1章 29話 殲滅
ゴブリンロード隊VSヒルダ率いる騎士隊との戦い
第2幕!
1-Bの調査を終えた冒険者はヒルダへの報告をしていた。
ゴブリンズマッシュやワイルドアップルが食べられた後があり、ゴブリンの数が前回倒した数よりもっと多くいるであろうことを教えてくれた。
ヒルダが想定していた通りである。
騎士10人を集めると、次の部屋は今までと比較にならない敵の数がいると伝える。
騎士たちはそれを聞いても驚きもしなかった。むしろ先ほどの戦いでは物足りなかったのか、やる気を見せていた。
士気が十分に高いことを確認したヒルダは、次の部屋の通路に向けて歩き出す。
「次の部屋に行くぞ!」
第1隊の者が近寄って来る。
剣を握り直し、通路へと向かう。通路内にライトを向けてもモンスターの影は見えなかった。先ほどのように先制ファイアボールがあるかもしれないので、後ろのついている騎士はすでに盾を構えてヒルダの前に出る素ぶりを見せている。
ファイアボールも来ないようなので、そのままゆっくりと通路を進んで行く。
通路の半分を過ぎ、ライトを部屋に向けると部屋の中には何も見えなかった。
「罠があります」
共に進む冒険者の一人が部屋の入口のすぐ近くを指さした。
ライトで部屋の中に何者もいないことを確認しつつ、罠の位置にマーキングがされる。
ヒルダたちはその場所を避けるようにして部屋に入ると、そこは先ほどまでの部屋と比べて少し小さかった。しかし、何もない。
部屋の中に何もない、そしてマーキングの範囲から見て入口に大きめの罠。
この部屋は明らかに侵入してきた者と戦う準備がしてあるにも関わらず、モンスターが1匹もいないと言うことは、モンスターが次の部屋に撤退したのだと思われた。
念のため先ほどまでの部屋と同様に調査を指示しつつ、考えをまとめる。
2つ目の部屋にはモンスターの集団がいた。3つ目の部屋は明らかに戦うための部屋のはずなのに何もいない。では次の部屋は……?
ここで1つの考えに至る。
"このダンジョンには間違いなくゴブリンを統率する者がいる"
ゴブリン達に指示を出し、ヒルダ達を迎え撃とうとしているのだ。
それならこのダンジョンに調査しにきた中級クラスの冒険者が全滅したのも頷ける。
だがヒルダたちのやることは基本的に何も変わらなかった。
今いる部屋の調査を終えたことを確認し、意識はすでに次の部屋へ。
おそらく次の部屋が最後。
騎士たちを集めて次の部屋へ向かう。
通路に入ると今までとは違い、奥の部屋から多数の息遣いが聞こえてきた。それだけでも中にいるモンスターが多いだろうことがわかる。
通路を進んでいくと、最初と同じようにファイアボールが飛んできた。今度は同時に3つだ。
すでに警戒していた騎士2人が盾を構えてヒルダの前に出た。
ファイアボールの2つは騎士の盾に当たって爆発した。残り1つは、少し逸れて壁に当たり爆発する。
ライトをファイアボールが来た方向に向けられると、そこにゴブリンシャーマンとゴブリンロードらしき姿が見える。
「行くぞ!」
ヒルダが声を掛けて駆け出す。入口と敵との位置からして罠の存在はないと断定した上でのことだ。
部屋に入ると中は広く、かなり多くのモンスターがいることが確認できた。
今まではいなかったオーガまでいる。
まずは乱戦になるのを防ぐため、戦うための場所を確保することにした。
「チャージ!」
ヒルダが指示すると、5人の騎士は盾を構えて一番手前にいるモンスターたちに体当たりをする。
「サポート、急げ!」
第1隊によって確保されたスペースにすぐ第2隊のサポートの騎士を呼び込む。
ダンジョンウルフがすでに隙を狙って攻撃してこようとしていたのだ。
サポートの騎士たちが隙間を埋めるようにして敵の攻撃を防ぐと、ヒルダは前方にいるオーガに目を向けた。
オーガは大きな木の棍棒を持っている。これを身に受けてしまえば、ヒルダと言えども致命傷を受けるだろう。
今まで指示を出すことのみに集中していたヒルダだったが、ここからは戦闘に加わることにした。
剣を持った右手を掲げると上空に氷の粒が集まって先の尖った氷柱が形成される。
「アイシクルジャベリン」
ヒルダの得意とする氷の魔法は、まだ遠くにいたオーガに向けて発射された。
速度は速くはないが、的が大きく動きも遅いためオーガは逃げきれずに貫かれた。
オーガの体が倒れるのを確認すると、もう1体のオーガ目を向けた。
すでにかなり騎士に近づいてきていたため魔法を撃つことができない。
他のモンスターは騎士たちに任せて自身はもう一匹のオーガに向かった。
オーガは最も背の低いヒルダに気付いていなかった。近づくとまず剣を振るって足の腱を断つ。
剣を斬られて体重を支えきれなくなり、オーガは左の膝をついた。
体勢の低くなったオーガの首に向けて騎士剣を一閃。首を飛ばすことはできなかったが、剣は深く切り裂きオーガは倒れた。
周りを見渡すと、最初にチャージを受けたゴブリンランサー数匹はすでにとどめを差されて動かなくなっていた。
ダンジョンウルフは動きが早くとらえきれないため、騎士2人でかかっているようだ。
ヒルダは当たりを見渡し、奥にゴブリンロードがいるのを見つけるとそこに向けて駆け出した。この戦いを終わらせるために。
今までまともに書いてなかった魔法を今回1つ出しました。
アイシクルジャベリンです。
最初アイススピアとかを考えてたんですけど、投射するならスピアじゃなくてジャベリンじゃね?それなら、形もわかりやすくアイスじゃなくてアイシクル(つらら)にしちゃえ!と言うことで魔法名が決まりました。
なおヒルダはアイスの名誉名持ちなので、氷魔法が得意です。




