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1章 41話 魔法

ちょっとだけ魔法の説明が入ります。



「サトル様、朝です。どうか起きてください」


朝、シスが起こしてくる。

その起こし方はとても優しい。体を軽くゆするようにして起こしてくれる。

大声で起きなさいと言われるようなものではなくいので、とても気持ちよく起きることができる。

そして目を開ければ、メイドの恰好をした美人が微笑んでくれているのだ。

これほど気持ちよく目を覚ますことなど今までなかっただろう。


ベッドから出て、ダンジョンマスターの部屋に設置されたテーブルに移動した。

前回ダンジョンマスターの部屋の拡張と同時に、シスによって部屋の変更もなされていた。

まずベッドの変更。今までは、寝るためだけの簡易的なものだったが、心地よく眠ることができるように敷布や掛布がふんわりとした布のものになり、ランクアップがなされていた。

また、テーブルや椅子もしっかりとした木製品で当然歪みなどなく、とても使い易いものが置かれている。


朝食としてそこに上小麦のパンを1つとミルクスープを2つ、そしてガラスのピッチャーに入った水とコップを作り出した。

昨日はポイントの残りが57だった。今朝300ポイント補充され、朝食で15ポイント使用したため、残りは342ポイントになる。


上小麦のパンは量も多く、シスと半分にしても1つで十分なほどなのだが、ミルクスープは分け合うわけにはいかず2つ作る必要がある。

朝食を食べながら今日の話をしていると、


「後程大事な話があります。

 サトル様の手が空いたと思われる頃に

 またお声をおかけ致しますので、時間を

 割いて頂けますか」


シスの表情は普段あまり変わることはないが、今回は特に真剣そうに見えた。

頷き、後で時間をとることを了承する。

ありがとうございます、とシスが言いそのまま朝食が続行された。


朝食を食べ終わると食事と同時に出現していた食器が消える。

俺達はコボルトリーダーとオーガキングが待つであろう1-Dに転移した。

転移先にはすでにコボルトリーダーとオーガキングが待っていた。

このダンジョンのモンスターはとても従順で、ある程度のことはこちらが指示をしなくても先にやって報告のみ行ってくれる。現代ではなかなか考えられないことだ。


1-Dに移動するとコボルトリーダーが俺を見つけるて、昨日の落とし穴に伏兵を忍ばせる作戦について、ちょうど実証していたことを報告してきた。コボルト10体を落とし穴に隠れさせてみたらしい。

結果は上々で、リーダー,キング共に外から見てもとてもモンスターが隠れているとは思えないほどの出来だったようだ。

これならば、騎士達を襲撃する切り札として役立つだろう。


リーダーによる報告が終わったので本日召喚するモンスターについて話を始める。

オーガには悪いが、今日召喚するモンスターもコボルトだ。オーガ族を召喚すると、大量のラットが必要になり、ポイントが追加で必要になるため効率化のためだ。

キングもそれは理解してくれたため、オーガの召喚は無事後回しにすることが決定した。

そして、今回召喚するのはアーチャー8体に決定。

コボルトがすでに10体そろっているので、落とし穴に忍ばせておく者を先に決めて訓練させておきたいらしい。


コボルトアーチャー8体を召喚すると、召喚の光からコボルトと同じく狼の獣人のようなコボルトアーチャーが現れた。

革の鎧のようなものを着ているが、弓を引くための邪魔にならないように肩パットのようなものが外されていた。主に胸、腹周りを守るための防具のようだ。腰には麻でできた腰巻を巻いている。そして、長さ80cm程の弓と矢筒を背中に背負っている。

