1章 28話 開戦
騎士VSダンジョンモンスターです。
かなり前に一度だけ出したステータスを今回出しました
村の森側の門前で、ヒルダの前に騎士と冒険者達が並んでいた。
並んでいる騎士はヒルダが領都にて父より借り受けた騎士たちである。
冒険者はこの村の冒険者ギルドに依頼を出してもらい、2パーティと斥候役が数人いる。
ヒルダは騎士剣を抜いて地面に刺し、大きな声で叫んだ。
「皆の者! 今からダンジョン制圧を開始する。
我は聖騎士。王国の守護者なり!
我について全力を尽くせ!」
ヒルダの掛け声と共に、最前列に並ぶ騎士が抜剣して掲げ、雄たけびをあげる。
冒険者たちも騎士の真似をするように抜剣して掲げた。
聖騎士と言う存在が王国内においてとても大きい影響を与えているのがわかる。
雄たけびが少し収まってきた頃にヒルダ出発を伝え、門兵がその声に呼応して門を開け放った。
ヒルダを先頭にして、騎士,冒険者の順にダンジョンへ向かって進む。
門からダンジョンまでは1kmもなく、すぐにたどり着いた。
ダンジョンの入口から少し離れて集まると、ヒルダが改めて指示を出した。
「いいか、今朝説明したように、今回の
ダンジョン制圧の作戦は、第1隊が先行する。
私をリーダーとし、騎士5人と冒険者の斥候役2人の
パーティだ。
ダンジョン内のモンスターの討伐が主な役目だ。
次に第2隊、残りの騎士5人の隊。
第1隊のサポート役だ。
1隊の後に続いて進み、モンスターを倒し切れていない
人のところを補ってくれ。
そして第3隊、第4隊は冒険者による2パーティだ。。
1隊,2隊が制圧した通路や部屋の確保に回って欲しい。
先行の隊に何かあって撤退するときに大事となるため、
心して取り掛かって欲しい」
真剣な面持ちでヒルダが言うと、皆それぞれに黙って頷いた。
「では、行くぞ!」
ヒルダは第1隊を伴ってダンジョンへ侵入していった。
ヒルダがこれから実践するのは聖騎士隊の中でもよく使われる戦法で、ゆっくり進み、敵を全て殲滅させていく戦い方だった。
「どうやら来たみたいだ」
俺のダンジョンマップに侵入者が表示された。
現時点で見える数は6。当初聞いていた数より少ないので、この後に続いて入ってくるのだろう。
データでダンジョンに入ってきた最初の者を確認すると、白銀の鎧にフードを深くかぶった騎士の画像が表示された。
人間 騎士
HP:E級
MP:D級
攻撃力:D級
防御力:E級
魔力:D級
状態:健康
その後にステータス比較のため、ロードを見る
ゴブリンロード
HP:G級
MP:無
攻撃力:G級
防御力:G級
魔力:無
状態:健康
ステータスはA~Jを等級としてランク分けされている。
つまり、この騎士とロードは強さにおいて約3ランクも差がついていることになる。
一緒に入ってきた他の騎士も見てみる。
先ほどの騎士とは異なり、鎧は通常の金属のようで、顔が覗ける兜をかぶっている。
画像からはそこまでしっかり見えないが、全員先ほどの白銀の鎧の騎士より背が高い。
人間 騎士
HP:E+級
MP:F+級
攻撃力:E+級
防御力:E+級
魔力:F+級
状態:健康 強化
一人を試しに見てみたが、やはりロードと比べてもステータスが高い。
ステータスに+が表示されていて、強化されているようだ。
5人全員見てみたが、どの騎士も1人目と同等のステータスを持っており、+がついて強化されている。
白銀の鎧の騎士はステータスが強化されていないことを考えると、白銀の騎士が他の騎士にかけた強化魔法なのだろうと思える。
侵入してきた騎士たちの強さをロードに伝える。
元々勝ち目の薄い戦いであるとわかっていたこともあってか、ずっとロードの表情は優れていなかったが、俺の話を聞いて更に悪いものとなってしまった。
「これはいよいよやばいですぜ……旦那」
そう言うとロードは喋らなくなってしまった。
これから起こる分の悪い戦いを考えて暗くなっているのかもしれない。
1-Aの部屋に侵入したヒルダたちは全員でライトの魔法を使い周りを照らすと、部屋内にゴブリンの存在を確認した。ゴブリンは見つかったことがわかるとすぐ奥にある通路に入ってしまったようだ。しかし、ヒルダたちは決して追いかけたりはしなかった。
撤退の可能性を考えて、まずはこの部屋の調査して安全を図ることが大事なのだ。
ヒルダと騎士3人が奥の部屋に続くだろう通路の近くに立ち、敵が出てこないかを気にしている間に、騎士二人が護衛にたち冒険者が部屋の調査を始めた。
その間に第2隊も入ってくる。こちらは入口から少し入ったところで待機している。
数十分かけた冒険者の調査により、部屋の隅々まで調査が終わりウッドアローの罠が2つ検知された。
冒険者がその場所を知らせるために、マーキングをしておく。幸い、次の部屋へ進む通路までの間にはなかった。
第3隊,第4隊が入ってくるのを待って、ヒルダたちが次の部屋に向かう。
先ほどゴブリンが逃げて行った通路の先には間違いなくモンスターが待ち構えているだろう。
ヒルダたちは一層警戒を強めて通路に入っていった。
通路を通っている最中に前方から炎の球が飛んできた。
