺も続いて通り過ぎようとした時ドアが開いた。

反射的にドアの方を見ると、ヒルダが出てきた。声をかけようとしたが、ヒルダの後ろにもう一人人物がいるのを見てやめた。


「失礼しました」


ヒルダがこちらを見ながら軽く会釈して、ドアを開けて驚かせたことを軽く謝罪して隣を通り過ぎる。

その後を追うように部屋から出てくる人物。この男がレオンだろう。ダンジョンで見た時は鬼神もかくや……と言った感じだったのでよくわからなかったが、ヒルダよりも10近く離れているように見える。

じっとレオンを見てしまったせいで、レオンがこちらに疑問を投げてきた。


「何か?」


「いや、失礼」


それだけ言い、通り過ぎた。

危なかった。ヒルダの家族と言うことで少し気になって、正面から見続けてしまった。

そしてあの風格。まさしく貴族と言った感じだ。ダンジョンでのあの戦闘とは全く違う。

ヒルダが俺を認識しつつも声を掛けなかったのは、このレオンに知られては困るからかもしれない。

では、後でどこかで鉢合わせすればいいのだ。今回のこの応対がむしろ会話をするきっかけになったと言えば、むしろ出会いの説明もしやすいかもしれない。

そう思うことにして、店員に案内され2階の一番奥の部屋に入った。


レベルアップのポイント内訳

 レオン,エリス=100×2=200

 近衛騎士9人=20×9=180

 騎士副隊長=10×1=10


 コボルト10体=5×10=50

 コボルトアーチャー6体=15×6=80

 コボルトリーダー1体=75×1=75

 オーガ5体=10×5=50

 オーガウォリア2体=20×2=40

 オーガキング1体=100×1=100

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