2章 7話 速攻
今回はレオンとエリスの戦いの回です。
レオンとエリスの強さと際立たせているつもりです。
騎士から情報を手に入れたレオンとエリスは、お供の騎士,そして村に滞在していた騎士を連れてすぐにダンジョンへ向かった。疲労は溜まっているがそのようなことを気にしている暇もない。
ダンジョンは村の森側の門を出るとすぐとのことだ。早歩きで移動し、数分と経たずにダンジョンが見えてくる。森に面している岩山の壁にある洞穴を騎士に示されると、レオンとエリスはすぐさま構えをとった。
「ここからは遅い者は置いていく。
ついて来れる者だけついて来いっ!」
そう言うと、レオンが駆けだす。罠さえも気にしない勢いだ。エリスもレオンに続いて駆け出していく。
あまりの行動の早さに、出遅れて騎士たちも駆け出した。
間違いなくこのようなダンジョンの攻略の仕方は初めてだろう。
レオンも普段であればこのような危険な攻略の仕方は決してしない。だが、今回は妹の命がかかっているのだ。それくらいのことをする必要がある。間に合わなかったでは済まないのだ。
レオンは入口からダンジョンに入るとすぐライトを唱えた。
最初の部屋が見えた瞬間にライトを部屋の中に放ち、部屋の中が照らされる。中にはモンスターは一匹もいない。そのまま部屋に中に入り、間髪を入れずに次の部屋への通路を探す。速度を止めずに次の通路を見つけ、またそのまま駆け出す。
ライトを通路から次の部屋に放つ。またも部屋にはモンスターはいない。
事前に聞いていた情報から、モンスターは最後の部屋にしかいないと踏んでいた。実際その通りで、だからこそできるこの作戦でもあった。
モンスターがいないことでレオンの考えた行動は上手く行っていたが、罠を無視した行軍は必ずしもうまく行くとは限らない。1-Bの罠をレオンは踏んでしまった。
ウッドアローが壁からレオンの方めがけて射出される。レオンはそれに一早く気づき、肩部の鎧に当てて弾いた。
ウッドアローごときの罠であれば、レオンはこのように返せるのだ。もし罠の種類がグレイブだったとしても、直撃を最小限に済ませて腰に備えたポーションですぐに回復するつもりだった。
先頭を走るレオンがそのまま1-Cへ続く通路へ進んでいく。エリスだけはレオンに遅れずに後をついて行けているが、その他の騎士はやや重い鎧を着ての行動に遅れて行った。
1-Cへレオンがライトを放つ。1-Cにもモンスターはいない。これで1-Dだけにモンスターがいることは確実だ。
1-Cの入口すぐのところに大きめの落とし穴があることだけはしっかり聞いていたため、レオンは1-Cの落とし穴にはまることなく1-Dに向けて駆け出していく。
残るは1-Dただ1部屋。レオンはそこに向けて更にスピードを上げて駆け出していく。
異常なスピードでダンジョンを移動する1つのシンボルを見ていた。
そのシンボルは、いくら部屋にモンスターがいないとは言え、1分足らずでダンジョンの3つの部屋を攻略し、最後の1-Dへと続く通路へ入ろうとしていた。
データでシンボルを確認すると、若い男の騎士だった。名前がレオン・ヴィズダム・アイス。ヒルダの兄なのだろう。言われれば、どことなく面影がある気がする。
考え事をしている間に、騎士がとうとう1-Dに突入した。
1-Dにはコボルトリーダーが待ち構えているため、今度こそスピードを落とすだろうと思い見ていたが、コボルトリーダーに向かって同じ速度で移動している。コボルトリーダーの前には数匹のコボルトが陣取っていたが、騎士がコボルトのシンボルを横切った際にコボルトのシンボルが消えた。
一瞬にしてコボルトを倒したのだ。続け様にシンボルがさらに消えていく。
相手の騎士に止まる気配がなかったため、コボルトリーダーはタイミングを掴めず、隠れていたコボルト達に合図が出来ずにいた。そして、とうとう目の前のコボルトアーチャーが倒され、そこでようやく鳴き声をあげた。
伏兵が出てきたが、距離もそこそこ離れていてその攻撃がレオンに向くより先に後援のエリスが伏兵の部隊に攻撃を始める。
たった一人の騎士に翻弄され、二人の騎士に策略を看破された形となってしまった。
レオンの目前にいるコボルトリーダーが鳴き声を上げると、後ろからコボルトの雄たけびが聞こえた。伏兵か何かの合図だったのあろう。しかしレオンは気にしなかった。後ろにはエリスがいる。レオンがやることは目前のこのコボルトリーダーを倒すことだ。
鳴き声を上げていたコボルトリーダーは隙が大きく、レオンは首を一太刀で断ち切った。
胴体からコボルトリーダーの首が離れ、地面に落ちる。そしてすぐ他のコボルトに向かう。コボルトリーダーを倒されたコボルト達は、士気も低く連携も取れずにレオンとエリスにどんどん倒されて行った。
コボルト達の残党処理となった頃、
「オーガ達がやってきます! お気を付けを!」
副隊長をやっていた騎士が、前回の反省を踏まえオーガの到来のタイミングを知らせてくれた。
ちょうど同じタイミングで、伏兵が現れた方より反対の壁から今度はオーガ達が出てきた。
騎士達が話していた更なる援軍だ。
しかしオーガの援軍が出てきた時にはすでに遅く、コボルトは後1・2匹と言うところまで減らされていた。
そして今度はレオンとエリスの方に騎士の援軍が届く。騎士の副隊長に続いて騎士達が入り込んできた。
オーガキングは圧倒的な不利な状況にも関わらず雄たけびをあげレオンに向かってきた。オーガキングにつられてオーガウォリアやオーガまでも雄たけびをあげて、そして突進してくる。
2mを超えるオーガ達の突進をそのまま受けることはできないため、エリスが魔法を唱える。
「ストーンウォール!」
エリスは騎士剣を右手だけに持ち直し、左手の平をオーガの群れに向け、オーガの2列目と3列目の間に石の壁が出現させてオーガの隊を分断した。
そして今度はレオンが魔法を唱える。
「アイスロック!」
レオンも左手の平をオーガの群れに向けると、ストーンウォールに阻まれた3列目のオーガ2匹が氷漬けになる。
こうして、先頭を駆けていたオーガウォリア4匹と3列目以降のオーガ、オーガキングの部隊が完全に分断された。
レオンとエリスは騎士剣を構え直し、オーガウォリアに向けて剣劇を放つ。
オーガウォリアはバスタードソードを両手に持って振るうが、レオンとエリスは軽く避け、返す剣で両断していく。
オーガウォリアとレオン・エリスの間に圧倒的な強さの差がある。
後衛のオーガ・オーガキングの部隊がストーンウォールと氷漬けのオーガをどかしている間に、オーガウォリアとの戦いはすでに終わってしまっていた。
オーガキングは更に雄たけびを上げ、レオンに向けて大剣を構えて突進していく。
レオンはまだオーガキングとの間に時間があることを確認し、まだ生き残るオーガに向けてアイシクルランスを放つ。レオンのアイシクルランスはヒルダほど大きくはなかったが、オーガを倒すには十分な大きさで、アイシクルランスに貫かれたオーガが消滅していった。
オーガキングはレオンに向けて、最短の距離で大剣を振るう。だが、それをまともに受けようとせずに騎士剣の側面を滑らせて受け流す。
オーガキングは全力の攻撃だっただけに、体のバランスが崩れる。そこをレオンがオーガキングの首めがけてジャンプし、横なぎに一閃、剣を振るった。




