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2章 8話 救助

今回は少し文字数が少ないです。

次の話との切れ目の問題なのですが、増やそうと思ってがんばったつもりですが・・・・。

なかなかうまくいかないものですね。


オーガキングの体が上下に分かれ、上半身が地面にズレ落ちた。

木の幹ほどもある体を断つほど鋭い剣筋だった。


レオンがオーガキングを倒すのを見届けた騎士達が歓声をあげる。士気が更にあがったことは間違いない。騎士達は残党のオーガ達を駆逐し始めた。

全てのモンスターが退治されるとヒルダの副隊長をしていた騎士がレオンの元に近寄って来る。


「ヒルダ様が落ちた落とし穴に案内します」


レオンは無言で頷く。

副隊長だった騎士について行くと、コボルトの伏兵がいた場所で止まった。


「ここです」


騎士が指さした場所は、1段下がった穴から更に深い落とし穴だった。

中を見ると、相当の深さがあることがわかる。


「ヒルダ! いるか!」


レオンができるだけ大きな声で落とし穴に向かって叫ぶと、かすかに兄さん無事よ。と声が返ってくるのがわかる。

後続のサポートをしている騎士に、今回のために準備したロープを持ってこさせると、鎧を外し自身の体に巻き付けた。そして、穴に入るためにロープを支えているように指示する。

レオンが穴に入ると、騎士達は少しずつロープを下していく。そんなに早く進んでいるわけではないが、あまりに穴が深いため一向に進んでいるように思えないほどだ。


そうこうしている間に、下の階の部屋に入ったようでヒカリゴケに照らされたヒルダがこちらに手を振っているのが見えてきた。元気そうで安心したのだが、なぜ衰弱してないのかが不思議で仕方なかった。

レオンは無事地面に着くと、自身に巻いたロープをほどいてヒルダをきつく抱きしめた。


「ヒルダ、良かった」


それだけ言う。ヒルダもレオンを抱きしめ返してくる。

ヒルダはレオンの胸に頭を預けながら、


「兄さん、ごめんなさい。心配かけました」


そう言うと、レオンはいいんだ。と小さく呟いてしばし再会を喜びあった。

少しして二人は離れて、ヒルダが鎧を脱いだ。ヒルダの体格が小さく軽いと言っても、流石に鎧を装備した状態で引っ張り上げるのには無理があるからだ。

ヒルダにロープを巻くと、ロープを強く二回引き、引き上げの合図を送った。

ロープが少しずつ引っ張り上げられ、ヒルダの体が空中に浮く。そして部屋の天井にある穴に消えるのを見届けると、次にロープが降りて来るまでその部屋を観察することにする。

ヒルダがいた部屋を見回すと、ヒカリゴケに照らされている程度の明かりで見る分には何も見当たらない。

ライトを唱えて、更に部屋を照らすがやはり何もなかった。

この部屋の目的は、落ちた冒険者を衰弱死させることだったのだろうか。そう考えるしかない。

モンスターがいなかったことが何よりの幸いだと思った。


ロープが天井から降りて来たため、今度はヒルダの脱いだ鎧をロープに巻き付ける。

再度二回引くと、今度は引っ張り上げる対象が人ではないため、早いスピードで引っ張り上げられていく。


今度は、ロープが降りてくるまでそれほど時間はかからなかった。

レオンは自身の体をロープで巻くと、同じように引っ張り上げる合図を送る。

自身の体が空中に浮くと、上から部屋を眺める。

この部屋は妹を衰弱死させるための部屋であろうはずなのに、妹のあまり衰弱していない姿とのギャップを感じ、違和感が残った。


引っ張り上げられ穴から這い上がると、エリスとヒルダが抱き合っていた。二人とも涙を流して喜んでいる。仲が良い話は聞いていたが、いざ目にするとなるととても微笑ましい光景だった。


レオンの撤収の声で、全員がダンジョンから引き上げる。

ダンジョンから出る寸前、再度レオンはダンジョンを見た。そして前を向くと二度とダンジョンの方には向かなかった。




村で一番の宿屋でレオンとヒルダがテーブルを前に向かい合っている。

冒険者ギルドへの報告はエリスが代わりに行ってくれている。


「レオン兄さん。私、体がまだ万全ではないから数日村に滞在したいのだけど……

 いい?」


捕まってた自分がこんなことを言うのは申し訳ない、そんな気持ちを込めてヒルダが伝えてきた。


「ああ、村には三日ほど滞在しよう。

 エリスも聖騎士の仕事でここの報告を王都に

 しないといけないようだしな」


二日ほどダンジョンに閉じ込められていた妹に無理をさせるようなことはしない。

そう思ったレオンは三日間の滞在を許可した。

ヒルダはサトルとまた会う期間を三日ほど確保できた。しかし、たった三日だ。それ以上経てば、ヒルダは領都に戻らなければならなくなる。

その後は王都で聖騎士としての仕事が待っている。後3か月の聖騎士への従事が終わるまで会うことができなくなるのである。


ヒルダはサトルにとあることを伝える気でいた。


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