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1章 30話 ダンジョンの敗北

前話から、予約投稿を使用しています。

これには理由があって、年末年始の分を貯めているからです。

自分は基本的に1日1~2話書いています。

毎日、その話が出来上がったタイミングで投稿していますが、年末年始は投稿ができないため、多く話を書いたときは貯めておくことにしました。


年末年始、皆さんも忙しくて読む方は少ないかもしれませんが、

楽しんで頂けたらと思います。



ヒルダはロードに向かって動き出した。未だ味方の数より敵の数は多く、騎士たちが疲労することを相手のリーダー格を早急に倒すに越したことはない。

しかし、ロードにたどり着く前にゴブリンランサーやゴブリンシャーマンをなんとかしなければならない。

まず手始めに、最も近くにいたゴブリンランサーを切り払う。ランサーとヒルダとの技術の差は歴然で、ヒルダの剣は受け止められることなく斬り伏せられてしまう。続いて2匹目のゴブリンランサーも、流れるような動作で放たれた切り上げにより倒れる。

ゴブリンランサー2匹を倒したことで生まれた間から抜け出し、ロードに向けて更に進むと、ゴブリンシャーマン2匹がファイアボールをこちらに放とうとしているところだった。


「アイスブリッツ」


剣を両手から片手に持ち替え、空いた手をゴブリンシャーマンに向けると掌から氷の礫が多数放たれた。氷の礫は狙いたがわず2匹のゴブリンシャーマンに向かうと、杖を持つ手や顔を激しく叩く。

アイスブリッツにより顔や腕にダメージを受けたゴブリンシャーマンの片方は、手から杖を落してしまう。もう片方はなんとか耐えるも集中途切れたせいで詠唱が遅くなってしまった。

そこにすかさずヒルダが飛び掛かり、杖ごとゴブリンシャーマンを縦に斬りつけた。詠唱により空中に存在していた炎の球は魔力の供給が途絶え空中に霧散した。もう1匹のゴブリンシャーマンは、なんとか腕のみ斬り落とした。これでは苦痛のあまり魔法に集中できないので、ファイアボールを放つことは不可能だ。


ようやくヒルダはゴブリンロードに肉薄した。

ヒルダをロードが睨みつけ、その後勢いをつけて剣を垂直に振り下ろす。

ゴブリンロードのほうが身長が高く、斬撃に力強さを感じられたのだがヒルダは難なく横にかわした。ロードは振るった剣の勢いを止められずに地面に剣をぶつけて隙を作ってしまう。そこにヒルダが騎士剣を下から斜めに切り上げた。

ゴブリンロードの右腕が血をまき散らしながら飛ぶ。ゴブリンロードは痛みを抑えきれなかったのか、左手で右腕を抑えるとヒルダは今度はその左腕を切り払った。

更に左腕も宙に飛ぶ。隙だらけになったゴブリンロードの胸に向けて騎士剣を突き刺した。剣はゴブリンロードの肺を突き刺したのか、血を吐き出しグゲェとうめき声をあげ痙攣を始める。


「ゴブリンロード討ち取ったり!」


ヒルダは剣を突き刺したまま部屋全体に聞こえるように叫んだ。

騎士たちはヒルダの声が聞こえると、歓声とも雄たけびともつかない声を上げ残りのモンスターの掃討にかかった。

モンスターはゴブリンロードが倒されたことで動揺し、先ほどまでの連携等なかったようにどんどん倒されていった。




俺は安全なダンジョンマスターの部屋から戦いを見ていた。

先ほどまでは劣勢の状態に対し、くそっとかちっなどの声を上げていたのだが、ロードの腕が斬り飛ばされてからは一声も出せずにいる。

そして今俺が見ているデータのウィンドウには、両腕を亡くした状態で騎士に胸を突き刺された無残と思えるゴブリンロードの姿があった。


こんなはずじゃなかった。

モンスター側の被害は甚大かもしれないが、それでも騎士のリーダーに怪我を負わせダンジョンから撤退させる。その後、やってやりましたぜ。と言って笑いかけてくるゴブリンロードの姿があったはずだったのだ。

どこで間違えたんだ。

敵が強大だとわかっていたのに、悪質で凶悪なトラップを作らなかったことか。

それとも、ロードが倒されるかもしれないことがわかっていたのに、不殺を貫こうとしたのがいけなかったのか。


画面の向こうではロードが剣を抜かれて地面に倒れ込む。その後斬り伏せられたシャーマンやランサーも近くに倒れていくのが見える。

何も考えられなくなり、ただ蹂躙される場面を見ていることしかできなかった。

呆然としていると、久しぶりにシスの声が聞こえた。


「サトル様、レベルアップおめでとうございます」


その言葉は間違いなく俺の耳に聞こえたが、俺はその言葉に意識を向けることはできなかった。




部屋内のモンスターを全て倒し終わると、ヒルダは部屋内のモンスターがダンジョンに吸収されていく様をただ見ていた。

その光景はダンジョンであれば当たり前のことであったので、他の騎士や冒険者達は気にもしていない。ただ、ヒルダはいつも思っていた。

このダンジョンに吸収されたモンスターはどうなるのか。新たなモンスターが召喚されるための魔素となるのではないのか。

そう思うと調査が終わってこのダンジョンの強さがわかっても、不安にならずにはいられなかった。


今回の作戦に参加した騎士たちは、最終的に死人,重傷者が0だった。

多少怪我をした騎士もいたが、持ち込んでいたポーションを使用してすでに怪我は治っている。完全勝利と言える内容だった。

最後の部屋の調査も終えていたようだったので内容を聞くと、ゴブリンの物とは思えない家具があった。ベッド,テーブル,イスである。

材質は木であるが、ダンジョン内にあったワイルドアップルの木で作られた物ではない。また、低品質であるもののゴブリンの器用さで作れるようなものではなかったのだ。村でも一般家に置いてような金を払って買う価値があるものだった。

ヒルダはこれを見たことで、ここはただのダンジョンではないことを確信していた。そして、数日はまだ村に駐留することに決めていた。

イス1脚を残し全て壊させると、騎士団,冒険者を伴って村に戻って行った。


帰り道の騎士や冒険者の声はとても明るく、互いに勝利を喜んでいる者もいた。

今日の夜はきっと宴会になるだろう。騎士たちにも今日の夜の酒は許すことにする。こうしてダンジョンの調査と言う名目の殲滅作戦は終わりを告げた。


もうすぐ1章の終話の予定です。

次話でそうなるかは、今のところ未定です。



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