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1章 25話 酌婦

今回の話の中心は、居酒屋で働く酌婦です。

酌婦って現代では聞かない言葉ですよね。

日本で女性にお酒を注いでもらうことって、この酌婦のイメージがあるらしく外国人の方によっては違和感があるのだとかなんとか。

(あくまで聞いた話です)



悪質な冒険者パーティを全滅させた翌日、ロードとダンジョンの運営について話をしていた。

まずは新しく追加されたモンスターを確認することにする。

レベル3になって新しく召喚できるようになったモンスターは、

・ダンジョンウルフ

・オーガ

・コボルト

・コボルトアーチャー

・コボルトリーダー

である。それぞれの詳細を確認する。


~ダンジョンウルフ~

ダンジョンで生まれた狼。知能はほどほどに高いが魔法を使うことはできない。

通常の狼より大きい。


~オーガ~

巨人の亜人型モンスター。

知能はほどほどで、ゴブリンとよく共生している。

基本的に肉しか食べないため、食事に気を遣う必要がある。


~コボルト~

身長120cmの亜人型モンスター。

コボルト族は鉱脈に関与してコバルトの顔料を生むので、コボルトが住み着いた鉱山からはコバルトが取れる有名である。

知能はそこそこ高く、指先は器用である。

コボルトリーダーの指示により統率のとれた行動が可能。


~コボルトアーチャー~

弓の訓練を積んだコボルト。器用さを生かして弓を扱う。

知能はそこそこ高いため、一斉射撃等の特殊な動作が可能である。


~コボルトリーダー~ 小ボス

コボルトを統べる長。知能が非常に高く意思の疎通が可能。

他種族との共生をよく思っていないため、ダンジョン内に複数種のモンスターを召喚する場合には注意が必要となる。


コバルトと言う青系の顔料は、確かコボルトと言うモンスターが語源だったと思う。

この世界では実際にコボルトが存在しているので、現代とは違いコバルトはコボルトが生み出しているようだ。

召喚に必要なポイントは、コボルトが10、アーチャーが30,リーダーは200も必要。

それと、ダンジョンウルフ。想像している狼よりさらに大きいとなれば複数現れたときには大変脅威となるに違いない。召喚に15ポイント必要であることからその強さが知れる。

またオーガに関しては肉食限定らしいので、ラットを大量に生産する必要がありそうだ。召喚には20ポイント必要。各種族の初期モンスターとしては、現在最大のポイントを誇っている。強さもやはり相当なものだろうと思う。


この情報も踏まえて出した結論は、今のダンジョンはゴブリン族で固めると言うことだ。

コボルトを召喚すると、指揮系統が2種類に分かれ困ることもある。

それにコボルト系はゴブリン系より召喚コストが高いためだ。


ゴブリンを増やすにあたって、シャーマンをリーダーとしたグループを設定することにした。

つまり、シャーマン1、ランサー4、ゴブリン2、ダンジョンウルフ1のモンスターパーティを作る。

これによって、安定した守りが可能になる。

また、最後の守りであるロードには専用の部隊が必要だと言う話になった。

シャーマン2、ランサー8、オーガ2、ゴブリン5、ダンジョンウルフ2だ。

ポイントが全く足りないため、複数日に渡って召喚を行うことにした。


差し当って、現在ロードを主軸とした1パーティをそのままに、もう1パーティ分の召喚を行う。

シャーマン1、ランサー4、ゴブリン2、ダンジョンウルフ1を召喚すると、さっそくロードが近寄り指示を始めた。昨日の時点で12ポイントあり、補充により112まで増えている。そこから召喚分や朝食分をを差し引くと残りは16ポイントだった。


それ以上のダンジョン強化は一旦諦め、昨日に続き訪れるかもしれない冒険者に警戒を開始するが、その日は冒険者は訪れなかった。


翌日、更に追加でもう1パーティ分のモンスターを召喚する。

ポイントは昨日の夜の食事等も踏まえて、残り10ポイント。

ダンジョン内のモンスターの数も大分増えてきて、常に1パーティがダンジョン内を循環することになっていた。警戒の練習や食事の管理も兼ねていて、必ず循環したパーティは食べ物の類をとってきていた。


