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1章 13話 異世界村事情 ポーション

異世界の料理話は大好きなんです。けど、うまく表現ができない。

自分には料理を美味しく表現する才能が皆無のようです。

野菜スープじゃ仕方ないのかな?


朝起きた場所はダンジョンマスターの部屋ではなかった。

そうだ、昨日は村の宿屋に泊まったんだ。昨日の夜はクッキー生活から解放され、少しはまともな

食事ができたことを思い出す。夕食はとても豪華とは呼べるものではなかったけれど、それでも美味しく感じられた。

一泊銅貨5枚,夕食銅貨2枚なら、宝箱から中間マージンを2回手にすれば事足りる。またそのうち来よう。と思いつつ、まずは朝食のため食堂へ向かった。

俺が起きた時間は宿屋的にはまだ早かったようで、食堂には昨日の夜ほど人はいなかった。


「早いな。もしかしてあまり寝れなかったか?」


足音で気づかれたのか、食堂のカウンターに店主が顔をだし、挨拶をしてくれた。俺はカウンターの椅子に腰をおろす。


「酒を久しぶりに飲んだせいか、部屋に戻ったらすぐ

 寝てしまったんだ。

 ところで、今朝はリイムはまだ来てないの?」


「あいつは朝一番の鉱山行きの馬車についていくからって、

 もう出て行ったよ。

 そんなに急がなくてもいいと思うんだけどな。

 朝食食べるんだろ。銅貨1枚だ」


リイムはもう旅立ってしまったらしい。

昨日少しでも早くいい武器が欲しいとずっと言っていたから、気持ちを抑えられなかったんじゃないかなと思う。

鞄から銅貨1枚を取り出して店主に渡した。


「すぐ持ってくるから待っててくれ」


店主は銅貨1枚を受けとると厨房に向かって行った。

周りを見渡すと、誰も座ってないテーブルとイスを小間使いの少女が拭いて

いる。この世界では子供も働くのが当たり前なのか、と改めて現実を知る。


「お待ち!」


昨日と同じ木のトレイにはパン、そして昨日と同じスープ。追加でベーコンのような

ものが乗っていた。


「これって銅貨1枚の料理?

 肉が乗っているし、銅貨1枚にしては安いような……」


疑問に思って口にしたサトルに、店主が告げる。


「あいつがこれでお前に少し良いものを食わせてやってくれって、

 置いていったんだよ。感謝しとけよ!」


銅貨1枚を見せて店主がニカッと笑う。

美味しい食べ物に飢えていたからとってはとてもありがたかった。このお礼はいつか……と心の中で思った。


トレイ上のベーコンから肉の油の匂いがする。

昨日の肉の切れ端は脂身がまったくなく、たんぱくな味だったので涎が垂れそうになる。

頂きますと手を合わせた時に、リイムへの感謝の気持ちを述べてから食事を始める。

今朝は話す相手もいないので、食事をしながら頭の中を整理することにした。


モグモグ……まず、ダンジョンに冒険者が派遣されることについて。

冒険者ギルドが態々派遣すると言うくらいだから、ダンジョンに訪れた見習いではないだろう。ただ、案内役として同行くらいはするかもしれない。

宿屋の店主はこの村には下級の冒険者しかいないと言っていたから、派遣される冒険者の強さはこの間の冒険者見習いより少し強いくらいと考えていればいいだろうか……パクッ。

であれば、今のままのダンジョンでは規模が小さすぎるしモンスターも弱い。帰ってダンジョンを強化する方がよさそうだ。

ギルド職員は"規模が小さくて危険ではない"と言っていたから、今日冒険者が派遣されると言うことは流石にないだろうから、2・3日見てダンジョン強化かな……ズズズッ。

今日はこのまま村で追加で情報を収集することにしよう。

夜までにダンジョンに戻れば良いか。今日の夜,明日一日はダンジョン強化に専念して、明後日には冒険者が訪れても良いように準備を終えることにしよう……モグモグ。


食事も終わり部屋に戻ろうかと立ち上がると、急に便意を催した。

この世界に来てから便意を催したのは初めてだった。

急いで近くの小間使いにトイレはどこかと確認し、トイレに駆け込む。

今までクッキーと水を摂取していたが、思い返せば便意や尿意は一切感じていなかった。

昨日今日、宿屋で食事をとったら便意を催した。ダンジョン内の食事が何か特殊であるのかもしれない。戻ったらシスに聞くことにする。

改めて部屋に戻り、部屋に忘れ物がないことを確認した後1階へ降りてカウンターにいた店主に鍵を返す。


「ありがとな!また来てくれよ」


「ベッドも快適だったし、食事もおいしかったよ。

 また機会があれば来るから」


手を振って外に出ると、この町で困ったらことがあったら相談に乗ってやるぜ!

