1章 39話 再スタート
遅れましたが投稿しました!
(生活リズムどうしようと迷ってます)
綿の服に着替えてシスと一緒に食堂に向かうと、カウンターにいた店主が俺を見て口をパクパクさせていた。
「ほ、本当に貴族様だったんだな……」
顔が驚いたまま固まっている。
俺の顔はこの世界で上品な顔立ちに入るらしい。着飾りさえすれば高貴な貴族のように見えるらしかった。
店主はそれ以上俺に掛ける言葉が見当たらないようだったので、放ってそのままテーブルにつく。
シスは俺についてきて、そのまま俺の後ろに控えた。何をするつもりか聞くと、給仕をしますと言い出すのでこの宿屋の朝食は給仕をするほどのことでもないことを説明するのと、目立つので強制的にやめさせる。
渋々、向かいの席に着いてくれた。
朝食を2つ注文して、今日することを二人で話をする。
「サトル様、改めて革を買いに行きましょう。
その鞄は見るに堪えません」
俺が肩から下げている鞄を見ながら言った。
先ほど一階への階段を降りるときにも、しかめっ面でこの鞄を見ていることには気づいていたが、まさかそこまで嫌がっているとは思わなかった。
「わかった。しかし、革の鞄か……。
金が足りるかな」
「サトル様、革だけあれば私のほうで作れますから」
どうやらこの服を作ったように作れると言いたいらしい。
このメイドは一体どれだけのスペックを内臓しているのだろうか。
「じゃあ、帰り道で革を買おう。
次の話にするよ。聖騎士たちはまだこの村に
残り続けると言う話だったよ。
いつまでと言うところまではわからない」
シスがこちらを真面目に見つめ返してきている。
「では、今のうちにダンジョンの作成をしないと
いけませんね。調査と言う名目で何日か後に
本人もしくは依頼された冒険者がダンジョンに
遣わされるでしょうから、そのときまでに
ダンジョンが完成している必要がありますね」
無言で頷く。
こんな話を食堂でしているが、周りとは離れたテーブルをとったのと小声で話していることもあり周りの宿泊者に聞こえることはない。
話がまとまったあたりで、ちょうど小間使いが朝食の乗ったトレイを持ってきたので受け取り、朝食をとる。
レベルも上がってダンジョンでも良い物を食べれるようになったので、この宿屋の朝食が急に安っぽく感じられてきてしまう。この宿屋の食事がとても美味しいと思っていたのが春かな昔のようだ……。
食事を終え、部屋に戻りダンジョンへの帰り支度を始めた。
鞄をとろうとしたのだが、先にシスが鞄をとって首を振る。
貴族の恰好をした俺に麻の鞄は似合わないから掛けるなと言うことなのだろう。仕方なく鞄をシスに預けることにすると、シスが鞄を体の後ろに回した瞬間に見えなくなった。いや、なくなっていた。
あの鞄をどうしたのか気になるが、これは追及しようとすると背景に般若が見えてしまうかもしれないと思い、留まった。
(メイドの秘密を覗いてはいけない、メイドの秘密を覗いてはいけない)
頭の中で念じて追及しないことにした。
二人で宿屋を出るときに、いままでは店主が一人で手を振っているだけだったのが、店主と小間使いの二人で頭まで下げてきた。
身分が違うと言うことは、自身や周りの生活や環境まで変えてしまうことだとなんとなく理解できた気がする。
街の大通りを進むのだが、シスは俺から一歩離れた後ろを歩く。
隣を歩いてくれないと話しかけにくいわけだが、これがメイドの矜持と言うやつなのだろうか。主人より前に出ないと言うの。
大通りですれ違う人々が俺の方を必ず一度は見る。急に視線を感じるようになり、むずがゆさを感じつつも澄まして歩くことを心がけた。
そのまま歩いて先日入った革製品の店が見えるようになると、シスが足早に俺を追い越して先に店に入った。俺も追って入る。
店の中は昨日となんら変わることがない。シスはすぐ店主に、残った銅貨で買えるだけの革をくれ。と伝えて銅貨を先に支払う。
店主が切れ端も併せて革を持ってきたのでシスが受け取り、持ちやすいように筒の様に丸めて腕に抱える。たくさんの革を買えたことに満足しているのかシスの顔に少し笑顔が見える気がする。
後はいつものダンジョンへ戻り方と同じだった。
ただ、門では貴族なのに馬車へ乗らないことに訝し気られたが、領地に戻るまでの資金にも限りがあると言うことを伝えて、門兵に納得をしてもらうしかなかった。
ダンジョンへ戻って来ると、早速オーガキングも踏まえて今後の進め方を改めて話した。大枠は前回シスが話した作戦で変わりないのだが、聖騎士や騎士のことも踏まえて話をした。
「そう言うことで、今日からダンジョン作成を始めるぞ」
「おー」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!」
三者三様に異なるテンションがダンジョン内に響く。
こうして俺達はダンジョン作成を開始した。
残った銅貨は全て使い切りましたよ。と言う設定・・・。
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