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1章 33話 貴族名

他の小説を読んでいると、メイドキャラが大抵生き生きとしているんですけど、自分もシスを登場させてから、なんとなく理由がわかるような気がしてきました。


「ところで、なぜ急に積極的なサポートをしてくれることに?」


思っていたことをシスにぶつける。

声しか聞こえなかったときは、俺が聞かないことはシスの方から話してくれることはなかった。

特に最初のチュートリアル的な部分で。


「それは創造神様に止められていたからです。

 レベル1から私が手伝ってしまいますと、

 手伝うことが当たり前になり、自身で考える

 ことを怠るようになりますので」


そう、創造神ね……。創造神が言ったのなら仕方ない……と思ってしまうのは俺が思考を停止しているからだろうか、それともその万能感のある存在が言うなら仕方ないと魂が思っているからだろうか。


「そういうことですので、今後言いたくても言えなかったことは

 伝えさせていただきますね」


シスがとても頼りになりそうに思える。今まで、明らかにこのタイミングで言うのおかしくね?って言うのは、全て創造神のせいだったと言うことだ。今後は、そのようなことが一切なくなるはずだ。そう、なくなるはず……。

そこでふと悪戯心が芽生えた。こっそりデータでシスを見てみよう。このサポートシステムはどれほどの能力の持ち主なのだろう。


シス ホムンクルス メイド

  HP:B級

  MP:B級

 攻撃力:B級

 防御力:B級

  魔力:B級

  状態:正常


見た瞬間、あまりの驚きで体がビクっとなった。

聖騎士でさえDだったのにシスは全てB級なのだ。


「サトル様、何か覗かれましたか?」


背筋に悪寒を感じた。シスが笑顔で言う。シスの背後にはとてつもなく大きい般若の仮面が見える気さえした。


「乙女の秘密を覗くなんてあってはならないことですよ?

 先に言っておきますが、戦闘要員としてカウントしないでください。

 いざと言う時、サトル様を守るために強く設定をされているのです。

 命令されても決して戦いませんので覚えていてください」


納得すると同時に、二度とシスのステータスなど見ないことに決めた。世の中には決して、してはならないことがあるのだ。

ただ、強くて俺を守る役目を持っているというのは助かった。

今後、何があるかわからない。シスほどの強さの者が守ってくれるなら、安心できる。


「早速ですがサトル様。

 私が顕現したからにはその服のままではいさせませんよ!

 その汚い服は私がお仕えする方の服装としてよくありません。

 サトル様の素晴らしさを表現しきれません」


ダンジョンのサポート担当のはずなのに、ダンジョンのアドバイスより先に恰好のことを注意されてしまう。


「けど、いい服は銅貨どころか銀貨が必要だよね?

 染色されてる麻の服でさえ銅貨数十枚必要なわけだし。

 そんな金額は手元にないよ?」


村の服飾の店での相場を思い出しながらシスに金欠であることを告げる。


「ご安心下さい。

 明日になればダンジョンポイントが補充されます。

 下級宝箱を作成なさいませ。2つも作成すれば、

 銀貨2枚近い金額が手に入るはずです。

 その銀貨で服ではなく、布を買いましょう。

 既製品を買うより、自分たちで作ったほうが安く上がりますし、

 何よりこの世界のセンスの服でサトル様を覆うなんて、

 とてもとても……。

 騎士たちの情報収集も兼ねて村に行けば一石二鳥ですよ」


シスは布があれば服を作れるとあっさりと言う。俺の現代知識では、オーダーメイドで服を作るのは相当に手間だと言う気しかしない。しかし、あの異常なステータスを持つシスであれば、洋裁くらいお手のものなのか?と、疑問を持ちながら少しだけ納得してしまう。

どの道村には行く必要があるのだから、そのついででいいか。

しかし……。


「シス、村についてこないよな?」


「当然行きます」


どうやらついてくる気まんまんのようだ。

俺は旅人だと言う体で過去に数回村に入っているので、いきなりシスのようなメイドがついてくると怪しい以外の何者でもなくなる。と言うか、今までに会ったことある人に説明ができない。


「俺は旅人扱いで村に入ったりしてるわけだけど、

 メイドを連れて歩いても怪しまれない案でもあるの?」


試しに聞いてみる。


「もちろんあります。

 サトル様は実はあまり裕福ではない貴族の4男だったのです。

 しかし成人前に家名を没収され家を追い出されてしまったのです。

 ここで急転! 突如二男,三男が病死してしまったため、

 長男に何かあったときのためと、サトル様を実家に戻すために

 親方様が戦闘メイドである私を遣わした。と言う設定で

 どうでしょう?」


どうでしょうじゃねえよ……。

しかも、どうです?すごいでしょ。と言わんばかりのしたり顔をするのはやめてほしい。

そう言えば、以前に酒場で出会ったリイムは途中までは似たような境遇だったと聞いた。意外とシスが考えた方法で大丈夫なのかもしれない。

いや、でもそれだと俺は貴族になってしまう!


「それだと、俺は貴族になってしまうのだけど……」


呆れたようなしぐさでシスが言い返してきた。


「お気づきではないかもしれませんが、

 サトル様のおられた時代では、この世界の貴族に近い

 学問を学ばされています。

 サトル様の顔だちはこの世界では素晴らしいものですし、

 姿勢や口調を少し矯正すればすぐにでも貴族と言えるものに

 なりますよ。

 問題があるとすれば、家柄や名前ですね」


「家柄や名前ね……。リイムが確か言ってた。

 貴族には貴族名と言うものがつくんだったっけ。

 俺の元いた場所ではファミリーネームだったけど、

 似たようなものだね」


貴族名とは、その土地を収めている貴族の直系のものだけが名乗ることができる。地域を治めている証拠にもなるので、貴族名は地域名と同じ。

しかし、俺は治めている場所がないから貴族名がない。これが問題だと言うことなんだろう。

名誉名なんてもっての他。


「この国の貴族でなければいいんです。

 昔からほそぼそと暮らしていた国に属さない貴族だと

 言いましょう。貴族名はサトル様の元いた世界の言葉で

 何かありませんか?」


確かにこの国の貴族でなければ、そうそうわからないか。

ファミリーネームを貴族名にね……ヒビキそのままだと、この世界に合わないし、変えるとすると英語? サウンド? サウンヅかな?


「さ、サウず……ンヅ……」


自身の苗字を英語にしたことで、急に恥ずかしさを覚えて思わず噛んでしまった。そして噛んでしまったことの恥ずかしさも相まって、しばし固まってしまった。


「サウザンツ、いいじゃないですか。素晴らしい名前です。

 この世界にはない貴族名ですし、サウザンツと言う言葉に

 色んな含みも持たせられそうでなお良いです。

 流石サトル様」


シスがもろ手を挙げて誉めてくる。違うんだ……最初はサウンズって言おうとしたんだ……。

しかし、その後もシスがサウザンツいいですね。最高です。私はサウザンツ家のメイド。なんかかっこいい! と独り言が止まらず、今更違うとはとても言い難い。

いっそ諦めてしまうことにした。


「で、俺のこの世界での貴族名が決まったわけだが……。

 これ今決める必要はあったのか?」


「いいえ、ありませんね」


時間をかけて決めたことが、今大事なことではなかったことに呆然とした。

俺とシスの今後のダンジョン生活の方向性を決められた瞬間だった気がする。



サトルの名前が決まりました。

サトル・サウザンツ。あれ?ネタ書いてるときはこんな名前じゃなかったよな?あれ?あれ?

物語は自分の予定通りにはいかないのです。そう言うことにします。


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