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1章 1話 ダンジョンマスターの説明

序章は意図的に第三者視線にしてあります。

今回から一人称視点に変更になります。


『コノセカイへヨウコソ ダンジョンマスター

 マズハ ジコショウカイヲ サセテイタダキマス。

 ワタシノナマエハ システムナンバーゼロワン デス。

 コンゴ マスターノサポートヲ サセテイタダキマス。

 ワカラナイコトガアリマシタラ ナンナリト

 ゴシツモンクダサイ』


俺の頭の中に直接機械音声が響いてくる。高音が響いて少し頭が痛い。なぜ急に機械音声が聞こえるのか、視界の端にあったパソコンの電源ボタンみたいなものを押したからだろうか。

どうやら自己紹介をしてくれているが、俺自身の状況が理解できていないから疑問でいっぱいだ。

試しに機械音声に向けて最初の質問をしてみる。


「何が起きてるんだかわからないんだ。

 俺は一体どうなったんだ?

 体は動かせるから生きているんだよな?」


『アナタハ コチラノセカイニテンイサセラレマシタ

 ソシテ ソウゾウシンサマニヨリ ソウゾウ ノシュクフクガ

 アタエラレ ダンジョンマスター ニナリマシタ』


機械音声は日本語として正しく発音がされていない、だから言われた言葉を自分の理解に落とし込むのに少し時間がかかった。

この機械音声が言いたいことはこうだ。

この世界には創造神と言う具体的な神様がいるらしい。現代に生きている俺からしてみれば、神なんてものは人類が勝手に崇めるものでそれに対し恩恵や返事があるものではない。神は、神を崇める者たちの心のみに存在し、安寧を与える存在なのだ。

その神様が俺を前の世界から別の世界に連れ出し、創造の祝福と言うものをくれて、ダンジョンマスターになったと言う。

話の流れから "創造" の "祝福" を得た者がダンジョンマスターになるのだろう。

仮定を確信に変えるために俺は質問をする。


「創造の祝福ってなんだ?」


『シュクフクトハ カミニヨッテチカラヲ

 アタエラエレルコト デス。

 ソウゾウトハ カミニヨッテアタエラレル

 チカラノヒトツ デス」


しかしこれは元いた世界から外れた理のわけで、俺は創造と言うものが、ダンジョンマスターと言うものが、どういうものなのか全くわからない。

できるなら、元いた世界に帰る方法も確認……いや、帰りたくはないな。

あの世界に戻るくらいなら、今はまだ何もわからないこの異世界で生きていくほうがきっと何百倍もマシだろう。

だからこそ、今創造,ダンジョンマスターと言うものをしっかりと理解をする必要がある。


『ダンジョンマスターノシゴトハ

 ダンジョンヲヒロゲ モンスターヲショウカンシ

 タカラヲスエ オオクノボウケンシャヲ

 ダンジョンニミチビキ ダンジョンヲ

 ウンエイシテイクコトデス』


引き続き喋るシステムナンバーワン……長いので仮にシスとしておく……に、具体的な方法を尋ねることにした。


「ダンジョンマスターの概要はわかった。

 実際にはどうやればいいんだ?」


『ソノタメニハ チュートリアルヲ ハジメサセテイタダクコトニ

 ナリマス。

 ソノマエニ マズハ ナマエヲ オシエテクダサイ』


シスがそう言うと目の前に文字を入力するウィンドウがポップアップした。親切にも"ダンジョンマスターとなるあなたのお名前を入力してください"と説明文付きである。

名前の入力欄を指で触ると空間にキーボードが現れた。これで自分の本名を入力できる。

俺の名前は響悟ヒビキサトル。入力する文字はきっとフルネームである必要はないだろうし、名前だけを入力した。


『サトル サマ デヨロシイデスネ。

 サトルサマヲ ダンジョンマスタートシテ

 トウロクサセテイタダキマス』


「問題ないよ」


『デハアラタメテ チュートリアルヲカイシシマス

 マズハダンジョンマップノ セツメイデス』


視界にパソコンのウィンドウを立体的にしたものが現れた。

シスの声に呼応してその立体にダンジョンのマップが表示される。


『ゲンザイダンジョンハ ワンフロアノミデ

 コウセイサレテイマス ソトトハ ツナガッテイマセン』


「ちょっと待った。

 その喋り方はなんとかならないのか?