この日も昼になっても冒険者は訪れなかった。ダンジョンの存在は村に確実に伝わっているはずである。


「おかしいですぜ。

 このダンジョンの存在は間違いなく

 村に知れ渡っているはずでさ。

 村に何かあったのかもしれねえ」


冒険者が訪れない事態を、ロードは村に何かあったと感じているようだ。俺も少し考えてみたが、決定付けるような案があるわけでもなく、ロードの違和感を村を訪れて確かめることに決めた。


その日の昼過ぎにはダンジョンを出て村に向かった。

正門まで回って馬車と共に村に入るのにも慣れたものだった。なぜか門兵の警戒が厳しくなっていたが、村の中は普段と変わらないと思えた。

まずは簡易的に情報を集めるため、いつもの宿屋に向かった。宿屋に向かう途中も人や村の中を観察してみるが、特に変わったところがない。

宿屋に着き中に入るとカウンターにいた店主が話しかけてくる。


「よお。元気だったかい?」


店主の挨拶まで無難である。

店主に近づき今日も泊まることを告げる。銅貨を6枚支払って部屋の鍵を受け取った。


「そう言えば、領都から聖騎士が来るんだってな!

 騎士じゃないぞ! 聖騎士だ!」


鍵を渡し終えた店主がちょっと大げさな感じに言ってくる。

俺は騎士がどのような扱いの存在なのか知らない。


「騎士? 聖騎士? 村に来るって何をしに来るんだ?」


そうか、おまえさんは知らなかったのか、と事情を説明してくれた。

冒険者ギルドのダンジョン調査は失敗し、この村で調査に出せる冒険者がいないため領都に調査のための騎士の派遣を依頼したのだと言う。

その際にすったもんだがあり、騎士ではなく偶々領都に訪れていた聖騎士が来ることになったと。

ダンジョンがあることを改めて理解した冒険者ギルドが、追加の冒険者を更に派遣してくると思っていたため、完全な読み違いをしてしまったと気づいた。

どうやら冒険者ギルドはダンジョンを危険認定し、ダンジョンの討伐をすることにしていたようだった。


「聖騎士って言うのは?」


出来るだけ平静を装って店主に再度問いかける。


「 聖騎士って言うのは、要は騎士の中のエリートさ。

 王国全体の治安維持を目的として作られた部隊らしい。

 だから、こんな村の近くに発生したダンジョンの

 鎮圧にも来てくれるってわけさ」


店主のおかげで、事態が少しだけわかった。ただ、これだけでは情報は足りない。


「まだ情報が欲しいって顔してるな。

 俺はこれ以上知らないぜ。

 ダンジョンに対する責任は冒険者ギルドが

 負ってるから、ギルドなら何か教えてくれる

 んじゃねーか?

 後は、この間と一緒で居酒屋だな」


店主は両手を挙げてそれ以上知らないことをアピールしてきた。今回のことはギルドに直接聞いても不思議には思われなさそうなことに安心する。

騎士はいつ来るんだとか、聖騎士が来るんだってと聞いたとしても不安の解消としてしっかり話をしてくれるかもしれない。

店主に了解の意を示し、部屋に向かった。

店主と長話をしてしまったせいか、小間使いがすでに部屋の前でタライを抱えて待っていて、にーちゃんおせーよと文句を言われる。

部屋を開けてタライをいれてもらうと、内緒だと言って銅貨1枚をチップとして手渡す。いいの?と聞かれるが、黙って頷いてそのまま1階へ返した。

何となしにやった行動だが、もしかしたらサービスのような形で返してくれるかもしれない。


数日振りに体を拭いた。そろそろダンジョンにも風呂が欲しい。せめて、体を洗えるような環境にしたい。

そう思いながらも、今現在の状態を解消すべくしっかりを体を拭くのだった。


体を拭き終わったのでタライを店主に返して、鍵と木の札を交換した後冒険者ギルドへ向かった。

もちろん情報を集めるためである。

冒険者ギルド前は、他の場所とは違い人だかりができていた。

近づくと、どうやら看板に集まっているらしいことがわかった。


看板の内容が見える位置までなんとか近づくと、聖騎士一行が村に到着するのは明日だと言うことが書いてある。早馬か何かで先に知らせが届いたのだろう。

看板を見て安心した人たちは離れて行っている。まだ納得が足りないのか、看板前で話し出す人も結構いる。


「聖騎士って言うのは強いのか?

