1章 24話 父と娘
国語難しいです。うまくかけてるか不安です。
ダンジョン調査の話のために、皆が領主の部屋に集まった。
メンバーは、ヴィム,レオン,ヒルダ,フローラ,ローザ、そして急報を告げた兵士である。
改めて兵士の口から何があったかが明らかにされる。
つい先日、村の近くにダンジョンが見つかった。発見したのは冒険者見習いで、冒険者ギルドに黙って2日ほどダンジョン通いをしていたらしい。ダンジョン内にいたのはスライムとゴブリンだけだったと言うことだ。
冒険者ギルドは下級ダンジョンに設定したが、村には中級冒険者がいなかったため、素行が悪いだけで実力は中級相当の冒険者パーティを派遣、浅いダンジョンだったと言うのに2時間経っても冒険者は戻ってこなかったと言うのだ。監視のためについていったギルドの職員の報告であり、間違いないと言う話だ。
兵士はそこまで告げ、一旦部屋から出て行った。急使で疲れているだろうから、空いている部屋で休んでもらうことになったのだ。
この件に誰が当たるかと言う言葉をヴィムが口に出そうとしたところで、ヒルダが名乗り出た。
「お父様。この件は聖騎士として私が向かいます。
国内の治安維持は私の業務です、見過ごすことはできません。
館の騎士を2パーティほど貸し」
「ならん!!」
聖騎士としての任務で行こうとしたヒルダに対し、ヴィムが即拒否した。
まさか話してる途中で遮られるとは思っていなかったのでヒルダは驚いてしまう。
「お父様、どうしてですか!」
あまりにはっきりと拒否の態度を示したヴィムの対応に、ヒルダは少し怒り気味だった。
「お前を危険な目に合わせるわけにはいかん。
ダメだ」
家族として感情論で拒否する父。
自分は聖騎士として理性的な発言をしているのに、父に感情的に拒否されたことで聖騎士として認めてもらえていないものだと感じ悔しくて唇を噛む。
そして喉の奥から声を振り絞るように言う。
「お父さんはさ……私を聖騎士として、
認めてくれたんじゃないの!?
わ、私だって聖騎士の副隊長だよ?
立派に努めてるんだよ?」
「フローラが褒めたのは知っている。
わしはそのことについて発言した覚えはない。
今回の件はレオンが片付ける。
お前は部屋で大人しくしていろ」
ヴィムは腕を組み目を閉じたまま言う。
その言葉を聞いた瞬間、あまりのショックにヒルダの両眼から涙が溢れ出した。
両腕とも力なく垂れてしまっていた。そのまま少し経った後、ヒルダはヴィムを強く睨んだ。
「お父さんのバカ!!
そんなに私を危険な目に合わせたくないなら、
私を聖騎士団なんかに入れないでよ!
ずっとお父さんの庇護の中に入れておいたら
良かったじゃない!
私は2年半頑張って、ようやく聖騎士として
認められたって思ってたのに!」
断固としてヒルダを認めようとしないヴィムに、ヒルダは叫んだ。
そして帯剣していた騎士剣をヴィムに投げつけて泣きながらドアから出て行ってしまった。
部屋の中に静寂が訪れる。
「あなた……」
ヒルダが出て行ってしまったドアを眺めながら、フローラがヴィムに呟いた。
「お父さんの負けね。
ヒルダを認めたくないなら、過去に戻ってヒルダを聖騎士隊に
推薦した自分を殴ってきなさいよ」
今まで黙っていたローザは深くため息をつき、実の父に冷たい目を向けてからドアから出て行った。ローザなりにヒルダを慰めるために追って行ったのだろう。
フローラが黙ってヴィムの腕を両手で掴む。あの子を認めてあげましょう。と言わんばかりだ。
そして、ヴィムがようやく口を開いた。
「わしは今でもあの子を危険な目に合わせたくない。
まだわしの目に映るあの子は幼い姿のままだからな。
しかし、今部屋を出て行ったときのあの子は幼い姿のままでは
なかった。
あの子の言う通り、わしはただの自己満足であの子を
自分の手の中において置きたかっただけだったのだ。
親として失格だな……」
ヴィムは肩を落す。フローラが、
「あの子の羽根はすでに伸びきっていていたんです。
聖騎士団にいる間に、私たちが思うよりずっと遠くまで
飛んでたようですね。
そろそろ認めてあげたらどうですか?
