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3章 16話 魔剣 エリスSIDE

ちょいちょい更新していこうと思います。

なんかちょっと前に仕様が変わったからか、誤字報告受け付けな胃になってしましたね…。


「どうやら鞘に差すことはできるみたいだな」


我々が宝箱から入手したあの剣は他の者に渡すことができないだけで鞘にしまうことはできるようだった。

しかし、先ほどまではヒルダと渡し合いが出来ていたと言うのに、どうして? と思わざるを得ない。

さすがに人に渡すことができないのであれば仕方ない。換金することもできないので、渋々私がもらう形になった。


この世には魔力がこもっているだけではなく様々な効果を持つ剣が存在する。

例えばその剣で与えたダメージは回復するときの効果が薄くなったり。

ある限られた種族のモンスターだけに特別大きなダメージを与えたり。

斬ると大きなダメージが当たるのだけど、不気味にリィ……リィ……と鳴ったり。

そういう、ただ魔力がこもっているだけではない特殊な剣のことを魔剣と言う。

魔剣は呪いのような効果を持っている物が半分以上を占めるせいで、基本的に世間から疎まれている。

この剣も持ち主から離せられないと言うのは、マイナス効果だが結果的に特殊な能力なわけであり、これでこの剣は魔剣と言うことになる。

魔剣持ちは敬愛の対象でありまた畏怖の対象でもある。

まあ……でも人に渡せないような効果だけならただの笑いもので済むかなとも思う。


「この剣は、エリ姉にもらってってことだよ。

 魔剣も私もそう思ってるんだよ」


「ヒルダだけじゃなく、魔剣にもそう思われたら仕方ないな。

 ふふ……実はいつか魔剣を持ってみたかったんだ。夢が一つ適ったよ。

 恐ろしいマイナス効果じゃないだけマシって、前向きに考えることにするさ」


ダンジョンから脱出したので、この魔剣以外の全てをヒルダに渡すことした。

このダンジョンの特殊な魔力のこもった剣でも価値は金貨100枚をくだらない。

魔剣であればいくらの値がつくのか予想できない。そんなものとは比べ物にはならないけど。

だがこのダンジョンだけ特別な魔石がとれるとわかっていても、ちょっとした量である。

きっとヒルダはレオンの騎士団に寄付する、そう思えた。

翌日私はヒルダと別れることになった。

そもそもの目的である、こちらでの聖騎士団の任務をしなければならないのだ。

ヒルダはもう聖騎士団員ではないから、次会うのはいつになるかわからない。

だが決して今生の別れではない。


「ヒルダ、また会おう。

 あの男を見限ったらまた聖騎士団に来いよ。

 いつでも副隊長にしてやるからな」


「えー。

 もしその時が来たら、エリ姉には団長になってもらって私は副団長かな?

 作戦参謀でもいいよ」


「なら今まで以上にもっと頑張らないとだな」


聖騎士団初の女性騎士団長。そんな、未だかつてありえないことを夢のように話しながら二人して笑った。

正直しんみりした雰囲気は苦手だ。

だからヒルダとの別れはこれくらいがいい。

最後に二人で抱きしめ合って、別れた。


「隊長。では討伐に向かいましょう」


ヒルダではない副隊長が私に向かってそう言う。

私の隣は少しだけ寂しくなったけれど、新しく頼もしくなった腰に手をおいて、


「ああ、そうだな。

 とっとと片付けよう」


私達は領都を後にした。




その日の夜、私は家を飛び出していつもの屋敷に向かう。

我が領都の端のほうにひっそりと建つ、サトルの屋敷だ。

見た目は普通の屋敷と何も変わらないけど、ここには私だけの特殊な物があるのだ。


「サートールーッ! 何よあのアイテムは!」


玄関を開けて入ると、床にある魔法陣で私の姿は掻き消える。

そしてサトルがいるダンジョンマスターの部屋へと転移していた。


「やあ、ヒルダ。

 ダンジョンは楽しめたか?

 あの剣は、昨日ちょうど出来上がったばかりのかなり良質な物だったんだ。

 報酬にも良かっただろう?」


「良かっただろう? じゃないわよ!

 あの剣、手に入れた者から離せられない呪いがかかっていたのよ。

 とんだ魔剣よ」


無事にあの剣をエリ姉に渡せたから良かったけれど、もっと良い物を渡したかった私としてはあのような呪いの品を渡したくはなかった。

その愚痴をサトルに言うべく来たのだけど、当人は私の愚痴を聞いても知らぬ存ぜぬと言った顔をしている。

しかも、わざとじゃない。本当に知らない顔をしているのだ。


「あれ? まさか、サトル本当に知らないの?」


「ああ。だってあれは、先日うちに勧誘したドワーフが作った物だからね。

 俺がやったことと言えば、それを預かって宝箱に入れたくらいさ。

 それだけで呪いがかかるとは思えないし……」


「それならサトルのせいじゃない? じゃあ誰が……」


おかしいなあと、私とサトルが顔を曲げてうんうん唸っていた時、シスさんの声が聞こえた。


「……おかしいですね」


ただそれは私たちと一緒に不思議に感じているようなトーンではなく、研究や実験が失敗に終わったとか、思っていたことと別の結果になったとか、そういう感じのトーンだった。


「シス?」


「はい、サトル様」


「お前がやったのか?」


「せっかくの上物でしたので、盗まれるようなことがあってはとなくしても持ち主のところに戻ってくる効果をつけてみたのですが……。

 どうやら思ったのと異なった効果がついてしまったようですね、失敗です」


犯人がわかった。犯人がわかったけど、この場合犯人と言っても良いのだろうか。


「失敗って……。

 ただ、よかれと思ってやったことだけにシスを責める気にもならないな。

 手放せないと言うから悪いイメージになるんだ。

 盗まれないって言えば、いいイメージだし」


「それもそうね……。

 それはそうと、あんなすごい剣いつの間に?

 金貨100枚はくだらない名剣よ?」


「ああ、さっきも言っただろう?

 新たに仲間に入れたドワーフが作ったんだ。

 ダンジョン産の鉄のインゴッドで作ったら、どうやらダンジョン産の鉄がかなり魔力を含んでいたみたい。

 打つ者の腕が良ければ、今後はあれくらいの装備が当たり前になるかもしれないね」


「もうそれだけで一大産業ね。

 一応、お父様に報告しておくわ……。

 そしたら騎士団で根こそぎとりにきそうだけどね」


「確かにな……だけど、そう量産はできなさそうなんだよな。

 作った本人は今も徹夜作業後で寝てるし。

 そこんところはよく言っておいてよ」


「わかったわ。

 どのみちダンジョンには調査に訪れないといけないだろし、慎重に進めるように言っておくね。

 後、騎士団で手に入れるならあの半分以下の強さで十分よ?

 と言うかあれが強すぎるもの」


「じゃあ、手加減……はできるかわからないけど、そうするように言っておくよ」


「うん。じゃあ、私はすぐお城に行くね。

 また今度」


親しいことは親しいのだけど、友達のような別れの仕方になってしまった。

私は結局この領主の子供であることは間違いないので、領の利益も考えないといけない。下手に問題にならないよう領主……もしくはレオン兄に管理させたほうが良いのかもしれない。

サトルとしてもダンジョンに色んな冒険者や騎士が来てくれた方が嬉しいはずだし……。

私は早速父に報告すべく、サトルに軽く挨拶を告げてダンジョンマスターの部屋を出た。


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