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1章 21話 帰領

主人公ではない人物視点の話を書くときは、第三者目線の書き方にするつもりです。


ヒルダは帰郷のための馬車に乗っていた。馬車は個人で借りあげているから、ヒルダ以外は誰も乗っていない。

本来、聖騎士団の副隊長ともなれば帰領のためでも国から立派な馬車があてがわれるはずだったし、名誉名持ちの上級貴族であれば帰郷のための馬車は実家が出すことも多いのだが、ヒルダは自分のことは自分でしたい性質であったため、聖騎士としての給金を用いて自分で借りることにしていた。

今回、帰郷のためにトランクを2つ馬車に積み込んでいる。中には、後日北方領に遠征に行くために使用する軽騎士鎧やプライベートの着替え、そして何かあった時のための簡易ドレス、お土産が入っていた。そして、馬車での旅は暇だろうとエリスが貸してくれた恋愛小説が数冊。

今は馬車内の簡易椅子に腰かけ、その恋愛小説の1つを読んでいる最中だった。

恋愛小説の内容は、王族と婚約している貴族の長女が領地に訪れた旅人と恋に落ち、親の反対を振り切って愛の逃避行に走ってしまうと言うものだ。

いつかは見たこともない貴族と政略結婚させられるかもしれないヒルダにとって、この小説のような恋愛に憧れがあり、出来ればいつか私も……と夢見ている。

一つだけ不満に思わずにはいられないのが、このような恋愛小説に出てくる女性は長身ですらっとしていて体型もグラマーと相場が決まっている。

それに比べ自身は身長も高いわけではなく、胸もお尻も小さい方であるのだ。


「私の体がもう少しでもエリ姉みたいだったら、

 この小説みたいな恋愛が出来たのかな……」


ヒルダは自身のことを魅力的ではないと思っているのだが、騎士団内ではその可愛らしさで少なくない数の騎士を虜にしている。しかし、なぜか声をかけて来る者が皆無であることも手伝って、自身が魅力的だと言うことをヒルダは全く知らなかった。

ヒルダが恋愛小説と現実の差にため息をついていると、御者から声を掛けられた。


「ヒルダ様、そろそろ二回目の休憩に致します」


御者が馬車が止めたので、ヒルダは馬車から降りて体を動かしたり伸びをしたりして体をほぐす。

体を動かしている間に御者は簡易竈を馬車から取り出して、お湯を沸かしてお茶の準備を始めている。馬車での旅は長いため、こうやって休憩の度にお茶の準備をしてくれるサービスなのだ。

体をほぐし終わったヒルダはトランクの中からクッキーを数枚とお気に入りのカップを取り出した。御者が沸いたお湯を茶葉の入った木製のティーポットに移入れてから、ヒルダのカップに入れてくれる。

決して高い茶葉を使用しているわけではないだろうが、外の空気を吸いながら飲む紅茶は美味しく感じる。


「今のところ予定通り進んでいます。

 この後もう1回だけ休憩を挟んで、

 後は日が暮れるまで移動します。

 日が暮れたら今日の移動はそれで終わりです。

 野営で申し訳ありませんが、ヒルダ様は

 どうぞ馬車内でお休みください。

 順調であれば、翌日の昼には次の村に

 着くと思われます」


そこまで言って御者は頭を下げる。

王都を出る前に合意していた計画の通り順調に進んでいる。


「順調みたいで良かったわ。

 この後もよろしくお願いね」


ヒルダはそう言うと、持っていたクッキーを2枚程御者に手渡した。

御者はそれを受け取りありがとうございます、と言うとヒルダのいない所に移動して食べているようだ。

御者は50歳くらいの年齢で、元斥候役の冒険者と言う経歴を持っている。

だがその割に態度は紳士然としている上に、馬車を操る技術は高く、紅茶をいれてくれるサービス精神も持ち得ている。そして何より女性に対しての扱いが素晴らしく、帰郷する女性貴族に人気の御者だった。


紅茶を飲みながら、今後の予定をについて考える。

まず本日は野営して明日の昼にはレイアムとの間にある村に到着。

村で一泊して翌日出発。同じように途中一泊野営してから、4日目にレイアムへ到着となる。

レイアムに着くとすぐにドレスを作るための採寸が待っているだろう。そして、屋敷に飾るための肖像画の作成……想像しただけで疲れるのを感じる。

休憩も終わり御者が出発の準備を始めたので、この旅唯一の癒しである恋愛小説を再度手に取り続きを読み始めるのだった。

途中、商人の馬車とすれ違うことが幾度かあったが、そのほかは特に問題もなく二日目には順調に村に着いた。


この村は宿場町と言った感じで特に名物があるわけではないが、宿屋がどこもしっかりしていることが有名な町だ。

ヒルダはいつも使う宿屋に入り支払いのために小金袋を取り出すと、宿屋の店主がヒルダに告げた。


「宿代はまとめてヴィム様から頂くことに

 なっております。

 お支払いは要りませんので、こちらにサインと

 指輪の印をお願いします」


そう言って書類とペンを出してくる。

出された書類にペンでサインをして、指輪を書類に押し付けた。すると、指輪を押し付けた部分が黒い印として指輪の形状を書類に映した。

この指輪は上級貴族だけが使用できる魔道具で、このように指輪で印をすると上級貴族の証明をすることが可能になる。

印を確認した店主が美しい所作と言葉でありがとうございますと告げ、近くで待機していた青年が、お荷物お持ちします。とヒルダの荷物を持って部屋へと案内してくれた。

部屋は5人くらいの家族で住んでも余るほどの広さだ。わかっていたがあまりの広さに改めてため息が出る。このような無駄に広い部屋に一人で泊まる等お金の無駄であるが、貴族が冒険者と同じ宿に泊まっては示しがつかないと言う父親の言に従うしかなかった。

もう何度目かの村の訪問でもあり、特に村内でやれることがないともわかっていたのでヒルダは宿屋から出ることなくひたすら恋愛小説を読み拭けるのだった。



馬車での移動計算は下記の通りです。

日が出てる時間:6~19(13時間)

馬車の移動方法:2時間移動、1時間休憩を繰り返し

馬車の移動速度:整地されてる道:10km/h

1日の移動距離:(13-1)*2/3*10=80km

王都~レイアムまでは200km(県2つ離れた距離)


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