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2章 4話 邂逅

思ったより短くまとまりました。

これ必要なくね?的な部分をカット!


「ダンジョンよ! 我が問いに応えてくれ!!」


ヒルダは今出せるだけの声でダンジョンに向けて叫んだ。

しかし、待てども反応がない。


「ダンジョンよ! 言葉を話すことができないのであれば、

 何か反応をしてくれ!」


もしかすると言葉を話すことが出来ないのかもしれないと思い、反応をして欲しいと伝えるも改めて何も反応がない。

その他、いろいろ試してみた。魔法を部屋の壁にぶつけてみたり、走り回ってみたり。

何をしてもやはりダンジョンからは反応がなかった。

思いつく限りのダンジョンとコミュニケーションを取る手段が尽き、ヒルダはベッドの上に倒れ込む。

すると、疲れがたまっていたせいか瞼が降りて来る。眠い、今は決して眠りたいわけではないのに、体が起きさせてくれない。瞼が完全に降りると、そのまま寝てしまった。




部屋の中で色んなことをする聖騎士をずっと見ていた。

問いに応えてくれと言ったり、魔法を壁にぶつけたり。そして意味不明に部屋の中を駆けまわったりしていた。

外見が少女だとしても聖騎士と呼ばれる立場の人間である。内容によってはとても子供っぽいことをやっていたので少々呆れてしまっていた。そして、改めてこのような子供っぽいことをする人間を自分は追い詰めていたのだと理解した。

今までとのギャップもあったせいで、まるで別人に思えてしまう。今となっては聖騎士に嫌な感情は一切持っていなかった。

そのまま見ていると、聖騎士はそのままベッドに倒れ込み寝てしまった。


「サトル様……この聖騎士は一体……」


シスも俺と一緒に時々見ていたのだが、あまりに子供っぽい行動に呆れていた。

もしかすると、この爛漫さこそがこの少女の素なのかもしれない。少なくとも、戦いのときの堅い感じとは違って好感を持てる気がする。この少女をもう少しだけ見ていたい、そう思った。


少ししてから聖騎士が起きてきた。

ベッドから起きだすと、ベッドに腰をかけて座り直す。そして、少し考えてからとても真面目な顔になって、誰に向けて話すと言うわけでもなく喋りだした。


「これから私のことを全て話します。

 これでも信用がおけないと言うのであれば、無視して

 頂いて構いません」


寝る前のがむしゃらな感じとは違い、真面目そうに話すのが少し気になった。あの時も決して不真面目なわけではないと思うのだが、そう感じさせる何かがあった。


「私の名前はヒルダ・ヴィズダム・アイス。

 この国、ホーリィセントラルの北方にある、

 領都レイアムを収めるヴィム・ヴィズダム・アイスの

 三女としてこの世に生を受けました」


聖騎士の名前はヒルダと言うようだ。

生まれから始まり、成長過程のことまでどんどん話していく。

生まれてからずっと領都の家で過ごしていたこと。

上級貴族としての嗜みを身に着けるため、剣技、魔法、礼儀作法、子供のことからなんでもやっていたこと。

結果、友と呼べるものがいなかったこと。

家族のこと、父親の溺愛ぶり、母親の優しさ、兄の剣術の指導、姉の魔法の指導。

14歳になり聖騎士団に入団し、そこで初めて友とも姉とも呼べる、エリスと言う聖騎士に出会ったこと。

16歳になって聖騎士団の副団長を任せられるようになったこと。

副団長になったのに、父親には聖騎士としては認められていないと知ったこと。

そしてここでダンジョンにきたこと。


俺は一言も喋らず聞いていた。

隣にいるシスも邪魔することなく、一歩引いて何も言わずに立っていた。




ヒルダは自身の全てをダンジョンに向けて話した。いや、まだ残っている。生涯誰にも話したことのない、とても大事な秘密を。


「私は、まだ誰にも話したことのない秘密があります。

 それは私はこの世でも非常に稀な能力持ちだと言うことです。

 私が持っている能力の名前は、絆。一緒にパーティを組んでいる

 者たちの能力が1段階上がります。

 この話を誰かにしたのは今日が初めてです。私は上級貴族の娘ですが、

 このような能力を持っていることがわかれば、他の貴族は躍起に

 なって私のことを手に入れようとするでしょう。

 もしかすると、王城へ召し上げられるかもしれません。

 それが幸せだと思う人もいるかもしれませんが、私はそのような

 ことで人生を左右されたくないんです。

 私は私の本来あるべき人生を過ごしたかったから……」


そこまで言うとヒルダは俯いた。

貴族として生まれたからには、貴族としての運命がある。しかし、そんな運命ではなく自分で切り開いた人生を歩みたかった。それを言葉に出すが、それでも逃れられない運命にある種の絶望のようなものを感じていたからだ。




ヒルダの言葉について考えていた。

今まで生きてきた世界には貴族と名のる人物はいない。だから、ヒルダの全てをわかってやることはできない。

しかし物語で聞き及ぶ貴族の女性は、生まれながらにして政略のための結婚が決まってしまうことも多い。

もしかすると実際に恋愛して幸せな結婚をできた人もいるのかもしれないが、多くの者は違うだろう。

この少女がそれを受け止めきることは難しいだろうと思えた。

その上能力持ちであることがわかれば更に政略の道具として使われる可能性が高くなる。彼女の親は彼女を溺愛しているという話をしていたが、彼女を所望する相手によっては溺愛していようが差し出さなければならないだろう。

そんな定められた運命しか歩めない、彼女の人生には同情していた。


自身でも気づいていなかったが、転移しようとしていた。

それを見たシスに声をかけられる。


「サトル様……?」


シスに声を掛けられたことで、転移しようとしていたことに気付く。そうか、俺はこの少女と話がしたいのか。

俺は返事をせず、そのまま姿が消した。




全て話しきった。

もうこれ以上ヒルダに話せることなどない。

ダンジョンからの反応もない。ダメだったかとずっと俯いていた。


心が重く、ため息をついた時、正面に人の気配がある気がした。

恐る恐るそちらを見ると、そこには自分と同じくらいの年齢の青年がいた。

ヒルダとは対照的で漆黒のやわらかそうな髪の毛。顔立ちもキレイである。そして、上級貴族ではないかと感じられるほど上品な佇まい。そしてそれを決定付けるような服。


その青年を前に、ヒルダは何も言えずにそのまま呆然としていた。


ぼーいみーつがーるです

(言いたかっただけ)

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