と大きな声で見送りをしてくれた。


昨日は冒険者ギルドまで行って戻ってだけになってしまったため、今日は冒険者ギルド周辺と正門の方面に行くことにする。

大通りに行き正門方面に向かって歩いていると、この時間は開いている店がほとんどなかった。冒険者ギルドはもう開いていて、冒険者が中に出入りしていた。

そのまま通り過ぎて、この時間でも開いていた近くの革製品の店に入った。


革製品の店では、革だけはなく毛皮も売られているようだ。

毛皮製品の主流は狼の毛皮のようだ。俺が今着ているベストのようなものあれば、ファー部分だけにしたようなものまである。

値段はベストであれば、銅貨30枚。ファーなら20枚だ。

まだ暖かいので必要ないけど、毛皮を服のように仕立てたものもあって銅貨で50枚もしていた。

革製品は野牛が最も多く、革だけなら安いものは銅貨10枚。高いものだと銀貨に達する値段だった。

革で出来たブーツもあり、これは少し高く銅貨80枚する。

冒険者が来ていた革製の鎧を探してみたが、ここでは見当たらなかった。

武器防具屋とすみ分けがされているので、あっちに売っているのかもしれない。


革製品の店を出て更に正門側に向かって歩くとポーションの店があった。

相場を知るために店に入ることにする。ドア開けてすぐにカウンターがあり、ポーションが並んでいた。

 

 最下級ポーション 銅貨20枚

  下級ポーション 銅貨50枚

  中級ポーション 銀貨10枚


と看板に値段が書かれている。 

最下級,下級ポーションは宝箱の物と同じく花でできた袋に入っていたが、中級ポーションは銀貨10枚もかかるだけあって、ガラス瓶の容器に入っていた。ガラス瓶は現代にあるような透明感あるものではなく、黒系の色が混ざっていて質も悪い。

宝箱からリポップするのと同じ最下級ポーションは銅貨20枚もしていた。

そのままポーションを眺めていると、店の奥から恰幅のいい女性がやってくる。


「いらっしゃい。

 ポーションを買いに来たようには……見えないね。

 何の用だい」


最初は営業スマイルだったが、俺の恰好を見て客ではないと判断し途端に真顔に戻り言葉が悪くなる。


「客じゃなくてすいません。

 ポーションについて教えてもらえませんか」


買いにきたわけではないことを謝り、ポーションについての知識を請うと女性はため息をつきつつ了承してくれた。案外良い人なのだろう。


「しょうがないね。今は店も忙しくないし教えてあげるよ。

 これは最下級ポーション、値段は書いてある通りさ。

 指の第一関節くらいまでの深さの傷ならこれで治せるよ。

 但し……このポーションでは痛みはなくならない。

 次に下級ポーション。第二関節くらいの深さの傷なら治るし、

 痛みも感じないよ。

 あんたは冒険者じゃだろうからわからないかもしれないけど、

 中級くらいの冒険者が使うのはここまでだね。

 最後に中級ポーション。これは、指くらいならなくなっても治せるよ。

 腕となるとちょっと厳しいね。

 この村でこれを買っていくのは、金に余裕がある商人くらいさ」


店主の話を聞いた上で思ったことは、中級より上の等級はないのだろうかと言うことだ。


「中級より上はないかって思ったね?

 この村にはそんな立派なポーションなんて必要ないから、

 うちでは取り扱ってないよ。

 領都や王都なら取り扱う店もあるかもしれないけど、

 買っていくのは貴族や王族くらいのものだろうね。

 上級は腕くらいの部位欠損なら治すほど強い効果があるが、

 さらにもっと効果の高いポーションも存在するらしいね。

 わたしゃ見たことないよ。まああんたには一生かかっても

 関係しない話だろ」


その後お客がきたから、商売の邪魔だと言われ追い出されてしまった。

仕方なくまた正門に向かって歩き出す。

そこからは目ぼしい店も開いておらず、そのまま正門に辿り着いてしまった。時間潰す方法もないため、ダンジョンに戻ることにする。

一人で正門を出ると怪しまれるかもと思い、村を出る馬車を待って後ろについて一緒に出た。俺以外にも同じような旅人が何人かいて、門兵はさも当たり前のことのように俺たちが門から出るのを見送った。


門兵の姿がほとんど見えない位まできたら、わざと馬車から少しずつ遅れてそのままダンジョンに戻るために森のほうへ向かった。

ダンジョンの入口まで戻って来きたら、なんとなく"帰ってきた"と思えた。やはり自分はダンジョンマスターであると感じた。


『サトル様、お帰りなさいませ。村はいかがでしたか?』


ダンジョンの入口に入った瞬間、シスの声が聞こえる。

軽くただいまと返事をすると共に、今朝の便意のことについてシスに聞く。


「この世界のことや村のことがたくさん聞けたよ。

 確実に収穫はあったね。

 ところで、このダンジョンにいた時は便意や尿意を感じなかったのに、

 村で食事をした後には便意を催したんだけど、これはどうして?」


『それは、ここで作った食べ物はダンジョンポイント……魔素で

 出来ているからでしょう。

 魔素で作られた食物は消化されると魔力として体に蓄えられます。

 便意や尿意として外に出ることはありません」


魔素と言う不明確なものを体に取り込んでいた、この事実に驚いてしまう。

魔素が魔力として体に蓄えられると何か悪いことはあったりしないだろうか。


「な……なあ、魔力が体に蓄えられると何が起こるんだ?

 病気になったりしないよな?」


『魔力を体に蓄え続ければ体の魔力量が上がりますから、

 魔法を使うのに適した体になりますね。一切の害はありません。

 ついでなので申しますと、この世界では魔素を体に取り込むことが

 できる才能を持っている者を魔法使いと呼びます。

 このダンジョンは魔素がなかなかに濃いですから、ここで生活している

 だけで魔素をかなり取り込んでいますよ。

 サトル様もいつしか魔法を使えるようになるでしょう』

 

ダンジョンに戻ったらダンジョンの強化をするつもりだったのに、こんな衝撃的なことを聞かされて戸惑ってしまうのだった。


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