認めたからと言って、あの子が私たちの子供でなくなるわけじゃ
ないんです。
私たちの子供であることは変わらないんですから、
また何時でもここに戻って来てくれますよ」
そうだな、と小さくヴィムは返すだけだった。
レオンは最後まで一言も発しなかった。しかし全ての話を聞き終えると、ヴィムにぶつけられて落ちたままの騎士剣を拾い部屋から出て行った。
ヒルダは部屋のベッドにうつ伏せに倒れ込んで大泣きをしていた。
今までに今日ほどショックなことはなかった。
今までの聖騎士としての自分の実績も全て大したことがなかったかのように思えてしまう。
悔しくて涙が止まらない。悲しくて涙が止まらない。
「ヒルダ」
ドアの向こうからローザの声がした。ヒルダは聞こえていたが返事をしないでいると、ドアを開けて入ってきた。
ローザはヒルダの近くまで来て、一度立ち止まった。悔しくて泣いている妹の姿をじっくりと眺める。
その後屈んでヒルダの体を後ろから抱きしめてやる。
ヒルダはローザに抱きしめられたことで一瞬ビクっとしたが、ローザが優しく抱きしめてくれてるのを感じ、再度大きく泣いた。
「お姉ちゃん……私認められてなかったよ……。
今まで頑張ってきたの、全部無駄になっちゃった……。
何も意味なかったよう……」
ローザのヒルダを抱きしめる手に力がこもる。
片方の手でヒルダの背中をさすってやりながら伝えた。
「私はあなたの味方よ。でも、今回は大丈夫よ。
レオン兄様がもうすぐここにやってくるから、
話を聞きましょ」
ローザのいつもの冷静な態度からは信じられないほどの優しい抱擁に、ヒルダは余計に悲しくなってしまう。
ローザはレオンが来るから話を聞きましょと言うが、動揺していてそれがどういう意味を持つのかわからない。今はこの溢れ出る感情が尽きるまで目から流すしかできない。
ヒルダの泣く声だけが響く部屋にドアをノックする音が聞こえた。
ローザはヒルダの肩を軽く叩いて、ドアの方向を見るように促す。
ヒルダが涙を拭いながらドアの方を見ると、レオンがドアを開けて入口に立っていた。
その手にはヒルダがヴィムに向かって投げつけた騎士剣がある。
「聖騎士ともあろう者が騎士剣を手放したら
ダメじゃないか。
どんなに周りがお前を認めなくても、
お前自身が自分を見放したらダメだぞ」
レオンはそう言ってヒルダに騎士剣を手渡し、頭を撫でてやる。
ヒルダはレオンに慰められ、泣き顔が少し収まる。
それを確認した後、レオンはかしこまってヒルダに言った。
「聖騎士ヒルダ。
領内における新規に発見されたダンジョンの調査を依頼する。
翌朝、館の騎士10人を連れて鉱山の途中にある村に向かうのだ」
それを聞いてヒルダは驚いた。
領都の騎士団の管理はレオンに任されている。レオンが言ったと言うことは、ヴィムが言ったことと同一の意味を持つ。
「レオン兄様!」
ヒルダは体全部をレオンに任せて抱きしめた。
「兄様!ありがとう!ありがとう!」
止まった涙がまた流れ出し、ヒルダがレオンに礼を告げる。
レオンはヒルダが泣き止むまで優しく頭を撫でながらそれを受け取めてやるのだった。
こんなはずじゃなかったのに、こんなはずじゃなかったのに。
簡易ストーリーを具体的な言葉に落としていたら、気づいたらこんなことに!
でも、個人的には良い話だって思うんです。




