1章 34話 共連れ
新年一発目の投稿です。
シスが顕現してからドタバタな感じになってますが、なるべくしてなったのか混乱しています。
でも好きです。こういう流れ。
夜になり食事の時間となる。
俺はこの時間をとても楽しみにしていた。なぜなら、ダンジョン内で作れる食事のメニューが増えているはずだからだ!
メニューを開くと今回新しく作れるようになったのは下記のものだった。
・野芋の炒め物3ポイント
・チーズ3ポイント
・ベーコン3ポイント
・上小麦のパン5ポイント
・ミルクスープ5ポイント
・上級葡萄酒5ポイント
レベルアップ万々歳。
シスも食事が可能だと言うので、上記から1種類ずつと葡萄酒のみ2二人分作った。現れた食事は出来立てで、スープからは湯気が出ていた。
シスは自身のための酒が出されるとは思ってなかったらしく、流石にお酒は……と断ってきたが、すでに出してしまったものは消化しないともったいないと言うと納得し、一緒に食事に付き合ってくれることになった。
チーズは塩気があり、パンの上にベーコンと一緒に乗せて食べるとまた格別に美味しかった。
野芋の炒め物も、じゃがいものほくほくとした感じがあり、ミルクスープに至ってはミルクをたっぷりと使用したのか味が濃厚である。
幸せな夕食を過ごした後、寝るためにベッドに入り込んだ。
意識を手放そうとしていたころ、隣に誰かが入ってきた。このようなことができるのは一人しかいない。
「なぜベッドに入ってくる」
「サトル様はベッドを1つしかお持ちになっていないので」
入ってきた者の方を向いて言うと、そう言い返された。
いつの間にかメイド服から寝間着姿に着替えており、メガネやカチューシャも外していた。そしてもっとも不明なことにメガネをとったシスは目がトロンと垂れていた。
これがギャップ萌えか! 俺は恥ずかしくなってしまった。顔を背けるように反対側を向くと、シスとの間に隙間ができた。シスはそこをまた埋めるように俺に近寄ってくる。
ベッドから降りろと言ってもどいてくれず、そんな状況にドキドキしたまま眠れないでいると、隣から小さな寝息が聞こえだした。いい気なものである。
俺はそんなシスのせいで眠れない夜を過ごすのだった。
「おはようございますサトル様」
翌朝シスの声で起きた。目を開けて視界に入ったシスはすでにメイド服に着替えていて、メガネやカチューシャもつけていた。
「この部屋、もっと広くなったり
もう1つベッドをつけれたりしないのか」
「できますが」
メガネのメイドがしれっと答える。
こいつ、昨日はわざと言わなかったな……。
「なぜ昨日言わなかった?」
「サトル様が聞かれませんでしたので」
創造神に言うのと止められてたことを言いたくてたまらなかったんじゃないのかと心の中で思うが、今回のことは創造神に止められなかったのではなく、敢えて言わなかったと思えたので言い返すのは諦めた。
シスに言わせると、ダンジョンマスターのレベルアップと共に部屋の拡張が可能になるらしい。
ポイントは使わずにできるので、自由にしていいのだとか。
とりあえず部屋の大きさを2畳から6畳にして、俺のベッドから最も遠い位置にもう1つベッドを増やしておいた。
そして、俺のベッドも含めて良いランクの物に変えた。敷物もふかふかなものになったので今日の夜はぐっすり眠れるだろう、邪魔者も来ないだろうし。
その後朝食をとりながら今日やることについてもう一度シスと話し合うことにした。
朝食は上小麦のパンとミルクスープである。二つとも量が結構あるのでシスと半分に分け合う。
まず、ダンジョン内に宝箱の中身回収用の部屋を作成し、そこに下級宝箱を2つ作成する。中身を回収して、シスと村へ。
メイド連れで村へ行けば間違いなく怪しまれるだろうが、なんとかしよう。
村についたら、俺の服を仕立てるための布を買いに服飾の店に行く。
その後で騎士団の今後の動向を探るために冒険者ギルドなり、居酒屋なり、である。
やることの確認ができたので、早速お金の回収部屋と言う名目で、単独の部屋を1つ作った。そこに、下級宝箱を2つ作成する。これで現在までに使ったポイントは、昨日の夕食、朝食も併せて合計154だ。
レベル5に上がったことで毎日のポイントの補充は300まで上がっているため、ポイントにかなりの余裕がある。残存201ポイント。
下級宝箱を開けると、中には銀貨2枚、下級ポーション1つが入っていた。
それらを手に取って麻の鞄に入れる。
準備も整ったので、シスを伴って村に行く。
森側の門はまだ警戒されているかもしれないので、街道側の門から入る。
いつもなら馬車についていけばすんなり入れるのだが、やはり門兵に呼び止められた。
「おい、そこのメイド。止まれ」
やはりこうなったか……。
「なんでございましょう?」
しかし、シスは何か問題でも?と言った風に門兵に顔を向けて返事をした。
門兵はシスに近寄ってくると、足元から順に怪しむようにして眺めた後に、
「お前のようなメイドが一人で村に何の用だ」
ここで、シスがダンジョンで言っていた設定を話す。
「私はこちらにおられるサトル様付きのメイドです。
我が領地に連れて帰るよう、親方様より仰せつかっています。
ですが、この姿のまま連れ帰るわけにはいきません。
少しでも貴族にふさわしいお姿になって頂こうと、
村に服を買いに来たのです」
シスの言葉を聞いて、本当の話か?と言う言葉が顔に書かれた門兵が俺の方を向いてくる。
シスが来なければこんな説明をしなくてよかったのにな、と複雑な気持ちになる。
とりあえず、無言で頷いて返すと、
「こいつはどう見てもただの旅人だろ。
貴族なんて柄じゃない。さあ、本当のことを言え!」
俺の反応を見るまでもなくシスの話を嘘だと思った門兵がさらにシスに詰めよった。
いくらなんでも、この色つきでもない麻の服で貴族と思わせるには無理がるよなあ。
これ以上シスに話をさせては意味がないと思ったので、シスと門兵の間に入り説明をした。
自分は別の国の辺境領地に住んでいた貴族の4男で、もともと相続の権利もなかったので少しのお金をもらい、旅をしていたこと。お金がもったいないので服は麻のものを着ていたこと。最近この村を中心に動いていたこと。
そして、先日領地の次男,三男が続いて病気で亡くなってしまい、長男のスペアとしての役目のため領地に呼び戻されようとしていること。
その役目にこのメイドが使われていること。護衛も兼ねているため、実力は折り紙付きだと言うこと。
そこまで話してもまだ訝しげていたが、なんとか納得してもらえ村に入れた。
終わった後で俺は深くため息をついた。
「なんてわからずやな門兵でしょうね。
サトル様を疑うなんて……」
その言葉に、お前の説明がダメなだけだろ! と俺は突っ込まずにはいられなかった。