 俺はまだ見たことがないんだ」


「聖騎士って言ったら一握りの人しかなれない

 本物のエリートだって言う噂だ。

 そりゃつええに決まってるだろ」


そんな話声が聞こえる。

まさか聖騎士が一人で来るわけではないだろうから、一行の人数を職員に聞いてしまったら怪しく思われるだろうか。流石に居酒屋で酔った冒険者と雑談するように聞いてみるのとは違って、直接聞くのはまずいかもしれない。

そう思って、ある程度の情報が入ったのでギルド前から退散することにした。

看板の辺りを遠目に見ながら考える。

聖騎士一行の数は現時点ではわかっていない。明日村に訪れるとしてダンジョンにやってくるのはいつか。当日に到着して疲れたままダンジョンに訪れるとは考えにくいため、更に次の日だと考えている。

村に被害が出ているのであれば、すぐにでもダンジョンに調査に来るのかもしれないが、当然村には被害が出ているわけではない。

現段階の俺の結論は、開戦は明後日の朝だ。念のため、明日の昼前にはダンジョンに戻って準備はすることにする。

そこまで考えた後、居酒屋が開くまで村を歩いて時間を潰した。


居酒屋が開く時間になって、少し経ってから向かう。

いつもの通り冒険者が多く、中は大変盛り上がっていた。

入ってすぐにヒゲの店主が俺に気づき声をかけてきた。


「おお、あんた。また来てくれたのか。

 今回は俺の料理をしっかり楽しんで

 行ってくれるんだろうな?」


サトルは無言で頷くと、店主はニコリと笑ってカウンターに案内してくれる。

前回同様、葡萄酒をボトルで注文する。

店主が酌婦にボトルを持ってくるように伝えると、今日のおすすめを教えてくれた。


「今日はいい食材が入ったからな。是非たんと食ってくれ。

 野生鳥のシチューが銅貨5枚、葉野菜のサラダの

 チーズソース掛けが銅貨5枚。

 前回もあったが、野芋の炒め物が銅貨2枚。

 他には……ナッツの盛り合わせは銅貨1枚だな」


ここ数日分の宝箱の中身を全て回収していたので、カバンの中にはいつもより多く銅貨が入っていた。よって、少しは豪勢な物が食べられる。

教えてもらった料理の名前の響きがすでに美味しそうで、思わず涎があふれてくる。

悩んだ挙句、野生鳥のシチューと葉野菜のチーズソース掛けを注文する。

店主は任せときな。と厨房に向かった。

交代するように酌婦がボトルを持って隣に座った。今回は酌婦がついてくれるらしい。

昔何かで読んだ本に、昔はこういうサービスには全てチップで応えるものだ。と言うのを聞いた覚えがあった。

サトルは鞄から銅貨2枚をチップとして取り出し渡すと、酌婦は喜んでそれをしまう。

横についてくれた酌婦は10代と言う若さではなさそうだが、とてもきれいな顔立ちをしている。転生する前の俺より年下に見えるからストライクゾーンの範疇である。

木製のコップに葡萄酒が注がれた後で、君も飲みなよとばかりにボトルを注ぐそぶりを見せると、いいの?と聞かれた。酌婦は俺に笑顔を向けて、カウンター近くの食器棚から同じく木製のコップを持ってきてので注ぐ。

軽くグラスを合わせて葡萄酒を飲む。


「ねね、あなたってただの旅人なの?」


わざと旅人らしい恰好をしていることもあってそう聞かれる。それとも、旅人の割に気前がいいからだろうか。

実際のところ旅人ではないかもしれないけど、似たようなものだよ。と言うと、値踏みするように眺めつつ、ふーん。と言われる。値踏みが終わったのか、


「店主に聞いたのだけど、前も情報求めてきてたのよね?

 だったら今日は私から情報を買わない? 損はさせないわよ?」


酌婦はそう言うと、とても悩まし気な表情をして腕に抱き着いてきた。

今回はこの酌婦から情報を入手することになりそうだと思たので、頷き、まずは金より情報を先に。と酌婦に言うのだった。


時系列がわかりにくくなったのかもしれないので、まとめます。

経過を表すために、最初を0日としています。

0日 サトルが冒険者パーティを全滅させる。

   ギルド職員がギルドに戻りギルドに報告。

   ギルドが急使を領都に出す。

1日 ヒルダが領都に帰郷する。

   ギルドの急使が領都に到着する。

2日 サトルが村に訪れる(now)

   ヒルダが領都を出立する。

3日 ヒルダ村に訪れる。


と言った感じです。


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