ヒルダのすぐ後ろにいた騎士が盾を構えてヒルダの前に出る。
炎の球は盾に当たり爆発するが、騎士は吹き飛ばされることなくその場に残った。
飛んできたのはファイアボールだ。威力はそれほど強くはないようだが、敵に魔法の使い手がいるのは間違いない。
ヒルダ達がライトを前方の部屋に向けると、ゴブリンシャーマンがそこにいた。
ファイアボールは直撃しなかったが、当たったことを確認したシャーマンがヒルダたちを見ると邪悪そうな顔を向けてきた。
「このままでは狙い撃ちにされる。一気に次の部屋まで出るぞ。
冒険者は罠の検知にだけに集中しろ!」
騎士二人が盾を構えてヒルダの前に出て、第1隊全員が駆け出す。その後ろから冒険者が罠を検知しながら駆けているが幸い罠はないようで冒険者は何も言わない。
ファイアボールを放ってきたシャーマンは、ゴブリンランサーとゴブリンを前に出して後ろに控えていた。
「真正面に罠がありそうです。
少し横にズレて向かって下さい。」
部屋に入ると冒険者が罠を見つけ、ヒルダに連絡する。
ヒルダは黙って頷き、第1隊に命令した。
「殲滅しろ!」
騎士5人が罠のある正面を避けて敵に斬りこんでいく。
先頭に出た二人の騎士にゴブリンが1匹ずつが斬りかかってきたが、なんなく斬り伏せられる。
続いてダンジョンウルフがサイドから先頭の騎士に飛び掛かってきて、一人が押し倒された。
次に走り込んでいた騎士がダンジョンウルフに斬りかかると、ダンジョンウルフはそれを避けるために騎士から離れて大きく後ろに離れた。倒れた騎士がすぐに態勢を立て直すと、
「サポート!」
ヒルダの命令が響いた。その声を聴いて第2隊も部屋に入ってきた。
現在部屋にいるモンスターと騎士の人数に差ができ、後は殲滅にうつるだけである。
騎士3人がランサーと斬りあうが、武器の性能差が大きくランサーの槍の穂先は剣で切り払われてしまった。シャーマンもファイアボールやヴォルトを唱えるて応戦するが、相手の騎士はシャーマンを視認しながら戦っているせいで、せっかくの魔法も避けるか盾で防がれるかされてしまっていた。
素早く逃げるダンジョンウルフを騎士二人がかりで倒し、第2隊のサポートもあって難なくシャーマンまで倒し終えた。
なんと、1分とかからない速さでモンスター1パーティが全滅させられてしまった。
殲滅してから時間を置かずにヒルダが調査を命じる。1-Aの部屋と同じように冒険者と騎士が一人ずつセットになって調査し、ヒルダと騎士は次の部屋に続く通路を警戒する。
その間に冒険者パーティの1つが入ってくる。もう1パーティは1-Aで待機しているだろう。
じっくりと時間をかけて調査した部屋にはウッドアローの罠が1つあり、そこをマーキングしてもらって罠を発動させることがないようにする。
また、部屋にあった湿った地面からはゴブリンズマッシュが生えている。
ダンジョン特有のワイルドアップルもあったから、ゴブリンの数はもっと多いだろうことをヒルダは推測しし皆に告げた。
「全滅したよ」
俺がそう告げると、ロードは驚いていた。
戦闘が開始されたことを伝えてから1分ほどしか経過していない。つまり、それほど敵の強さが桁違いなのである。
「旦那。少し作戦を変えやす」
ロードがそう言うと、ゴブリンに指示を出した。ゴブリンはすぐ1-Cに向かって移動を始めた。
「何をするつもりなんだい?」
「1-Cのパーティをこっちに合流させやす。
相手が想像以上に強すぎて、戦力を分散させるのは愚策でさ」
確かに、さっきの戦いでモンスターの攻勢と言えばダンジョンウルフが騎士1人を押し倒したくらいしかなかった。騎士に傷さえ負わすことができずに戦闘が終わっている。
1パーティを1-Cに配置したところで、同様に1分持たないだろう。
1-Cのパーティが1-Dに入ってきたので、ロードが指示の変更を伝えたに行った。
そして、その後こちらに戻ってくると視線を下に向けた。
「この部屋も間もなく安全ではなくなりやす。
旦那はダンジョンマスターの部屋に戻ってくだせえ」
「ローブを羽織って姿を隠すって言うのも……
ダメなんだろうね」
「申し訳ありやせん。
微塵の可能性でも旦那を危険な目に合わせるわけには
いかないんで」
会話の間ロードは一度も俺を見てくれなかった。
そこに言いようもない何かを感じて、諦めてダンジョンマスターの部屋に転移する。
「すまねえ旦那。
でも、旦那さえいればこのダンジョンはまだまだやれる。
短い間ですけど楽しかったですぜ」
サトルが転移したのを確認してから、ロードが小さく呟いた。
ステータスのランク分けはこういった感じです
最下級
J=最弱
下級
I=駆け出しの冒険者
H=まっとうに依頼をこなせるようになった程度の冒険者
G=村最強クラス
中級
F=たまに村にいる、優秀な冒険者。
E=騎士の多くがこのあたり。
D=王や領主のお抱えレベルの強さの冒険者。このクラスでも最強扱い。
上級
C=これがついていたらそのステータスは英雄クラス。人間として限界の強さ
B=実質世界最強。
最上級
A=そのステータス値がもっとも高い者につく。(モンスターにもつく)
例外はあると思って下さい。