リーダーがコボルトアーチャーに近づいて、訓練と構成の指示をしているらしくすぐにコボルトも集まって隊を組んでいた。

邪魔をしては悪いとそこから離れようとすると、今度はシスから声が掛かった。


「サトル様、先ほどの大事な用事のため

 宝箱の部屋まで来て頂けますか」


シスと一緒に宝箱の部屋に移動する。

この部屋は宝箱の中身の回収しかすることがないため、相変わらず何もない。


「サトル様。以前お話した、魔法の話は覚えておいでですか?」


シスから魔法について覚えているかと聞かれ、いつだったか聞いたことを思い出していた。

確か村に初めて行った際に、ダンジョン内の食事で便意を催さないことに疑問を感じて質問した時だったっけ。


「魔素を体に取り込む才能を持つ者のことを

 魔法使いと呼ぶ話だっけ?」


「そうです。そして、サトル様はこのダンジョンの

 濃い魔素を常に取り込んでいるため、いつか魔法を

 使えるようになると言うことです」


このタイミングでシスがその話をしてきたということは、とうとう俺にも魔法が使えるようになったということかもしれない。


「つまり、俺にも魔法が使えるようになったと?」


「その通りです、サトル様」


この世界の人が使える魔法と言う特殊能力。それが自分にも使えるとなると、ワクワクしないはずがない。


「まずは私が魔法についての説明をさせて頂きます」


シスがわざとらしくコホンと咳をし、右手の人差し指で少し下がってきたメガネを上げ直す。

その後、右手を軽く振るうと目の前にウィンドウがポップした。

顕現してもサポートシステムとしての役目はそのまま残っているらしい。


「魔法には元素魔法と呼ばれるものと、固有魔法と

 呼ばれるものがあります。

 元素魔法と呼ばれるものは、炎、氷、風、土の

 4つの属性を司る魔法で、この国にはその属性を

 名誉名にした上級貴族がいるほどです。

 固有魔法と言うのは、ある条件を満たした者のみが

 使える専用の魔法です。

 例えば教会に勤め、毎日の祈祷などによって覚えることが

 できる聖魔法があります。

 他にも、各上級貴族が新しく開発された魔法もありますが、

 こちらは血族魔法とも言いまして、その開発した者の

 血族しか使えないことが条件となっています」


シスの話を頭の中で整理すると、元素魔法は誰でも使えるが固有魔法を使うには条件がある。

固有と言うくらいなので元素魔法にはない良さがあるのだろう。


「固有魔法は条件が必要と言うことは、

 元素魔法より優れている?」


疑問の1つをシスにぶつけると、少し考えてから無言で首を横に振る。


「サトル様は少し勘違いをされていますが、基本的に

 固有魔法と元素魔法に優劣はありません。

 あくまで、条件が必要かどうかだけです。

 そして元素魔法にも実は条件が必要なものがあります。

 第10層~1層からなる元素魔法ですが、そのうち

 1層の魔法は使える者が限られています」


条件が必要なものが固有魔法だと言うのに、元素魔法にも条件が必要な魔法があると言う。矛盾しているのではないだろうか。


「矛盾しているとサトル様もお思いですね。

 その通りです。しかし、この世界ではその矛盾を

 変えられない理由があります。

 その昔、魔法と言うものを作り上げた者が元素魔法の

 定義を作りました。今存在している元素魔法はその

 定義された魔法のみなのです。

 その定義が今もなお守られているので、1層の魔法は

 条件付きなのですが、元素魔法扱いとされています」


「なるほどな。つまり、昔作られた魔法から逸脱した

 魔法は全て固有魔法ってことなのか」


「そう言うことでございます」


つまるところ、元素魔法は教科書通りの魔法と言うことなのだろう。教科書に載っている魔法なので、誰でも唱えることが可能になる。だけど、1層の魔法だけは教科書に載っていても唱えるには条件が必要となるわけだ。


「では次に移りますね。

 第10層の魔法を説明いたします。

 10層の魔法は、クリエイトエレメント……

 炎、氷、土、風です。

 そして、ライトの魔法とヴォルトの魔法です」


クリエイトエレメントの魔法は未だ見たことがないが、ライトとヴォルトの魔法はダンジョンに訪れた魔法使いが皆使っているため、すでに理解している。


「今からクリエイトエレメントの魔法を使用します。

 見ていて下さい」


シスがそう言うと、俺に向けて右手の平を向けた。

そこからサトルの髪の毛をなでるような風が放出されてきた。


「今のがクリエイトウィンドです。

 手の平を向けた方向に風を生み出します。

 放出する魔素の量によって、風の量が変わります。

 また、魔素を放出し続ければ風も吹き続けます」


シスがそう言うと、サトルに吹き付ける風の強さが変わったり、止んだりした。


「その他のクリエイトエレメントも、似た感じで

 使用することができます」


今度は左手を真上に向け、クリエイトファイア、アース、アイスと唱えると掌から順に、炎、土、氷と放出される。

唯一異なったのは、炎は魔素の放出をやめると消えるが、土と氷はそのまま地面に落ちたことだった。


「例えば、ものすごい魔素を込めれば

 城を吹き飛ばすことも可能か?」


「答えはYESです、サトル様。しかしやる者はいません。

 正しくはできる者がいません。

 10層の魔法は、魔法を使う構造が簡単にできている反面、

 魔素の効率がよくありません。

 よって、効率さえ考えなければ可能ですが、そのような魔素を

 有しているものはおりません」


構造蛙簡単なので覚えるのも簡単なのが10層、覚えるのが容易ではないのが9層以降の魔法、と言うことか。

まだ10層の入口に立ったばかりなので考えられないが、いつかは9層以降の魔法も使用することでもできるのかもしれない。


「ではサトル様。早速魔法の練習をしてみましょう。

 掌を壁に向けて、魔素と言うものが粒子化して

 その属性を生み出すようにイメージしてみてください」


言われてサトルはダンジョンの壁に掌を向けた。

魔素を黒くもやもやしたものだとイメージし、それが粒子になって集まり、結晶して氷になるイメージを強く持つ。


「クリエイトアイス!」


しかし何も起きなかった。

イメージの仕方が悪かったのかもしれないと思い、別のイメージを浮かべる。

今度は空気中の水分を集め、それの温度を下げて氷とするイメージだ。


「クリエイトアイス!」


しかし何も起きない。

シスが首を傾げて考えている。


「サトル様、クリエイトウィンドを唱えて頂いていいですか?」


シスに言われ、今度は空気を集めて流すイメージを作り上げる。


「クリエイトウィンド!」


しかし何も起きない。

シスに、次はアース、次はファイアと言われてやってみるが、やはり何も起きなかった。


「まさかこれは……もしかするとサトル様は

 魔素を取り込む才能はズバ抜けていても元素魔法を

 放出する才能が極端に低いのかもしれませんね」


魔法が使えると思って喜んだ日に、元素魔法の才能がないとも言われて正直途方にくれた。


残り召喚する必要のあるモンスターは、

オーガウォリア4体、オーガ8体、コボルト10体。


また、残存ポイントは102ポイント。

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