1章 26話 酒の席の情報
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20180127
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これで少しは読みやすくなるかと思います。
酌婦は腕から手を離したが、他の人に聞かれないように体をサトルに接触させて小声で話す。傍から見れば、いい雰囲気になって口説きあっているように見えるかもしれない。
「領都から聖騎士が来るって言う話は知ってるわよね?」
サトルは酌婦に頷く。未だ体は密着している状態だ。
「その中で、まだ村には出回っていない情報よ?
何に利用できるかは私にはわからないけど。」
もしこの酌婦の言うことが本当であれば、その情報は今後明かされることがない内容なのかもしれない。聞いてみたい。でもいくら吹っ掛けてくるつもりだろうか。
「銅貨5枚でどうだ。」
酌婦にしか聞こえないような小さな声で言った。
酌婦は少し目を閉じて考えているようだった。そのうち、目を開けて
「それでいいわ。
だけど、私が持っている情報の内一部ね。」
と、微笑んで言った。情報の価値はもっと高いのをわざわざ一部分に限定することで安くしてくれたのかもしれない。感謝である。
サトルは鞄の中に手を入れて、指の感覚だけで銅貨5枚を手にし、酌婦に渡す。
酌婦も手を見ずに指で枚数を確認すると、銅貨をしまい入れてさらにサトルに密着してきた。
周りからは完全にいい雰囲気になったと思われているだろう。
「聖騎士は一人、騎士は10人よ。」
それだけ耳元でささやくように言う。
サトルにとってこの国の騎士の編成等わからないが、聖騎士一人が騎士10人を率いているとみて問題ないだろう。
つまり、今回のダンジョン戦はその聖騎士を倒せるかどうかが重要なところだと言うことがわかる。
「十分すぎる情報だ。助かる。」
礼を言うサトルに対して、酌婦がサトルを真っすぐ見てくる。
「あなたのこと結構気に入ったし、
今後も情報買って欲しいからだからね?」
酌婦の手の上に、こちらの手を重ねることでわかっている。と言う合図を送る。
その日、情報を手に入れたサトルはとても上機嫌で、注文した料理が美味しいこともあっ酌婦と話をしながら楽しく過ごすのだった。
酌婦は途中で一度二階で飲みましょうと誘うのだが、それが床を共にすることを意味するのだとなんとなく察して、今日は気分ではないと言ってそのまま一階で飲み続けた。
翌日、サトルは宿屋のベッドで頭痛に悩まされていた。完全にただの二日酔いである。結局、そのままベッドで寝続けてしてしまった。
昼前になっても部屋から出てこないサトルを心配して、宿屋の店主がドアの前までやってくる。
「あんちゃん。どうした?もう昼前だぞ。」
ドアを叩かれた音で起きたサトルは、体調がすぐれないままドアを開けた。
「おい、あんた酒臭すぎるぞ・・・
どんだけ飲んだんだ。」
サトルの呼吸でさえも酒臭かったようで、鼻をつまんでいた。
悪い・・とだけサトルが言うと、今水を持ってくるから。と言って一旦一階へ戻っていった。
サトルがドアを開けたままベッドに腰かけていると、階段を靴が叩く音が聞こえて、店主が入ってきた。木のコッピに水が入ったものを持ってきたらしい。
手渡されたコップを受け取ると、サトルはそれを一気に流し込む。
まだ頭痛は残っているが、このままここにいるわけにもいかない。店主に礼を告げ、ベッドから立ち上がって歩き出した。
お酒はそこそこは飲めるものの、そこまで強くないサトルは普段であれば少量しか飲まない。ただ、昨日は酌婦が隣についてくれているという状況もあって飲みすぎてしまったのだ。料理が美味しかったのも仕方ないと思う。
正直色んな条件が重なったのだ。そう思うことにした。
1階のカウンターで鍵を返すと、まずは大通りまで歩き出す。
頭痛を我慢しながら、まずは冒険者ギルドまで行ってみる。
昨日同様人だかりができているが、騎士の到着はまだらしい。この分だと、今日はゆっくり準備ができそうだと思い、そのまま正門からダンジョンに戻る
ことにした。
ダンジョンに戻ると、今回もロードがすでに待ち構えていた。
「旦那、どうしやした?遅かったみたいですが。」
サトルの顔色が悪かったのを見抜いてか、ロードがそう話しかける。
なんでもないと言う風に、顔を少しだけ横に振る。
そして、村で手に入れてきた情報を話す。
「聖騎士と言うのが1人に、騎士が10人ですか。
おそらく、中級冒険者の上位くらいの強さだと
思った方がいいかもしれませんぜ。」
ロードがそう言う。サトルもそう思う。もしかすると、普通の中級冒険者クラスが来るのかもしれないが、強いと想定しておいた方が楽に違いないのだ。
「どうだ、ロード。ゴブリンの部隊を
整えれば戦えそうか。」
そう聞くサトルに、ロードは深く唸った。顔をものすごいしかめている。
「正直やばいってもんですぜ。
全滅なんてのはもってのほか。
よくて、リーダー格の人間に傷を負わせて
撤退させるってところでしょう。」
前回訪れた冒険者パーティが中級クラス(おそらく下位)の実力だとしても、完全に油断していたところを倒したにすぎない。
それが、今回はそれ以上の強さのパーティが2つもやってくるのだ。しかも、今回は油断などありえないだろう。
そう考えると、とても暗い気持ちになるが、ロードを信じるしかなかった。
これから、サトルはこの気持ちを抱えたままダンジョンの作成をすることになるのだった。
用事終わって、家に帰ってきて、執筆して、またこれから出かけないと
いけません!
明日の朝にはまた次の話をあげますが、今日はこれ以上は厳しいかも・・。