 イントネーションも変だし、聞き取りづらくて仕方ない。

 普通に人間らしく喋ってくれるのが良いんだ」


機械音声の高音をひたすら聞かされ、いい加減少し頭痛い程度では済まなくなってきたので改善を提案してみた。変えられるものなら変えて欲しい。


『ショウチシマシタ。

 ショウショウオマチクダサイ。

 ヴォイスEX1 インストール・・・

 ア・・・ァ・・・あ・・・どうでしょうか。

 サトル様、聞き取れますか?」


シスの声はテレフォンアポイントの担当者みたいな丁寧で聞き取りやすい、悪く言うと感情のこもってなさそうな声に替わった。


「ああ、聞こえる。聞き取りやすくなった」


『では続けさせて頂きます。

 現在ダンジョンは1階の1部屋のみで構成されてます。

 外界とは繋がっておりません。

 ダンジョンが外に繋がると外にダンジョンの入口が作られ、

 冒険者がダンジョンに入って来れるようになります。

 しかし、まだここはダンジョンの体を成してさえいません。

 これから3日はダンジョンの準備期間とし、

 それ以降に外の世界とつなげるとよいでしょう。

 外の世界と繋げるフロアは後程選べます』


「なるほど」


『ダンジョンは複数の部屋と通路で構成されます。

 部屋や通路には宝箱や、罠や障害物、また水辺,湿地帯,

 毒の沼地のような地形も設定できます。

 他には階段やテレポーターを作ることによって、

 他の階や部屋と繋げることができます」


シスの言った言葉がウィンドウに立体表示される。ハマったら抜け出せなさそうな深い落とし穴、複雑に絡み合って紹介物としての体をなす岩柱、奥が見えないほど濁った水辺、歩行を邪魔するような泥の地面の湿地帯、明らかに体によくなさそうな紫色した沼地、それらが見てとれた。

現代におけるRPGによく出てくるダンジョンと同じようなものだったから、理解に容易かった。


『次はモンスターの召喚を説明します。

 モンスターは通路や部屋にだけ召喚が可能です。

 召喚の後、移動の範囲を設定する必要があり、

 移動の範囲を設定しないと召喚した部屋から動きません。

 また壁の中に召喚はできません。

 召喚できるモンスターは色々います。

 ゴブリン、オーク、オーガ、そして……竜』


シスの言葉に感応して先ほどと同じように立体的にモンスターが表示される。特に竜は召喚された瞬間、口から炎を吐いて存在をアピールしているように見えた。

モンスターの召喚は親切仕様らしく間違えて石の中召喚するようなことにはならないらしい。


「わかった。もう細かく説明しなくていいから、

 後は大事なことだけ説明してくれ」


まだ続きそうな長い話にうんざりしてきたので、途中を飛ばしてもらう。

俺が知っているゲーム知識でできそうな感じがするから、すぐにでも試してみたくなった。

実際のところ、俺はゲームの取り扱い説明書は読まずにプレイする派だ。最後まで話を聞いてはいられない。


『わかりました。

 では、説明は後少しだけにさせて頂きます。

 わざわざウィンドウに向けてタッチしなくても、

 音声入力で作成,編集,データ,ヘルプが使えます。

 編集はダンジョン関連の編集。

 データはダンジョン内の情報の読み取り。ダンジョン内の

 全ての生命体のデータがわかります。

 ヘルプについては、わからないことを聞いていただければ

 私がお答えいたします』


「つまり、困った時に声かけたらいいんだな?

 名前はシスでいいか?

 システムナンバーワンだからシス」


『シスで問題ありません、サトル様。

 では頑張ってください』


途中略したものの一通り説明を言い終えるとシスからの反応がなくなった。

こうしてサトルのダンジョンマスターとしての人生が始まった。


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